ウクライナ(公開日:2024.02.19)
【ウクライナ危機】事業完了報告:現金給付と緊急下における教育支援
ウクライナ危機発生から約2年が経過しましたが、2023年9月時点では依然として376万人が、自宅で生活することができておらず、国内で避難生活を送っています。
特に、ウクライナ南東部は、住宅や教育機関などの建物の損傷が激しく、多くの子どもたちが学校の閉鎖により教育を継続することが困難な状態でした。
また、ウクライナ危機は経済状況にも大きな影響を及ぼしており、子どもたちやその家族は、日用品の購入や保健医療サービスをはじめとする日常生活を送るうえで必要な基本的サービスを必要としていました。
これらの状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、2023年3月1日から10月29日まで、ウクライナ南部ミコライウ州とヘルソン州で、多目的に利用できる現金給付と、緊急下における教育支援を実施しましたのでご報告します。
出典:Ukraine: UN Geospatial Map (October 2023)
<現金給付支援>
ミコライウ州とヘルソン州で、経済的に脆弱な状況にある651 世帯 (2,052人:女子162人、男子194人、女性954人、男性742 人) に、計3回の多目的現金給付を実施しました。
また、ウクライナ南部での激しい衝突による家屋の甚大な損傷に対応するため、302世帯を対象に家賃補助の支援も追加で実施しました。
対象地域は、2023年6月に発生したカホフカダム破壊による洪水の影響を受けた地域でもあったため、これらの活動を通して、最も支援を必要としている人々のニーズを迅速に満たすことができました。
現金給付実施後、支援の効果を測るモニタリング評価を実施したところ、支援によって受け取った現金により基本的ニーズを満たすことができたと96%の世帯が回答しました。
<教育支援>
学校や幼稚園が破壊され、閉鎖されているミコライウ州の18ヶ所にて、移動式学習支援を実施し、教育機関に通えていない722人の子どもたち(女子375人、男子347人)に、対面学習の機会を提供しました。
移動式学習支援を始めるにあたっては、各地方自治体との綿密な協議を通し、実施する場所を決めました。
また、この活動を担当するファシリテーター6人に対し、子どものセーフガーディングやデバイス管理とデジタルコンテンツ、緊急下の教育や子どもの保護、精神保健・心理社会的支援に関する研修を実施しました。
その後、ファシリテーターが中心で活動する移動式学習支援チームは、週2回活動実施地を訪問し、年齢別の各グループ(3歳から5歳、6歳から8歳、9歳から12歳、13歳から15歳)に対し、オンライン授業や宿題のフォローアップ、スポーツなどの身体を使ったアクティビティなどを行いました。
これらの活動の結果、移動式学習支援に参加した子どもの96%が移動式学習支援に満足したと回答しました。
セーブ・ザ・チルドレン ウクライナ事務所で教育コーディネーターを務めるリディアは、こう話します。
「現在、400人以上の子どもたちが移動式学習支援を通じて勉強しています。さまざまな年齢層の子どもたちがこの活動の対象ですが、大部分は小学生です。
オンライン授業により、子どもたちは直接子どもたち同士でコミュニケーションを取ることが困難となり、お互いを深く理解する機会が減っています。
また、インターネット接続状況が悪い地域も少なくなく、また誰もがデジタル機器を利用できるわけではありません。
移動式学習支援では、このような状況に置かれた子どもたちが教育を継続できるよう支援します。
移動式学習支援が実施されている場所は、子どもたちが教育を受けられる場所というだけでなく、防空壕や地下室の役割も果たし、空襲の場合に安全が確保される場所でもあります。
被害を受けた多くの学校は、復興・再開まで長い道のりに直面しています。 ジャパン・プラットフォームが支援する移動式学習支援のおかげで、子どもが教育を継続することができました。」
また、ミコライウ州とヘルソン州で、教員や保護者との話し合いや、ニーズ聞き取りにより特定された1,500人の子どもたちに、地域教育局を含む地方自治体と協力し、文房具などを含む学習キットを配布しました。
配布は、新学期に間に合うよう2023−2024学年度の開始に合わせて行われ、学校に戻る取り組みを強化することができました。また、デジタル学習センターを開設し、長引く学校の閉鎖に対応し、遠隔学習の提供を支援することができました。
デジタル学習センターには、タブレットやパソコン、プリンターやWi-Fi機器など教員がオンラインで子どもたちに授業を提供するために必要な機材が揃えられました。
加えて、センターを利用する教員たちに対し、緊急下の子どもの保護や心理的応急処置、いじめやサイバーセキュリティなどの研修を実施し、能力向上・強化を図りました。
事業期間中、計222人の教員 (男性9 人、女性 213人) がデジタル学習センターを利用し、2,128人の子どもたちがデジタル学習センターを利用した教員のオンライン授業を受けました。そして、デジタル学習センターを利用した教員の満足度は98%でした。
この活動は2023年10月をもって完了しましたが、事業期間中の聞き取りを通し、継続的な教育支援へのニーズが子どもたちからあげられています。
そのため事業完了後も、地域の人たちが主導となり、子どもたちのニーズを踏まえた移動式学習支援を提供していく予定です。また、セーブ・ザ・チルドレンは、今後も人道危機下にあるウクライナの人たちに対する支援を継続していきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援によって実施しました。
(海外事業部 ウクライナ事業担当 中村恵理)
特に、ウクライナ南東部は、住宅や教育機関などの建物の損傷が激しく、多くの子どもたちが学校の閉鎖により教育を継続することが困難な状態でした。
