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ウクライナ
(公開日:2023.05.15)

【ウクライナ危機】ルーマニアでのウクライナ難民支援:保健医療、教育、精神保健・心理社会的支援

 
2022年2月のウクライナ危機以降、ルーマニアにはウクライナやモルドバの国境を超えた218万人以上が避難しています。危機から1年以上が経過した2023年3月24日時点で、10万9,559人のウクライナ難民がルーマニアに滞在しており、多くの家族は、夫や父親をウクライナに残してきた女性や子ども、そして養育者と離ればなれになった子どもたちです1,2

 

2週間かけてウクライナからルーマニアへ避難した親子

ルーマニアでは、ウクライナ難民も無料で政府の医療サービスを受けることができますが、言語の問題などから難民に対する医療サービスの情報を得ることは難しく、ウクライナ難民は、医療サービスの利用が制限されているのが現状です3

私立の医療機関で必要な診療などを受けることは可能ですが、費用が高額で多くの難民たちは受診することが非常に困難です。

また、紛争の経験が子どもたちや養育者の心に及ぼす影響は甚大であり、精神保健・心理社会的支援(こころのケア)の必要性の高さが報告されています3。しかし、こころのケアを必要としている人の38%しか支援を受けることができていません3

教育分野における課題も確認されています。難民のうち4万7,851人は子どもで、難民全体の約45%ですが、そのうち正式にルーマニアの学校に登録された子どもは、わずか882人であり、いまだ多くの難民の子どもたちが教育を受けることが難しい状況です4。その主な課題としては、学習スペースの不足と言語の違いがあげられています。

加えて、今後、この危機が収束すればウクライナに帰還する可能性を見込み、ウクライナのカリキュラムによるオンライン教育も継続したいというウクライナ難民のニーズも確認できている一方で、子どもが対面授業で知識を深めたり、教員や友だちとの日常のコミュニケーションをとる機会がないことを多くの養育者が課題としてあげています。そのため、学校の時間外での活動を望む声が多くの養育者から寄せられています。



ルーマニア国内でウクライナのオンライン授業を受ける子どもたち


これらの状況を受け、2023年3月1日より「ルーマニアにおけるウクライナ難民のための保健・医療サービスへのアクセス向上支援および学習・心理社会的支援事業」を開始しました。

この事業では、多くの難民を受け入れかつ支援ニーズが高かったヤシ県、スチャバ県、ブカレスト、ムレシュ県、ブラショフ県の5県で、ウクライナ難民とその家族の地域の医療サービスへのアクセス向上を目指し、地域の難民受け入れセンターで、ウクライナ難民へ必要な医療サービスに関する情報提供や、医療サービスへのアクセスをサポートする医療メディエーターの育成、そして緊急時の医療費補助のバウチャー配布活動を行います。

ヤシ県、スチャバ県、ガラツィ県、コンスタンツァ県、ブラショフ県、バカウ県、ネアムツ県7県の学校における教員への心理社会的支援に関する研修、子どもたちに対するグループ活動や放課後活動を通した心理社会的支援も実施します。

母国を離れ、言葉も異なる異国での暮らしに不安やストレスを抱えることが多い子どもたちが、遊びや体を動かす活動を通して、ストレスを解消したり、運動機能や認知機能を用いながらの自己表現や他者とのコミュニケーション力を身につけたりするサポートをします5



 首都ブカレストの放課後活動に参加する子どもたち

これに加え、教育や心理社会的支援を含む多くの支援活動は、大都市に集中する傾向にあり、都市以外の地域に滞在している子どもたちに支援が届かないことが少なくありません。

そのため、2023年3月31日からは、今まで教育支援が実施されていなかったコンスタンツァ県ナボダリ地域において、「ルーマニア・コンスタンツァ県におけるウクライナ難民およびホストコミュニティの子どもたちのための教育および心理社会的支援事業」を開始しました。

この活動では、ウクライナ難民とホストコミュニティの子どもたちが学習を継続できるよう、言語学習のサポートを含む放課後活動や教育用品バウチャー、学習キットの配布を行います。また、心理社会的支援とアートやスポーツ、レクリエーション活動を通しコミュニティに暮らす子どもたちとの社会的結束促進活動も実施します。

ウクライナ難民の子どもたちとその家族が迅速に適切な医療サービスを利用できるよう、そして子どもたちの心身の健康が教育現場で保たれるよう、活動を実施していきます。

本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。


(海外事業部 中村恵理)


1 UNHCR Romania “Ukraine Refugee Situation Update”
2 UNHCR “Ukraine Situation: Regional Refugee Response Plan - March-December 2022”, p59
3 REACH, UNHCR “Romania Multi-sector Needs Assessment (December 2022)”, p3
4 Chancellery of the Prime Minister in Romania, Romania’s Response to the Ukrainian Refugee Crisis, 13 Jan 2023, p.4
5 War Child Holland, Save the Children Netherlands and UNICEF Netherlands “TeamUp Theory of Change”


 

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