ウクライナ(公開日:2024.04.15)
【ウクライナ危機から2年】「人々の笑顔のおかげでがんばれる」2人の医療メディエーターのストーリー
2022年2月24日に、ウクライナ危機が発生してから2年以上が経過しましたが、紛争が終わる見通しはなく、国内外で避難民、難民となった人たちの避難生活は続いています。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2023年3月から隣国ルーマニアに避難しているウクライナ難民を対象とした支援を行っています(詳細はこちら)。私たちの活動の一つが医療支援です。
ルーマニア政府は、ウクライナ難民に対し無償で医療サービスを受けられるとしています。しかし、難民がルーマニアの医療を受けるには、まずルーマニアで「かかりつけ医」として、どこかのクリニックに登録しなければならず、その手続きやシステムの煩雑さ、病院や医療施設のキャパシティ不足や言語の違いからウクライナ語/ロシア語しか話せないウクライナ難民は診察を拒否されるケースもあり、実際に無償で医療を受けることは簡単ではありません。
このような状況を受け、私たちは、ルーマニアの各県に医療支援を専門とする医療メディエーターを設置し、医療に関連する難民の相談にのるとともに、定期的に情報共有会を開催し、重要な医療関連の情報を広めてきました。
また、経済的な支援が必要な人たちに対しては、薬の購入に使用できるバウチャーを配布しました。医療ニーズはさまざまであり、対面で相談にのったり、電話で病院にいる難民と医者の間の通訳をしたり、時に病院や医療施設に出向いて医療スタッフと交渉したりするなど、医療メディエーターの仕事は多岐に渡ります。
避難先での人々の信頼と笑顔が原動力:マリアさん
ルーマニア北部のスチャバ県で医療メディエーターとして働くマリアさんは、ウクライナ西部のチェルニウツィ州で、小児消化器科医として働いていました。
夫と2人の子どもと暮らし、「人生で最も美しく幸せな時間」だった日々は、2022年2月24日に大きく変わってしまいます。
紛争が始まった後の人々や街中の混乱を目にし、マリアさんは「子どもたちを安全な場所に連れて行かなければならない」と痛感します。
ルーマニアにルーツを持ち、ルーマニア語、ウクライナ語、ロシア語が話せるマリアさんは、自身や子どもたちにとっても馴染み深いルーマニアに避難することに決めました。
避難の道のりは険しく、荷物を抱えながら子どもたちと道なき道を泥にまみれながら進みました。ルーマニアに入国し、人々のあたたかい支援を受けることができたときには、涙があふれてでて止まらなかったといいます。
紛争がすぐには終わらないだろうと思ったマリアさんは、避難後すぐに職探しを始めます。知り合いに勧められてセーブ・ザ・チルドレンに履歴書を送ったのは2022年5月のことでした。
毎日多くの事例に対応し、人々に元気づける言葉をかけながら、自身も気持ちを強く持ち続けることのバランスを見つけることは難しかったと語ります。しかし、人々の彼女に対する家族のような信頼と、支援を届けた人たちの笑顔のおかげで、彼女自身も進み続けることができました。
避難先での新しい挑戦と信頼関係を肌で感じる:ドイナさん
ルーマニアのヤシ県で同じく医療メディエーターとして働くのはドイナさんです。ドイナさんは、モルドバで生まれ育ち、ロシア語を子どものころから学んだり、ウクライナにいる親せきをよく訪問したりしていました。高校進学以降ルーマニアに定住し、温泉療法/運動療法士、かつ看護師として働いていました。
すでにモルドバで、セーブ・ザ・チルドレンの活動に従事していた友人から、ルーマニアでセーブ・ザ・チルドレンが行っているウクライナ難民対応について教えてもらったドイナさんは、自身のロシア語のスキルも生かせると考え面接を受けることにします。
2022年11月から、通訳として仕事をはじめ、2023年3月からは医療メディエーターとして働いています。ルーマニアの複雑な医療システムを理解し、対応するのは簡単なことでなく、日々新たな課題や問題に直面してきました。
ドイナさんも、そのような中で進み続けることができたのは、支援を届けた人たちの笑顔や、お礼のメッセージ、また彼女を信頼して何度でも相談してくれる人たちの存在だったと言います。
ルーマニアにおけるウクライナ難民の医療ニーズは高く、マリアさんやドイナさんように、ルーマニアの医療制度を理解し、病院との間の通訳も提供できる人材はますます必要とされています。
医療サービスの利用は、人々の健康や命に直結するものであり、医療メディエーターたちは日々行政や地域の病院、医療施設と協力しながらできる限りの支援を行っています。
2024年以降は、彼女たちがルーマニアの各地で培ってきた知識と経験を生かすため、医療メディエーター自身が講師となってセーブ・ザ・チルドレンの他の職員に医療サービスに関するセッションを実施したり、医療メディエーターがいない他地域に出張してウクライナ難民を対象に情報共有会を実施することなども計画しています。
