パキスタン(公開日:2011.03.10)
パキスタン洪水被災者支援 〜コミュニティの役割〜(2011.03.10)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、洪水の被害にあった子どもたちを対象に生活支援と保護を目指す事業を展開しています。活動の中心となるのが「子ども広場」ですが、これを支えているのがコミュニティの人々です。コミュニティの参加は広場を運営していくためには欠かせません。
今回の報告では、事業におけるコミュニティの役割をフォーカスしたいと思います。
コミュニティは子ども広場の活動を支えていくために様々な場面で重要な役割を担っています。
例えば、事業は、洪水による被害が最もひどかった子どもたちや貧困の度合いが著しい家庭の子どもたちに対して、冬服や生活用品の配布を行いました。その際に多くの子どもたちのなかから最も必要性の高い子どもたちのリスト作成を行ったのがコミュニティの人たちです。草の根レベルでどの家庭の子どもへの支援が必要かということは、外部から支援に入ると見極めることが難しい場合も多く、また地域社会の調和を乱さないためにもこのような形の参加が非常に重要となります。
さらに人々が参加することによって、外部からの支援に対する人々のオーナーシップを高める効果もあります。場所によっては子ども広場の設置する際に、広場を囲う壁がないようなところがありますが、ここでもコミュニティの人々の参加が大きな力となります。下の写真では人々が子ども広場の外壁つくりを行っていますが、この村の人々はレンガを購入する資金を出し合い、また自分たちが工事を行うことで、自分の村の「子ども広場」をいう意識を高めることに成功しました。
子ども広場の外壁建設に参加するコミュニティの人々
ただし、いつも最初から人々の協力をえられるわけではありません。そのためにはコミュニティへの働きかけによって意識を高めコミュニティの組織化を行うことが大変重要になります。
子ども広場を設置するにあたっては、事業に対する人々の理解を得るため、また何が人々に問題なのかを共有するためにコミュニティとの対話を行います。対話では子ども保護に関する事例を様々な角度から話し合い、人々の問題意識を高めます。パキスタンでは、児童労働や早期結婚、子どもへの虐待などが大きな問題となっていますが、洪水の影響により、子どもたちが保護者のストレスのはけ口として暴力を受ける件数が増えるなど、更なる危険にさらされています。人々の周囲では具体的にどのような例があるのか、問題の原因は何か、どうすれば解決出来るのか、コミュニティ・レベルで何ができるのかなどを話し合います。また、現地での文化に配慮して男女別々に対話を行いました。
コミュニティとの対話
さらに、コミュニティの人々の中から、子ども広場に通う子どもたちの保護者や地域の有力者、学校の先生などをメンバーに子ども保護委員会を作ります。委員会には子どもの意見を反映させるために子ども広場に参加する子どもたちからも代表が参加しています。プロジェクトでは各子ども保護委員会への研修も実施しており、コミュニティにおける子ども保護の中心としての役割が期待されます。
子ども保護委員会研修の様子
このように、事業ではコミュニティの子ども保護に対する意識を高め、人々がオーナーシップをもって参加し、さらにはプロジェクト終了後も持続性を持って自ら活動を続けていく「仕組みつくり」という面でも事業を展開しています。