マダガスカル(公開日:2022.12.21)
【マダガスカル】気候変動と食料危機
アフリカ大陸南東部沖に位置する島国のマダガスカルは、アフリカで最もサイクロンの被害を受けやすく、紛争ではなく気候の影響によって、食料危機に陥っている国です。
マダガスカルの人口は2,843万人であり、そのうち食料危機に陥っている人は210万人にのぼると報告されています。つまり、人口の約39%が食料危機に陥っており、深刻な状況です。下の図は、食料危機の状況を測る、総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の2023年2〜3月の予測です。食料危機に陥っている人の多くは南東部と南部に集中していることがわかります。今後、約48万人の子どもが栄養不良のリスク状態となることが予測されています。
特に南部においては、40年以上前から干ばつが続いており、慢性的な食料危機に陥っています。また、砂嵐や害虫による作物の不作も追い打ちをかけています。これにより、農作物が砂で覆われ、発育や収穫量に大きく影響します。また、南東部は、南部とは対照的に水が豊富で稲作が盛んですが、サイクロンの被害を受けやすい地域です。2022年には1月から4月にかけて5つのサイクロンが直撃し、農地が流されたり、主要な道路がふさがれたりして、食料の確保が難しくなりました。サイクロンは毎年通過したり直撃したりしますが、近年では直撃する数や被害の深刻さが増しているように思うと現地の人は話していました。このように、マダガスカルでは、地域によって被害の状況が大きく異なります。
南部のアンブブンベ郡の村に住む夫婦は、「10年位前までは、キャッサバ、イモ、豆などを食べていて、野菜も育てていた。その後まとまった雨が降らなくなり、食事がまともに取れなくなってきた。最近はサボテンの実しか食べられない日もある。」と話します。アンブブンベ郡では、一部の水源に近い地域でのみ、イモを育てていますが、ほとんどの村では作物が育てられなくなっています。村の中に小さな市場はありますが、購入できる食材は非常に限られています。
マダガスカルの遠隔地にある村の多くでは、水道が整備されていないため、水を得るためには、川や井戸に行く必要があります。徒歩または牛車での移動となりますが、食料や生活必需品を買うために移動用の牛も売ってしまったという人も多くいます。また、南東部では、山が多く道が整備されていないため、そもそも徒歩しか手段がないこともあります。徒歩での往復には丸一日かかり、かつ重労働となります。そのため、子どもも荷物を運ぶために、親と一緒に出掛け、平日の昼間でも子どもが荷物を運んでいる様子を多く見かけます。子どもが教育を受ける時間も奪われている状況です。
マダガスカルでは、家族計画が浸透していないことも課題となっています。10代で結婚・出産を経験する人も多く、20代で既に10人子どもがいるという家庭も多くあります。特に貧しい家庭では、金銭などと引き換えに子どもを結婚させたり、子どもを児童労働に従事させたりするなど、子どもの保護の問題も確認されています。
気候変動による食料危機は、子どもの栄養不良、教育機会の減少、子どもの保護の問題に直結しており、子どもに大きく影響を与えています。このような状況を受けてセーブ・ザ・チルドレンでは、南東部と南部において、食料危機に対応するために、それぞれの課題に沿った支援を実施しています。
特に干ばつにより、深刻な状況に置かれている南部においては、ジャパン・プラットフォームの支援を受け、2022年10月より、食料配布と栄養改善の緊急支援事業を実施しています。この事業では、南部アンブブンベ郡において、特に脆弱な世帯を対象に、4ヶ月間食料を配布するほか、配布する食料を活用した調理実演を行います。また、対象地域の村の子どもの栄養状態を評価し、母親への栄養指導を行います。栄養不良の子どもを持つ母親に対しては、調理不要の治療食(Ready to Use Therapeutic Food: RUTF)を提供し、子どもの状態が改善するまでフォローアップを行います。
(海外事業部 マダガスカル事業担当 加藤笙子)
マダガスカルの人口は2,843万人であり、そのうち食料危機に陥っている人は210万人にのぼると報告されています。つまり、人口の約39%が食料危機に陥っており、深刻な状況です。下の図は、食料危機の状況を測る、総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の2023年2〜3月の予測です。食料危機に陥っている人の多くは南東部と南部に集中していることがわかります。今後、約48万人の子どもが栄養不良のリスク状態となることが予測されています。
特に南部においては、40年以上前から干ばつが続いており、慢性的な食料危機に陥っています。また、砂嵐や害虫による作物の不作も追い打ちをかけています。これにより、農作物が砂で覆われ、発育や収穫量に大きく影響します。また、南東部は、南部とは対照的に水が豊富で稲作が盛んですが、サイクロンの被害を受けやすい地域です。2022年には1月から4月にかけて5つのサイクロンが直撃し、農地が流されたり、主要な道路がふさがれたりして、食料の確保が難しくなりました。サイクロンは毎年通過したり直撃したりしますが、近年では直撃する数や被害の深刻さが増しているように思うと現地の人は話していました。このように、マダガスカルでは、地域によって被害の状況が大きく異なります。
南部のアンブブンベ郡の村に住む夫婦は、「10年位前までは、キャッサバ、イモ、豆などを食べていて、野菜も育てていた。その後まとまった雨が降らなくなり、食事がまともに取れなくなってきた。最近はサボテンの実しか食べられない日もある。」と話します。アンブブンベ郡では、一部の水源に近い地域でのみ、イモを育てていますが、ほとんどの村では作物が育てられなくなっています。村の中に小さな市場はありますが、購入できる食材は非常に限られています。
