ブルキナファソ(公開日:2012.07.24)
【食糧危機】緊急支援に向けた調査を開始(2012.07.30)
アフリカ西部の広大なサハラ砂漠の南部周辺に位置する地域はサヘル地域と呼ばれています。サヘルという名は、アラビア語の「岸辺」を語源としています。サハラ砂漠を広大な海と見立て、その砂漠が終わる沿岸部を岸辺と呼んだのでしょう。
しかし、サハラ砂漠に連なるサヘル地域は降水量が少ない上に不安定で、また年により大きな差が見られます。ここに暮らす人々は多くが天水農業に頼っており、雨季に降る雨によってその後の1年の穀物生産が左右されます。これまでしばしば、降雨不足による食糧生産の減少で日々食する穀物の不足と、市場での穀物価格の高騰、それに伴う栄養不良が発生してきました。
今年初めての雨の後、穀物の栽培のための畑を準備する人々
2000年以降、気候変動の影響もあり、この食糧不足と栄養不良はサヘル地域の国々で頻発するようになりました。昨年2011年は、その中でも、主食となる穀物の生産が降雨の遅れと不順により26%も減少し、干ばつによる人道危機の発生が早くから懸念されてきました。通常でも穀物の備蓄が最も少なくなるこの6月から9月までの時期が食糧不足のピークになり、サヘル地域全体で1,840万人に上る人々が食糧の不足とそれに伴う生活状況の悪化の危機にあると推測されています。
加えて、今年初頭に起きたマリでの政府軍と分離独立ゲリラとの戦闘により、少なくとも37万2千人が逃避し、うち20万人以上がモーリタニア、ニジェールそしてブルキナファソ等の隣国に難民として避難しています。避難民の多くが女性や子どもであり、男性は家畜や財産を保護するためにマリ国内に留まっています。マリの国内政治が不安定なことによって、既に干ばつにより重大な影響を受けている一般市民にさらに深刻な影響を与えており、食糧不足が深刻化しています。
また、このサヘル地域は伝統的に遊牧及び家畜の飼育が盛んですが、昨年の降雨不足によって牛やヤギ、ヒツジ等の餌となる植生や水も慢性的に不足しています。植生や水を求めて移動するため、場所によっては過放牧となっているところも見られます。上記のマリ難民及びその家畜が流入している周辺国では食糧危機に追い討ちをかけ、植生や水についても既に枯渇している状況を更に悪化させており、地元住民の収入源である家畜価格の下降もみられています。
子どもたちには、栄養状態の悪化という形で影響が表れています。食糧不足の影響により、ブルキナファソでは2012年12月末までに重度の急性栄養失調児は10万人に、中程度の急性栄養失調児は45万人にものぼることが予測されています。
ブルキナファソの中央北部州の診療所で、
栄養状況の検査を受けるために並ぶ母親と子どもたち
セーブ・ザ・チルドレンはこのサヘル地域においてこれまで長期的な開発事業による支援に加え、繰り返し起る緊急支援にも取り組んできました。今回の食糧危機そしてマリ難民に対して、セーブ・ザ・チルドレンは、ブルキナファソ、マリ、モーリタニア、ニジェールの4か国で150万人の支援を目指しています。そのうち子どもは97万人に上る予定です。活動内容は、子どもの保護、教育、食糧確保と生計支援、保健、栄養、水・衛生と多岐にわたります。現在までに63万人に支援を届けていますが、本格的な支援が必要なのはこれからになります。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)としても、今回の危機に対して出動を決めました。現在ジャパン・プラットフォーム(JPF)からの助成を受け、ブルキナファソにてニーズ及び支援状況を調査中です。セーブ・ザ・チルドレン・ブルキナファソ国事務所の協力を仰ぎながら、国内で最も食糧危機とマリ難民の影響を受けているサヘル州で今後の事業の展開を目指した調査を実施しています。
マリ難民のキャンプ周辺に位置する村の一つ
今後、SCJは引き続きJPFの助成を受けて、マリ難民のキャンプとその周辺に位置している村落を対象地として、子どもたち及び保護者を対象に栄養補助事業を展開する計画です。食糧不足の影響を最も受けやすいのは子どもたちです。特にこの地域の就学前の子ども達は小学校での給食もないため、家庭に食糧がない場合は大人と同じように食事を抜いたり、栄養価の悪いもので埋め合わせしたりしなければなりません。しかし、栄養が不足しがちなために健全な発達が損なわれてしまいかねず、多くの子どもたちが今後栄養失調に陥る危険性があります。このような子どもたちに対して栄養補助食となる食糧を提供し、この危機を乗り越えられるよう支援を行う予定です。
皆様の引き続きのご支援を宜しくお願い致します。
(報告:海外事業部 利川 豊)