南スーダン(公開日:2011.03.10)
村人に向けた研修を実施(2011.03.10)
カポエタでの栄養プロジェクトにおいて診療チームが活動を本格的に開始してから3カ月以上が経過しました。これまでに6,800人近い子どもの栄養状態を測定し、とくに重度の栄養不良の子ども120人に外来治療を与え、中程度の栄養不良の子ども500人に栄養補助食を配布しました。
一人でも多くの子どもを測定し、栄養不良の子どもたちに必要な診療を行うため、スタッフは毎日村々を忙しく駆け回っています。しかし、カポエタの村々はサバンナの広大な土地に散在しており、そこに行って村人を集め、子どもの測定をするのは容易ではありません。時には目指す村を見つけるのに3時間余りも車で走り回らなければならないこともあります。そこで、こうした車での巡回型スクリーニングだけでなく、村人が自分たちで栄養不良の子どもを見つけて巡回診療に連れてくるようにすることが必要になってきています。
巡回チームは、サバンナの道なき「通勤路」を毎日車で走っています
一方、巡回診療で見つけた程度の重い栄養不良の子どもは、栄養状態が回復して元気になるまで毎週継続して診療に通い、そこで巡回診療チームからもらう治療食や薬を毎日きちんと摂ることが不可欠です。しかし、遠くから来ている母親にとって、毎日の水くみや農作業の合間に巡回診療に子どもを連れてくるのは難しいこともあります。母親が外で仕事をしている間は年長の子どもたちが世話をする場合が多いのですが、その子たちが治療食を食べてしまったりすることもあります。
そうした理由で栄養不良から十分に回復できなかったり、途中で診療への参加を辞めてしまうこともあり、このようなケースをどうするかが、プロジェクトの現在の課題になっています。子どもの回復率を高め、脱落者を少なくするためには、どうしても村で子どもの家庭を訪問して個別に指導する必要がでてきます。
このような課題に対応するために、村人から選んだボランティアと栄養改善員に対して研修を行いました。この研修では、「栄養不良とは何か」や「なぜ栄養不良を少なくする必要があるのか」について学び、こうしたことへのコミュニティの意識を高め、さらに「プロジェクトがどのようなサービスを提供するのか」や「そのためにどういったコミュニティのサポートが必要か」、などといったことを村人にわかりやすく説明できるようになることを目指しています。そして、コミュニティ参加の障害になることやその対策なども話し合いました。
ボランティアと栄養改善員への研修の様子
みんな熱心に意見を交わしています
研修では、途中で栄養改善員たちが急きょ考えた寸劇が組みこまれました。この劇ではある栄養不良の子どもの母親を主人公に、父親、近所の奥さん、村のボランティア、Save the Childrenの巡回診療チームなどが登場し、村人が巡回診療にゆくようになるまでに様々な人たちの意見や考え方が影響する様子をうまく演じました。特にこの劇を見た参加者たちは急にいろいろな考えが頭に浮かんだようで、それ以前より活発な意見が交わされるようになりました。
また、今回の研修のもうひとつの目玉は、フリップチャートという日本の紙芝居のようなものを使った栄養教育の練習です。特に栄養不良の予防に結びつく適切な母乳や離乳食の与え方、手洗いや衛生などについて参加者が実際に説明する練習をしました。村人にとってこうした紙芝居のようなものは珍しかったようですが、実際の状況をイメージしながら持ち方や見せ方から順を追って学ぶことができました。
フリップチャートを使った演習の様子
手洗いの大切さについてのフリップチャート
研修の最後に、参加者が話し合って、その翌週に各村をまわって村のリーダーたちを招いたコミュニティ会議をすることになりました。会議では、ボランティアの人たちが村長や長老たちに対して、研修で学んだことを使って説明をしました。
村のリーダーたちを招いたコミュニティ会議の様子
このようにして少しずつ村の人々の意識を改善する活動を始めたことで、自分たちで栄養不良の子どもたちを見つけて連れてきたケースも増え始め、また前より巡回診療から脱落する子どもも減り始めています。しかし、こうした活動は今後まだまだ地道に続けてゆく必要があるため、引き続き巡回診療と同時にコミュニティの人々への研修にも力を入れていきます。
この事業はジャパン・プラットフォームの支援により実施されています。
JPFスーダン南部HP: http://www.japanplatform.org/area_works/sudan/new-south.html