また、ウクライナ危機は経済状況にも大きな影響を及ぼしており、子どもたちやその家族は、日用品の購入や保健医療サービスをはじめとする日常生活を送るうえで必要な基本的サービスを必要としていました。
これらの状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、2023年3月1日から10月29日まで、ウクライナ南部ミコライウ州とヘルソン州で、多目的に利用できる現金給付と、緊急下における教育支援を実施しましたのでご報告します。
出典:Ukraine: UN Geospatial Map (October 2023)
<現金給付支援>
ミコライウ州とヘルソン州で、経済的に脆弱な状況にある651 世帯 (2,052人:女子162人、男子194人、女性954人、男性742 人) に、計3回の多目的現金給付を実施しました。
また、ウクライナ南部での激しい衝突による家屋の甚大な損傷に対応するため、302世帯を対象に家賃補助の支援も追加で実施しました。
対象地域は、2023年6月に発生したカホフカダム破壊による洪水の影響を受けた地域でもあったため、これらの活動を通して、最も支援を必要としている人々のニーズを迅速に満たすことができました。
現金給付実施後、支援の効果を測るモニタリング評価を実施したところ、支援によって受け取った現金により基本的ニーズを満たすことができたと96%の世帯が回答しました。
<教育支援>
学校や幼稚園が破壊され、閉鎖されているミコライウ州の18ヶ所にて、移動式学習支援を実施し、教育機関に通えていない722人の子どもたち(女子375人、男子347人)に、対面学習の機会を提供しました。
移動式学習支援を始めるにあたっては、各地方自治体との綿密な協議を通し、実施する場所を決めました。
また、この活動を担当するファシリテーター6人に対し、子どものセーフガーディングやデバイス管理とデジタルコンテンツ、緊急下の教育や子どもの保護、精神保健・心理社会的支援に関する研修を実施しました。
その後、ファシリテーターが中心で活動する移動式学習支援チームは、週2回活動実施地を訪問し、年齢別の各グループ(3歳から5歳、6歳から8歳、9歳から12歳、13歳から15歳)に対し、オンライン授業や宿題のフォローアップ、スポーツなどの身体を使ったアクティビティなどを行いました。
これらの活動の結果、移動式学習支援に参加した子どもの96%が移動式学習支援に満足したと回答しました。
移動式学習支援に参加する子どもたち(2023年5月、ミコライウ州)
移動式学習支援に参加する子どもたち(2023年10月、ミコライウ州)
セーブ・ザ・チルドレン ウクライナ事務所で教育コーディネーターを務めるリディアは、こう話します。
「現在、400人以上の子どもたちが移動式学習支援を通じて勉強しています。さまざまな年齢層の子どもたちがこの活動の対象ですが、大部分は小学生です。
オンライン授業により、子どもたちは直接子どもたち同士でコミュニケーションを取ることが困難となり、お互いを深く理解する機会が減っています。
また、インターネット接続状況が悪い地域も少なくなく、また誰もがデジタル機器を利用できるわけではありません。
移動式学習支援では、このような状況に置かれた子どもたちが教育を継続できるよう支援します。
移動式学習支援が実施されている場所は、子どもたちが教育を受けられる場所というだけでなく、防空壕や地下室の役割も果たし、空襲の場合に安全が確保される場所でもあります。
被害を受けた多くの学校は、復興・再開まで長い道のりに直面しています。 ジャパン・プラットフォームが支援する移動式学習支援のおかげで、子どもが教育を継続することができました。」
また、ミコライウ州とヘルソン州で、教員や保護者との話し合いや、ニーズ聞き取りにより特定された1,500人の子どもたちに、地域教育局を含む地方自治体と協力し、文房具などを含む学習キットを配布しました。
配布は、新学期に間に合うよう2023−2024学年度の開始に合わせて行われ、学校に戻る取り組みを強化することができました。また、デジタル学習センターを開設し、長引く学校の閉鎖に対応し、遠隔学習の提供を支援することができました。
デジタル学習センターには、タブレットやパソコン、プリンターやWi-Fi機器など教員がオンラインで子どもたちに授業を提供するために必要な機材が揃えられました。
加えて、センターを利用する教員たちに対し、緊急下の子どもの保護や心理的応急処置、いじめやサイバーセキュリティなどの研修を実施し、能力向上・強化を図りました。
事業期間中、計222人の教員 (男性9 人、女性 213人) がデジタル学習センターを利用し、2,128人の子どもたちがデジタル学習センターを利用した教員のオンライン授業を受けました。そして、デジタル学習センターを利用した教員の満足度は98%でした。
デジタル学習センターにて子どものこころのケアに関する研修に参加する教員たち
(2023年6月、ミコライウ州)
(2023年6月、ミコライウ州)
デジタル学習センターで研修に参加する教員たち(2023年7月)
デジタル学習センターを利用する子どもたち(2023年8月、ミコライウ州)
デジタル学習センターでオンライン授業を実施する教員(2023年10月)
この活動は2023年10月をもって完了しましたが、事業期間中の聞き取りを通し、継続的な教育支援へのニーズが子どもたちからあげられています。
そのため事業完了後も、地域の人たちが主導となり、子どもたちのニーズを踏まえた移動式学習支援を提供していく予定です。また、セーブ・ザ・チルドレンは、今後も人道危機下にあるウクライナの人たちに対する支援を継続していきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援によって実施しました。
(海外事業部 ウクライナ事業担当 中村恵理)