【パキスタン】復学支援開始：アフガニスタン難民とホストコミュニティの子どもたちへ

パキスタンは、5歳から16歳までの就学年齢の子どもおよそ5,180万人のうち約2,280万人が学校に通学できておらず、この人数は世界で2番目に多い¹です。

学用品を受け取ったビビさん

子どもたちが教育を受けられない理由は、教育の重要性が養育者に認識されていない、女子が教育を受けられないなどの社会文化的規範・慣習のほか、学校が遠くて通えない、校舎に水道や電気がない、質の高い教員が不足している、教育に対する政府支出が少ない、世帯の困窮で必要な学用品を購入できないなど、さまざまあります²。

また、隣国アフガニスタンで、2021年8月に起こった暫定政権への移行後、アフガニスタンから大勢の人たちがパキスタンへ避難してきました。

2022年12月末時点で、パキスタン国内で難民登録しているアフガニスタンの人たちは130万人にのぼります³。しかし、国連難民高等弁務官所(UNHCR)によると、未登録の人を含めると約300万人のアフガニスタン難民が避難生活を送り、そのうち49%が18歳未満の子どもであると推計されています⁴。

アフガニスタン難民の子どもたちもパキスタンでの避難生活を余儀なくされる中、最初に説明した理由により、教育を受けることが難しい状況に置かれています。

さらに、およそ1,600万人の子どもを含む約3,300万人が、2022年7月に発生した大規模な洪水の影響を受けました⁵。たとえば、2万5,187校が被災したとされ⁶、被害を受けなかった学校も避難先として使われたことから、220万人の子どもたちの教育に影響が及び、教育支援を必要としています⁷。

洪水で被害を受けたバロチスタン州の様子

このような状況もあり、アフガニスタン難民と難民を受け入れている地域（ホストコミュニティ）の双方において、子どもを結婚させたり、働かせたりするなどの負の対処法を取る世帯があったり、家庭内暴力や中退などのリスクが上昇しています⁸。

今回支援を行うパキスタン西部のバロチスタン州は、アフガニスタンからの難民を国内で2番目に多く受け入れている地域です⁹。

バロチスタン州では、初等・中等教育における高い未就学率、性別による教育格差や教育の質の低さが課題です¹⁰。

また、他州と比較しても経済的に貧しく¹¹、子どもたちが教育を受けるために必要な学用品などの費用を支払うことが困難な世帯が多い状況です。

セーブ・ザ・チルドレンは、2023年3月1日よりバロチスタン州で、復学支援事業を開始しました。この活動は、2024年2月末までの1年間にわたり行われる予定です。

対象となる子どもたちは、復学に際して、特に困難を抱えるアフガニスタン難民とホストコミュニティの子ども200人ずつ計400人で、子どもたちが学校に再び通うことができるように個別支援を行います。

また、各世帯の状況に合わせて、国や自治体が提供する奨学金や給付金などの社会保障サービスの情報提供や、各種サービスの利用につなげるための支援も行います。

地域の子どもたちが通う公立学校20校においては、学校が安心・安全な環境になるよう学校環境の評価を行い、必要に応じて施設の修繕を行います。そして、学校に通う子どもたちが学習に集中できるようペンやノートなどの学用品も配布します。

教員に対しては、教育の質が担保できるよう、ジェンダー平等と障害のある子どもの包摂（インクルーシブ）、子どもにとって過ごしやすい学習環境の構築や学校が閉校になった場合の遠隔教育などについての研修を行います。

学校閉校時に一時的な学習スペースで学ぶ子どもたち

最後に、子どもを暴力や児童労働などのリスクから守るには地域における子どもの保護のメカニズム強化も不可欠です。

そのため、対象校の教員と地域で活動するパートナー団体スタッフを対象に、心理的な問題を抱えた子どもたちへの対応方法や、暴力や児童労働などのリスクに直面し支援を必要としている子どもを明らかにし、必要な支援につなぐための研修も行います。

このような活動を通して、子どもたちが暴力などから守られ、安心・安全な環境で学校へ復学することができるよう支援していきます。

本事業は皆様からのご寄付により実施しています。

（海外事業部小山光晶）

¹ UNICEF “https://www.unicef.org/pakistan/education”
² SABIHA ABID, Pakistan & GULF Economist “Education in Pakistan: problems, challenges and perspectives”
³ UNHCR, “Country- Pakistan (Islamic Republic of) (unhcr.org)” 2023年3月14日閲覧