今後も、医療メディエーターの活動を通した医療支援で、一人でも多くの人が避難先で、不安が軽減され、安心・安全に避難生活を送れるよう支援を続けます。
(ルーマニア駐在員・清水奈々子)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2023年3月から隣国ルーマニアに避難しているウクライナ難民を対象とした支援を行っています(詳細はこちら)。私たちの活動の一つが医療支援です。
ルーマニア政府は、ウクライナ難民に対し無償で医療サービスを受けられるとしています。しかし、難民がルーマニアの医療を受けるには、まずルーマニアで「かかりつけ医」として、どこかのクリニックに登録しなければならず、その手続きやシステムの煩雑さ、病院や医療施設のキャパシティ不足や言語の違いからウクライナ語/ロシア語しか話せないウクライナ難民は診察を拒否されるケースもあり、実際に無償で医療を受けることは簡単ではありません。
このような状況を受け、私たちは、ルーマニアの各県に医療支援を専門とする医療メディエーターを設置し、医療に関連する難民の相談にのるとともに、定期的に情報共有会を開催し、重要な医療関連の情報を広めてきました。
また、経済的な支援が必要な人たちに対しては、薬の購入に使用できるバウチャーを配布しました。医療ニーズはさまざまであり、対面で相談にのったり、電話で病院にいる難民と医者の間の通訳をしたり、時に病院や医療施設に出向いて医療スタッフと交渉したりするなど、医療メディエーターの仕事は多岐に渡ります。
避難先での人々の信頼と笑顔が原動力:マリアさん
ルーマニア北部のスチャバ県で医療メディエーターとして働くマリアさんは、ウクライナ西部のチェルニウツィ州で、小児消化器科医として働いていました。
夫と2人の子どもと暮らし、「人生で最も美しく幸せな時間」だった日々は、2022年2月24日に大きく変わってしまいます。
紛争が始まった後の人々や街中の混乱を目にし、マリアさんは「子どもたちを安全な場所に連れて行かなければならない」と痛感します。
ルーマニアにルーツを持ち、ルーマニア語、ウクライナ語、ロシア語が話せるマリアさんは、自身や子どもたちにとっても馴染み深いルーマニアに避難することに決めました。
避難の道のりは険しく、荷物を抱えながら子どもたちと道なき道を泥にまみれながら進みました。ルーマニアに入国し、人々のあたたかい支援を受けることができたときには、涙があふれてでて止まらなかったといいます。
紛争がすぐには終わらないだろうと思ったマリアさんは、避難後すぐに職探しを始めます。知り合いに勧められてセーブ・ザ・チルドレンに履歴書を送ったのは2022年5月のことでした。
毎日多くの事例に対応し、人々に元気づける言葉をかけながら、自身も気持ちを強く持ち続けることのバランスを見つけることは難しかったと語ります。しかし、人々の彼女に対する家族のような信頼と、支援を届けた人たちの笑顔のおかげで、彼女自身も進み続けることができました。
避難先での新しい挑戦と信頼関係を肌で感じる:ドイナさん
ルーマニアのヤシ県で同じく医療メディエーターとして働くのはドイナさんです。ドイナさんは、モルドバで生まれ育ち、ロシア語を子どものころから学んだり、ウクライナにいる親せきをよく訪問したりしていました。高校進学以降ルーマニアに定住し、温泉療法/運動療法士、かつ看護師として働いていました。
すでにモルドバで、セーブ・ザ・チルドレンの活動に従事していた友人から、ルーマニアでセーブ・ザ・チルドレンが行っているウクライナ難民対応について教えてもらったドイナさんは、自身のロシア語のスキルも生かせると考え面接を受けることにします。
2022年11月から、通訳として仕事をはじめ、2023年3月からは医療メディエーターとして働いています。ルーマニアの複雑な医療システムを理解し、対応するのは簡単なことでなく、日々新たな課題や問題に直面してきました。
ドイナさんも、そのような中で進み続けることができたのは、支援を届けた人たちの笑顔や、お礼のメッセージ、また彼女を信頼して何度でも相談してくれる人たちの存在だったと言います。
ルーマニアにおけるウクライナ難民の医療ニーズは高く、マリアさんやドイナさんように、ルーマニアの医療制度を理解し、病院との間の通訳も提供できる人材はますます必要とされています。
医療サービスの利用は、人々の健康や命に直結するものであり、医療メディエーターたちは日々行政や地域の病院、医療施設と協力しながらできる限りの支援を行っています。
2024年以降は、彼女たちがルーマニアの各地で培ってきた知識と経験を生かすため、医療メディエーター自身が講師となってセーブ・ザ・チルドレンの他の職員に医療サービスに関するセッションを実施したり、医療メディエーターがいない他地域に出張してウクライナ難民を対象に情報共有会を実施することなども計画しています。
今後も、医療メディエーターの活動を通した医療支援で、一人でも多くの人が避難先で、不安が軽減され、安心・安全に避難生活を送れるよう支援を続けます。
(ルーマニア駐在員・清水奈々子)