ヨルダン(公開日:2010.04.01)
絵本が作ったきっかけ(2010.04.01)
ヨルダン事業では、現地移管作業が佳境を迎え、担当スタッフは、センターやボランティアの間を毎日駆け回っています。そんなスタッフが教えてくれた、絵本をきっかけとしたイラク人家族のエピソードを1つお伝えします。ある女性が語ってくれたお話です。
****************
バグダッドの家の近くに爆弾が落ちた時、当時1歳だった私の娘ヒバは聴覚を失いました。
イラクからヨルダンに移ってきて4年目になりますが、とにかく生活が苦しく、娘のために治療どころか、何もしてやることができていませんでした。また、私の主人は癇癪(かんしゃく)を起こすようになり、子どもへの興味もなくなってしまったようでした。
絵本作りワークショップへ参加の誘いが来た時、びっくりしましたが、とても嬉しくて、主人と参加したいと思いました。主人を説得するのは大変でしたが、私の参加を許してくれ、また彼自身も参加してくれることになりました。でも、2日間のワークショップの間、主人の顔を見ていても、特に興味をひかれたようでも、楽しそうでもありませんでした。
ワークショップも終わり、私が家で夕食の準備をしている時、他の部屋から声がしたので覗いてみると、主人がヒバと一緒にお絵描きをしていました。ワークショップでもらってきた、布でできた花を紙に貼ったり、色を塗ったり...ヒバは主人の膝に座り、本当に嬉しそうにしていました。私は、涙が止まりませんでした。
3年以上もこんな気持ちになったことはなかったように思います。「私の物語」事業に感謝するとともに、私たち家族の間に確かにお互いを思い、愛する気持ちがあることを感じ、本当に嬉しく思いました。
****************
ヨルダンの首都、アンマン県の北東部にあたるザルカ県の家族の話です。日々の活動に追われるスタッフですが、各施設担当者とのミーティングやワークショップ訪問を通じて、このような話を聞き、また親がワークショップの中で子どもとの時間の大切さに気付く瞬間を目の当たりにして、活動の価値を改めて感じるとともに、その活動が確実に人々に広まっている手ごたえを感じています。