スリランカ(公開日:2014.08.25)
スリランカ北部での就学前教育(vol.1)(2014.08.25)
スリランカでは2009年5月に1983年から25年間続いた内戦が終了しました。
戦闘の舞台となったのは北部州です。その中でもムライティブ県は、内戦最後の激戦地域となったため、内戦が終了してからも、地雷が残っているために除去作業が行われたり、また政府軍によって厳重警備地域として指定されたりしたために、長い間立ち入りが禁止されていました。2010年3月以降になって立ち入り禁止が解除され、戦闘を逃れて避難していた人々がようやく故郷に戻り始めました。
砲弾の跡が残るムラティブ県の市街の様子
ある就学前教育センターの敷地
活気にあふれるスリランカ最大の都市コロンボの市内の様子
比較的早い段階で人々が故郷に戻った北部州の他の地域と異なり、ムラティブ県では、内戦中、軍に移住させられ、家が破壊されたため故郷に戻れていない人々も多く、地域の復興はようやく始まったばかりです。そのため、電気・通信網・道路といった社会的インフラの回復や各世帯の生計手段の回復などがどうしても優先される状況にあります。
小学校のような教育施設も少しずつではありますが、新しい教室が出来たり、壊れていた教室が修復されたりしています。一方で、小学校に入る前の子どもたちのための就学前教育センター(日本の幼稚園や保育園にあたる施設)は、まだまだ支援が追い付いていません。多くのセンターが、戦乱の中で崩壊・荒廃したため、仮設テントや近くの建物を借りたり、屋根がなく壁が壊れた施設の中でそのまま授業を行ったりしているところもあり、ムラティブ県の子どもたちを取り巻く環境は安全や安心とは程遠い状況にあります。
また、センターに勤める教員についても、資格を持っていなかったり、教え方がわからないままでずっと子どもたちと接して来たりと政府が定める基準に達してないことも多く、子どもたちは適切な環境下で教育を受けることができていません。また、教員自身も長年続いた内戦で心に傷を負っており、ケアが望まれているものの、支援が十分に行われない状態が続いています。
トタンで作ったセンター。
電気もなく、子どもたちは日中でも暗い場所で過ごさなければいけない。
別のセンターの様子。ここにはトイレもない。
人間の脳はその80%が5歳に達するまでに形成されるともいわれており、幼少期の発達はその後の成長をも左右します。この時期に子どもたちにとって安心を感じられる場所を提供することは、子どもの情緒的安定と、周りの大人たちから守られているという安心感、ひいては他者への信頼といった認知的・社会的発達をもたらします。
また、スリランカでは5歳から小学校教育が始まりますが、小学校に入る前に、椅子に座って先生の話を聞いたり、友達と一緒に絵を描いたり片づけを行うといったことを経験することで、子どもたちが学校という環境で学ぶための素地を育むことができ、授業にも付いていくことができるようになります。そして、この年齢の子どもたちが栄養のある食事をとって心身ともに健康に成長することで、大人になってからも病気にかかりにくくなったり、精神的に安定したりといった健全な発達を促すことができます。
ある就学前教育センターでの子どもたち
外にある遊具で遊ぶ子どもたち
以上のような背景のもと、2013年11月より「スリランカ北部における就学前教育事業」を実施しています。
ムラティブ県の3つの郡(マリティメパットゥ郡、プドゥックディリルップ郡、オッドゥスダン郡)の20の就学前教育センターを対象に、子どもにやさしい就学前教育の環境を整えることにより、対象地域の子どもたちの健全な発達を促すことを目標としています。
紛争終結後帰還したばかりの住民が多い地域で、子どもたちがより安全・安心できる場所を提供し、より質の高い学習・ケア環境を整備し、栄養及び健康状態を維持することは、特に初等教育に進学する前の3-5歳までの子どもたちの情緒的、認知的、社会的、身体的成長に欠かせません。その実現のためには、保護者やコミュニティ、行政の就学前教育に対する理解を促進し、センターの運営能力を向上していくことで、地域全体で就学前教育の環境を整え、子どもの心身的発達を包括的に支えていく体制の構築が必要となります。
具体的には、センターに通う子どもたちに最も大きな影響を与える教員、保護者、コミュニティを対象に、能力向上と意識の啓発を目指した研修を行います。
