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ウクライナ
(公開日:2024.02.27)

【事業完了報告】ルーマニアに避難しているウクライナ難民の子どもへの教育支援と心理社会的支援事業

 
2022年2月24日にウクライナ危機が発生してから約2年が経過した今も、危機は終わる見通しが立たず、国内外で人々の避難生活は続いています。

セーブ・ザ・チルドレンは、2023年3月からウクライナの隣国であるルーマニアに避難しているウクライナ難民を対象とした事業を行っています(詳細はこちら)。2023年3月31日から、コンスタンツァ県で実施した「ルーマニア・コンスタンツァ県におけるウクライナ難民およびホストコミュニティの子どもたちのための教育および心理社会的支援事業」が2023年10月末に完了しましたので、報告します。

ウクライナからルーマニアに避難した、約32%が18歳以下の子どもであり、その数は約4万6,000人にのぼります(2023年12月末時点)1

ウクライナの子どもたちが、ルーマニアの学校に行く権利は保障されていますが、実際には受け入れ側の学校のスペースや人員が十分でなかったり、言語の違いをサポートする仕組みが整っていなかったりするため、子どもたちがスムーズにルーマニアの教育システムに移行することは難しい状況です。

ウクライナの授業をオンラインで継続して受けている子どもたちも多くいますが、その場合は自宅で、一人で受けることになり、他の子どもたちや教員との対面での交流や、勉強以外の課外活動に参加したいというニーズも高くなっていました。

このような状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンではコンスタンツァ県でウクライナの子どもたちと脆弱な状況にあるホストコミュニティの子どもたちを対象とした放課後活動を行いました。

実施にあたっては、活動場所であるコンテナハウスを設置し、コンテナハウスに家具・備品やノートパソコン、その他文房具や工作のための教材を配置しました。放課後活動では、ルーマニアの学校やウクライナのオンライン授業を終えた子どもたちを対象に、宿題のサポート、ルーマニア語の授業や補習授業といった学習支援のほか、ゲームやスポーツ、工作やアートなどさまざまな活動を実施しました。

事業期間を通して、計161人(ウクライナ人136人、ルーマニア人25人)の子どもが放課後活動に参加しました。

活動に参加する子どもたちは、ウクライナの異なる地域から来ておりルーマニアにたどり着くまでの背景もさまざまですが、活動を通して信頼関係を築き毎日放課後の時間を楽しみにしている様子が見られました。

また、事業終了時の調査では、放課後活動に参加した子どもの93.5%が「ルーマニアの公教育もしくはウクライナのオンライン授業を通して学習を継続している」と回答し、活動が子どもの教育の継続につながったことが分分かりました。

また、養育者が子どもの教育の継続に必要な物品(本や子どもの衣服、学校での活動で購入が必要な物品など含む)を購入できるよう、教育用品用バウチャーおよび学習キットの配布も計1,400人に実施しました。

配布後の調査では、配布対象となった養育者のうち75%が「必要な教育ニーズを満たすことができた」と回答しました。


放課後活動の様子

さらに、事業では教員のほかにウクライナ人の心理士も活動に参加し、精神保健・心理社会的支援も行いました。

ウクライナ難民の子どもおよび養育者を対象とした心理士によるグループセッションには、子ども136人、養育者67人が参加しました。このセッションでは、ストレスマネジメント、ソーシャルスキルと対人スキル、レジリエンススキルの向上などさまざまなテーマを扱いました。

加えて、養育者向けの情報共有セッションも実施し、子どもの認知発達段階ごとのニーズ、子どもの発達をサポートするための養育者の役割、難民となった子どもたちとの効果的なコミュニケーション方法などを養育者に共有しました。

この情報共有セッションには、事業期間を通してあわせて583人(ウクライナ人376人、ルーマニア人207人)が参加しました。

さらに、ウクライナ難民の子どもたちとホストコミュニティの子どもたちの社会的結束を促進するため、イベント開催やサマーキャンプの実施などを実施しました。

活動には、計1,517人(ウクライナ難民の子ども680人、ルーマニア人の子ども254人、ウクライナ難民の養育者376人、ルーマニア人の養育者207人)が参加しました。



心理士によるグループセッションの様子

事業終了時の調査では、心理士によるセッションに参加したウクライナ難民の子どものうち95%が「学校や学習環境について安心できる」と回答したほか、セッションに参加したウクライナ難民の子どもの76%、養育者の85%の心理社会的ウェルビーイング(健やかな成長)が改善する結果となり、事業の大きな成果が確認されました。

次回のブログでは、事業に参加した子どもの声を紹介します。


(ルーマニア駐在員・清水奈々子、海外事業部・福原真澄)

1
EuroStat,Beneficiaries of temporary protection at the end of the month, accessed on15th Feb 2024





 

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