トップページ > スタッフブログ > 緊急支援 > 「こどもひろば」の活動を通して:子ども支援で大切にしていること

緊急支援
(公開日:2023.06.06)

「こどもひろば」の活動を通して:子ども支援で大切にしていること

 
「こどもひろば」とは

地震や豪雨などの災害後の避難生活、また紛争から逃れた先での難民キャンプでの生活など、これまでの日常とは異なる環境に置かれることが、世界のさまざまな場所で起こっています。

住んでいた家を失ったり、家族と離ればなれになったり、これまで通っていた学校に行くことができないなど、それまでの日々とは違う環境での生活は、不安やストレスを増大させます。

そのような環境で毎日を過ごす子どもたちが、ストレスを軽減させ、安心・安全に過ごすことができるよう、セーブ・ザ・チルドレンは日本や世界で、「こどもひろば」の活動を実施しています。

各地の「こどもひろば」では、ボランティアのほか、学校の先生や保護者、地域の人たちの協力も得ながら、参加する子どもの年齢、発達段階に合わせたさまざまなプログラムを提供しています。

今日は、「こどもひろば」の活動を紹介し、私たちが子ども支援で大切にしていることをお伝えします。


ウガンダの「こどもひろば」で、ブランコで遊ぶ子どもたち


ウガンダの「こどもひろば」
ウガンダには、隣国のコンゴ民主共和国での紛争により避難してきた難民が約49万人(2023年4月時点)暮らしています1

子どもたちは、生活環境の変化によるストレスに加え、虐待、人身取引、ネグレクトなどのリスクに晒されており、安心して過ごすことができる居場所は十分にありません。

セーブ・ザ・チルドレンは、難民が居住するウガンダ南西部で「こどもひろば」を運営してきました。そこでは、私たちの研修を受けたファシリテーターが中心となって、主に3歳から17歳までの子どもたちとともに、お絵かき、粘土、貼り絵などの制作・創作活動、ダンス、音楽、演劇などの文化活動、サッカー、縄跳び、追いかけっこなどの運動のほか、読み聞かせ、物語作り、パズル、ボードゲームなど、さまざまな活動を行ってきました。

これらの活動の実施にあたっては、ストレスの発散のみならず、創造力や想像力、自尊心や自己効力感、社会性や運動能力などを高められるように工夫を凝らしました。

また、約14歳以上の子どもに対しては、就学や就労機会が限られている中で、将来の困難に対応できるようになることを目指し、語学をはじめ、問題解決能力やコミュニケーション能力、お金の使い方や貯め方などに関するワークショップを提供しました。

さらに、「こどもひろば」の活動で、虐待など被害の兆候を示す子どもなどがいた場合は、ケースワーカーに引き継ぐことで、その子どもたちを必要な支援につなげられるようにしました。


屋内でも工夫を凝らしてさまざまな活動を行います。


シリアの「こどもひろば」
シリア危機は今年12年目となり、国内では680万人2 の国内避難民が不安定な生活を送っています。長期化する危機の影響で経済状況も悪化しています。

経済状況の悪化は子どもに対する暴力や搾取、虐待、ネグレクトといった子どもの保護に関するリスクを増長させ、児童労働、子ども兵士、児童婚などの増加にもつながることが懸念されています。

セーブ・ザ・チルドレンは、シリアで、パートナー団体と協力して、「こどもひろば」を運営し、主に3歳から17歳の子どもに対して、精神保健・心理社会的支援提供しています。

シリアの「こどもひろば」では、風船飛ばし、おままごと、プラスチックピラミッド作り、ボール遊び、サッカーなど、さまざまな活動が行われています。

こうしたレクリエーションを通して、子どもたちのストレス発散、自尊心の促進、子ども同士のチームワークの促進などに取り組んでいます。

2023年2月に発生した大地震の影響で新たに避難民キャンプにきた子どもたちも参加できるように配慮しながら活動を再開しています。

ウガンダの「こどもひろば」と同様に、シリアの「こどもひろば」でも、活動を通して個別の支援が必要と思われる子どもがいた場合には、ケースワーカーに引き継ぎ、子どもや家族に適切な支援が提供されるようにしています。