マダガスカルの遠隔地にある村の多くでは、水道が整備されていないため、水を得るためには、川や井戸に行く必要があります。徒歩または牛車での移動となりますが、食料や生活必需品を買うために移動用の牛も売ってしまったという人も多くいます。また、南東部では、山が多く道が整備されていないため、そもそも徒歩しか手段がないこともあります。徒歩での往復には丸一日かかり、かつ重労働となります。そのため、子どもも荷物を運ぶために、親と一緒に出掛け、平日の昼間でも子どもが荷物を運んでいる様子を多く見かけます。子どもが教育を受ける時間も奪われている状況です。
マダガスカルでは、家族計画が浸透していないことも課題となっています。10代で結婚・出産を経験する人も多く、20代で既に10人子どもがいるという家庭も多くあります。特に貧しい家庭では、金銭などと引き換えに子どもを結婚させたり、子どもを児童労働に従事させたりするなど、子どもの保護の問題も確認されています。
気候変動による食料危機は、子どもの栄養不良、教育機会の減少、子どもの保護の問題に直結しており、子どもに大きく影響を与えています。このような状況を受けてセーブ・ザ・チルドレンでは、南東部と南部において、食料危機に対応するために、それぞれの課題に沿った支援を実施しています。
特に干ばつにより、深刻な状況に置かれている南部においては、ジャパン・プラットフォームの支援を受け、2022年10月より、食料配布と栄養改善の緊急支援事業を実施しています。この事業では、南部アンブブンベ郡において、特に脆弱な世帯を対象に、4ヶ月間食料を配布するほか、配布する食料を活用した調理実演を行います。また、対象地域の村の子どもの栄養状態を評価し、母親への栄養指導を行います。栄養不良の子どもを持つ母親に対しては、調理不要の治療食(Ready to Use Therapeutic Food: RUTF)を提供し、子どもの状態が改善するまでフォローアップを行います。
この活動と同時に、世界中からいただいたセーブ・ザ・チルドレンへのご寄付を活用して、食料以外の支出に充てるための現金給付や、村貯蓄貸付組合(Village Saving and Loan Association: VSLA)の運営支援も行なっています。VSLAは10-15人の村のメンバーからなり、毎月それぞれが少額ずつVSLAに出資し、メンバーが必要になった時に借り入れることができる仕組みです。借りたメンバーは利子をつけて返すことで、VSLAグループで資金を運用していくことができます。
私たちは運営の支援に徹し、VSLAメンバーが主体的に活動しています。メンバーのある男性は、「支援団体からもらうのではなくて、自分たちが主体となって自分たちの生活のための活動となり、モチベーションが高まった。困難な生活の中でも、自分でできることがあるということがわかった。」と話します。この活動を通して得た資金は、メンバーは子どもの教育費、医療費、起業資金などに充てられており、地域の人たちの生活の質を高め、子どもの教育の機会を保障することや、早婚、児童労働を減らすことにもつながります。このように、地域の人たちが自分たちで危機を乗り越えるための支援をすることで、レジリエンス(回復力)の向上にもつながります。
南東部においては、日本の皆さまから頂いたご寄付を活用した事業を展開しています。作物が育ちやすい環境を生かして、農業を含む生計手段の確立や、家庭菜園の普及を通して子どもの栄養改善を行います。また、サイクロンに備えるため、災害に強い家屋の建設方法や農地の保護などの技術を普及します。このように「生計向上」、「栄養改善」、「災害リスク軽減」の3つの側面から地域の人たちの食料危機と自然災害に対するレジリエンス向上を目指します。
干ばつやサイクロンなどの影響により、マダガスカルでは長年さまざまな機関が支援を行ってきましたが、セーブ・ザ・チルドレンでは、被害を受けている人々が自身のもつ力を活かして危機を乗り越えられるための支援に焦点を当てています。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。
私たちは運営の支援に徹し、VSLAメンバーが主体的に活動しています。メンバーのある男性は、「支援団体からもらうのではなくて、自分たちが主体となって自分たちの生活のための活動となり、モチベーションが高まった。困難な生活の中でも、自分でできることがあるということがわかった。」と話します。この活動を通して得た資金は、メンバーは子どもの教育費、医療費、起業資金などに充てられており、地域の人たちの生活の質を高め、子どもの教育の機会を保障することや、早婚、児童労働を減らすことにもつながります。このように、地域の人たちが自分たちで危機を乗り越えるための支援をすることで、レジリエンス(回復力)の向上にもつながります。
南東部においては、日本の皆さまから頂いたご寄付を活用した事業を展開しています。作物が育ちやすい環境を生かして、農業を含む生計手段の確立や、家庭菜園の普及を通して子どもの栄養改善を行います。また、サイクロンに備えるため、災害に強い家屋の建設方法や農地の保護などの技術を普及します。このように「生計向上」、「栄養改善」、「災害リスク軽減」の3つの側面から地域の人たちの食料危機と自然災害に対するレジリエンス向上を目指します。
干ばつやサイクロンなどの影響により、マダガスカルでは長年さまざまな機関が支援を行ってきましたが、セーブ・ザ・チルドレンでは、被害を受けている人々が自身のもつ力を活かして危機を乗り越えられるための支援に焦点を当てています。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。
(海外事業部 マダガスカル事業担当 加藤笙子)