中東(公開日:2022.02.17)
【レバノン】食費や教育費を支払えない家庭が増加
セーブ・ザ・チルドレンを含む複数の団体(Plan International, Akkarouna, the Lebanese Organization of Studies and Training)は、レバノンのアッカール県とバールベック・ヘルメル県で共同調査を行い、対象となった家庭の半数以上が国際貧困ライン以下で生活していることが明らかになりました。また、生活環境が急速に悪化していることから、子どもたちに影響が及んでいることも分かっています [1]。2020年時点では、調査対象のすべての家族が生活のために必要な最低限の費用を賄うことができていましたが、今回の調査では対照的な結果となりました[2]。
2019年の秋以来、レバノンは、世界最悪の金融危機に陥っており[3]、通貨は過去2年間でその価値を90%以上失い、人口の4分の3を超える人たちが国際貧困ラインに満たない状態で生活するなど貧困状態に陥る人たちが急増しています[4]。
ヒバさん(53歳)は、夫と6人の子どもたちとアッカール県で生活しています。水を買う余裕もなく、病気になっても病院へ行くこともできず、その日を生きるだけで精一杯の暮らしをしています。
「私たちは、必要最低限の支出で済むように努めています。以前も苦しい生活を経験したことがありますが、今回はそれとは違います。子どもたちは、かろうじて1日1食の食事をとれています。子どもたちの学業成績は大幅に低下しましたが、いま私たちが考えられるのは、この冬を暖かく健康で乗り切ることだけです。」
娘のサラムさん(21歳)は、毎朝目を覚ますと不安に襲われると話します。
「私たちの生活は、一瞬で悪化したと感じます。(以前は、)まだ肉を買う余裕があり、電気もありました。でも今、私たちはどうやって生き抜くことができるのだろうかと思う日があります。私たちの健康が最も心配です。1日1食の生活を続けると、翌月には栄養不良など影響が出てくるのではないかと心配しています。」
2020年以降、レバノン全土で食料価格は最大570%上昇し[5]、ヒバさん一家のような家庭は、食事回数や内容を大幅に変えることを余儀なくされています。
家計経済分析によると、アッカール県とバールベック・ヘルメル県で最も脆弱な状況にある子どもたちは適切な食事が全くとれていません。安価で栄養価の低い食品が優先され、量も少ないため、子どもたちは栄養不良のリスクに晒されています。バールベック・ヘルメル県の状況は特に懸念されており、脆弱な家庭の子どもたちは、生きるために必要な最低限のカロリーをほとんど摂取できていません[6]。
マラケさん(61歳)は、息子と12歳の孫と一緒にバールベック・ヘルメル県に住んでいます。彼女は、この3年間が特に困難であったと説明しました。息子が一家の唯一の働き手として、月に約1,000米ドル(約11万5,000円)を稼いでいますが、インフレの影響で家賃と光熱費を支払うので精一杯だと話します。
「電気代だけでも400米ドル(約4万5,000円)です。私は夜中に目を覚まして翌日のことを考えて不安になるときがあります。何を食べ、どうやって暖かく過ごしたらよいのか―。すべての価格が高騰している状況で、どのように生きていくことができるというのでしょうか。私の不安のひとつは、孫が学校を中退して働き始めることです。」
セーブ・ザ・チルドレンのレバノン事務所代表ジェニファー・ムーアヘッドは次のように訴えます。
「経済の影響により、家庭は貧しくなり、子どもたちのケアにも苦慮しています。いま、物価の高騰により、栄養不良や発育阻害、予防可能な病気で死亡する子どもたちが増加する危険に直面しています。
特に、アッカール県とバールベック・ヘルメル県の状況は急激に悪化しています。2020年と現在の家計収入を比較すると、脆弱な立場に置かれた家庭は困難を乗り越えるための資金を持っていません。そのため、これらの地域の低所得世帯のすべての子どもたちは、1日に必要な量の食事をとることができていません。世帯が健康や成長に必要な支出を減らし続けると、数千人の子どもたちが取り返しのつかない影響を受けるリスクがあります。」
セーブ・ザ・チルドレンと今回共同で調査を行った団体は、特に子どもたちに影響を及ぼす危機に対応するため、各国政府や支援者、各機関が協力して、国内で増加するニーズに対応し、子どもたちやその家族が質の高い保健医療や教育、社会保障を利用できるようにし、極度の食料不足や栄養不良の増加を防ぐために、効果的で責任ある対応をとるよう要請します。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちが成長できるように、現金の提供やカウンセリングを通じて、ヒバさん一家やマラケさん一家のような家庭を支援しています。この「キャッシュプラス」と呼ばれる支援により、貧困による影響から子どもたちを守ることにつながります。
[1] According to the Household Economy Analysis (HEA), 59% of families surveyed in Akkar and 51% of families in Baalbek are facing livelihood protection deficits – that is, the inability to meet the basic cost of living to afford education, healthcare, and nutritious food.
[2] According to the HEA’s baseline assessment, all surveyed families in 2020 in Akkar and Baalbek were able to meet the basic cost of living to afford education, healthcare, and nutritious food. In 2021, all surveyed all families in ‘poorer’ wealth groups showed a Livelihood Protection deficit, with reduced spending on their children’s basic needs.