また、避難の過程で暴力の被害に遭ったり、目撃したりしてきた子どもも少なくない中、特に、強いストレス反応を示すなど、たとえばカウンセリングなどの専門的な精神保健支援、精神医療の介入が必要であると思われる子どもは、より専門的な支援につなげています。

「こどもひろば」は、子どもの居場所としてだけでなく、「子どもの保護」の拠点としての機能を果たし、子どもたちのウェルビーイング(健やかな成長)を促進する場所となっています。


                        「こどもひろば」ファシリテーターが見守る中、
          レクリエーション活動を通して子どもたちのチームワークが促進されます



日本の「こどもひろば」
セーブ・ザ・チルドレンは、近年、自然災害が頻発している日本においても、2011年の東日本大震災以降、緊急時の支援として「こどもひろば」を開設してきました。

たとえば、2018年西日本豪雨の際、水害による生活品の流出や慣れない避難所での生活などによって、子どもたちは非日常的な環境の中で大きなストレスを抱え、「雨がこわい」といった発言や、「こどもひろば」のスタッフのそばから離れないなど、精神的に不安定な様子が見られました。

そうした中、「こどもひろば」では、子どもたちは体を動かしたい時は風船を使ってバレーボールをしたり、静かに遊びたい時は粘土や折り紙をしたりして過ごしました。

災害前のように、子どもがその時の気分によって自分自身で遊びを決めることができる環境を大切にし、スタッフも、子どもの不安な気持ちを無理に解消させようとするのではなく、まずは子どもたちの話をしっかりと聞くことを大切にしていました。

「家に水がざぱーんって来て、階段まで浸かったの。今日はおじいちゃんちから来た」と話したある子どもは、「こどもひろば」で同世代の子どもたちと遊んだ後、「オセロが楽しかった。今度は風船で遊びたい!」と元気に話していました。

さまざまな面で選択肢が限られてしまう子どもたちにとっては、「何をして遊ぶか」を主体的に決めることができたり、自分を受け入れてくれる相手がいることで、日常を取り戻し、心の安定にもつながっていきます。
 

「今日は何をして遊ぼう?」


私たちが大切にしていること
いずれの「こどもひろば」でも、子どもたちが安心・安全な環境で自分たちらしく過ごすことで心の安定を取り戻すことを目的にさまざまな活動が行われていますが、私たちが大切にしているのは、その中心となるのはスタッフやボランティアではなく常に子どもたちである、ということです。

スタッフが準備した活動だけでなく、子どもたち自身が活動を提案したり、自分たちで遊びのルールを話し合ったりすることもあります。そのように、自分の意思で活動に参加し、思い思いにリラックスした時間を過ごすことで、子どもたちは日常を取り戻していくことにつながります。

特に、これまでと異なる環境でのストレスに加え、災害や紛争、避難の過程で、さまざまな危機を経験・目撃してきた子どもたちは、強い不安を抱えていたり、悩みがあっても言い出せなかったりすることもあります。

セーブ・ザ・チルドレンは、そのような子どもたち一人ひとりの心に寄り添い、耳を傾けながら、今日もさまざまな場所で「こどもひろば」での活動を実施しています。

(海外事業部 子どもの保護グループ 水野将伸)


UNHCR, Uganda Comprehensive Refugee Response Portal, Refugees by county of origin, 最終アクセス日 2023518
2 UNHCRFact sheet – Syrian Arab Republic January 2023.

 

あなたのご支援が子どもたちの未来を支えます

もっと見る

月々1500円から、自分に合った金額で子どもの支援ができます。
定期的に年次報告書や会報誌をお送りしています。

1回から無理なくご支援いただけます。

PAGE TOP