[3] Lebanon Sinking into One of the Most Severe Global Crises Episodes, amidst Deliberate Inaction (worldbank.org)
[4] The UN estimates that 78% of the Lebanese population lives below the poverty line, with 36% percent of the population living in extreme poverty: UN urges Lebanon to implement reforms as extreme poverty grows | United Nations News | Al Jazeera
[5] CPI http://www.cas.gov.lb/index.php/economic-statistics-en/cpi-en
[6] Households in the ‘poor wealth group’ in Baalbek are barely meeting their Survival Threshold - the minimum number of calories required from the cheapest foods to maintain subsistence.
2019年の秋以来、レバノンは、世界最悪の金融危機に陥っており[3]、通貨は過去2年間でその価値を90%以上失い、人口の4分の3を超える人たちが国際貧困ラインに満たない状態で生活するなど貧困状態に陥る人たちが急増しています[4]。
ヒバさん(53歳)は、夫と6人の子どもたちとアッカール県で生活しています。水を買う余裕もなく、病気になっても病院へ行くこともできず、その日を生きるだけで精一杯の暮らしをしています。
「私たちは、必要最低限の支出で済むように努めています。以前も苦しい生活を経験したことがありますが、今回はそれとは違います。子どもたちは、かろうじて1日1食の食事をとれています。子どもたちの学業成績は大幅に低下しましたが、いま私たちが考えられるのは、この冬を暖かく健康で乗り切ることだけです。」
娘のサラムさん(21歳)は、毎朝目を覚ますと不安に襲われると話します。
「私たちの生活は、一瞬で悪化したと感じます。(以前は、)まだ肉を買う余裕があり、電気もありました。でも今、私たちはどうやって生き抜くことができるのだろうかと思う日があります。私たちの健康が最も心配です。1日1食の生活を続けると、翌月には栄養不良など影響が出てくるのではないかと心配しています。」
2020年以降、レバノン全土で食料価格は最大570%上昇し[5]、ヒバさん一家のような家庭は、食事回数や内容を大幅に変えることを余儀なくされています。
家計経済分析によると、アッカール県とバールベック・ヘルメル県で最も脆弱な状況にある子どもたちは適切な食事が全くとれていません。安価で栄養価の低い食品が優先され、量も少ないため、子どもたちは栄養不良のリスクに晒されています。バールベック・ヘルメル県の状況は特に懸念されており、脆弱な家庭の子どもたちは、生きるために必要な最低限のカロリーをほとんど摂取できていません[6]。
マラケさん(61歳)は、息子と12歳の孫と一緒にバールベック・ヘルメル県に住んでいます。彼女は、この3年間が特に困難であったと説明しました。息子が一家の唯一の働き手として、月に約1,000米ドル(約11万5,000円)を稼いでいますが、インフレの影響で家賃と光熱費を支払うので精一杯だと話します。
「電気代だけでも400米ドル(約4万5,000円)です。私は夜中に目を覚まして翌日のことを考えて不安になるときがあります。何を食べ、どうやって暖かく過ごしたらよいのか―。すべての価格が高騰している状況で、どのように生きていくことができるというのでしょうか。私の不安のひとつは、孫が学校を中退して働き始めることです。」
セーブ・ザ・チルドレンのレバノン事務所代表ジェニファー・ムーアヘッドは次のように訴えます。
「経済の影響により、家庭は貧しくなり、子どもたちのケアにも苦慮しています。いま、物価の高騰により、栄養不良や発育阻害、予防可能な病気で死亡する子どもたちが増加する危険に直面しています。
特に、アッカール県とバールベック・ヘルメル県の状況は急激に悪化しています。2020年と現在の家計収入を比較すると、脆弱な立場に置かれた家庭は困難を乗り越えるための資金を持っていません。そのため、これらの地域の低所得世帯のすべての子どもたちは、1日に必要な量の食事をとることができていません。世帯が健康や成長に必要な支出を減らし続けると、数千人の子どもたちが取り返しのつかない影響を受けるリスクがあります。」
セーブ・ザ・チルドレンと今回共同で調査を行った団体は、特に子どもたちに影響を及ぼす危機に対応するため、各国政府や支援者、各機関が協力して、国内で増加するニーズに対応し、子どもたちやその家族が質の高い保健医療や教育、社会保障を利用できるようにし、極度の食料不足や栄養不良の増加を防ぐために、効果的で責任ある対応をとるよう要請します。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちが成長できるように、現金の提供やカウンセリングを通じて、ヒバさん一家やマラケさん一家のような家庭を支援しています。この「キャッシュプラス」と呼ばれる支援により、貧困による影響から子どもたちを守ることにつながります。
[1] According to the Household Economy Analysis (HEA), 59% of families surveyed in Akkar and 51% of families in Baalbek are facing livelihood protection deficits – that is, the inability to meet the basic cost of living to afford education, healthcare, and nutritious food.
[2] According to the HEA’s baseline assessment, all surveyed families in 2020 in Akkar and Baalbek were able to meet the basic cost of living to afford education, healthcare, and nutritious food. In 2021, all surveyed all families in ‘poorer’ wealth groups showed a Livelihood Protection deficit, with reduced spending on their children’s basic needs.
[3] Lebanon Sinking into One of the Most Severe Global Crises Episodes, amidst Deliberate Inaction (worldbank.org)
[4] The UN estimates that 78% of the Lebanese population lives below the poverty line, with 36% percent of the population living in extreme poverty: UN urges Lebanon to implement reforms as extreme poverty grows | United Nations News | Al Jazeera
[5] CPI http://www.cas.gov.lb/index.php/economic-statistics-en/cpi-en
[6] Households in the ‘poor wealth group’ in Baalbek are barely meeting their Survival Threshold - the minimum number of calories required from the cheapest foods to maintain subsistence.