現在はベースライン調査を終えて、各種研修内容の詳細を現地の関係者と詰めているところです。夏から秋にかけて1回目の研修を実施する予定です。
将来には、この事業の経験・成果が活用され、紛争の影響を受けた北部州において就学前の子どもたちが健全に発達することを目指します。
引き続き、事業の進捗と子どもたちの成長の様子をこのブログでご報告していきます。
内戦の影響を受けた北部地域で子どもたちの健全な成長を目指していきます。
本事業は、皆さまからのご寄付、およびJICA草の根技術協力事業、また三平商会(ドコモショップ館山店)からのご支援により実施しています。
スリランカ担当:利川
戦闘の舞台となったのは北部州です。その中でもムライティブ県は、内戦最後の激戦地域となったため、内戦が終了してからも、地雷が残っているために除去作業が行われたり、また政府軍によって厳重警備地域として指定されたりしたために、長い間立ち入りが禁止されていました。2010年3月以降になって立ち入り禁止が解除され、戦闘を逃れて避難していた人々がようやく故郷に戻り始めました。
砲弾の跡が残るムラティブ県の市街の様子
ある就学前教育センターの敷地
活気にあふれるスリランカ最大の都市コロンボの市内の様子
比較的早い段階で人々が故郷に戻った北部州の他の地域と異なり、ムラティブ県では、内戦中、軍に移住させられ、家が破壊されたため故郷に戻れていない人々も多く、地域の復興はようやく始まったばかりです。そのため、電気・通信網・道路といった社会的インフラの回復や各世帯の生計手段の回復などがどうしても優先される状況にあります。
小学校のような教育施設も少しずつではありますが、新しい教室が出来たり、壊れていた教室が修復されたりしています。一方で、小学校に入る前の子どもたちのための就学前教育センター(日本の幼稚園や保育園にあたる施設)は、まだまだ支援が追い付いていません。多くのセンターが、戦乱の中で崩壊・荒廃したため、仮設テントや近くの建物を借りたり、屋根がなく壁が壊れた施設の中でそのまま授業を行ったりしているところもあり、ムラティブ県の子どもたちを取り巻く環境は安全や安心とは程遠い状況にあります。
また、センターに勤める教員についても、資格を持っていなかったり、教え方がわからないままでずっと子どもたちと接して来たりと政府が定める基準に達してないことも多く、子どもたちは適切な環境下で教育を受けることができていません。また、教員自身も長年続いた内戦で心に傷を負っており、ケアが望まれているものの、支援が十分に行われない状態が続いています。
トタンで作ったセンター。
電気もなく、子どもたちは日中でも暗い場所で過ごさなければいけない。
別のセンターの様子。ここにはトイレもない。
人間の脳はその80%が5歳に達するまでに形成されるともいわれており、幼少期の発達はその後の成長をも左右します。この時期に子どもたちにとって安心を感じられる場所を提供することは、子どもの情緒的安定と、周りの大人たちから守られているという安心感、ひいては他者への信頼といった認知的・社会的発達をもたらします。
また、スリランカでは5歳から小学校教育が始まりますが、小学校に入る前に、椅子に座って先生の話を聞いたり、友達と一緒に絵を描いたり片づけを行うといったことを経験することで、子どもたちが学校という環境で学ぶための素地を育むことができ、授業にも付いていくことができるようになります。そして、この年齢の子どもたちが栄養のある食事をとって心身ともに健康に成長することで、大人になってからも病気にかかりにくくなったり、精神的に安定したりといった健全な発達を促すことができます。
ある就学前教育センターでの子どもたち
外にある遊具で遊ぶ子どもたち
以上のような背景のもと、2013年11月より「スリランカ北部における就学前教育事業」を実施しています。
ムラティブ県の3つの郡(マリティメパットゥ郡、プドゥックディリルップ郡、オッドゥスダン郡)の20の就学前教育センターを対象に、子どもにやさしい就学前教育の環境を整えることにより、対象地域の子どもたちの健全な発達を促すことを目標としています。
紛争終結後帰還したばかりの住民が多い地域で、子どもたちがより安全・安心できる場所を提供し、より質の高い学習・ケア環境を整備し、栄養及び健康状態を維持することは、特に初等教育に進学する前の3-5歳までの子どもたちの情緒的、認知的、社会的、身体的成長に欠かせません。その実現のためには、保護者やコミュニティ、行政の就学前教育に対する理解を促進し、センターの運営能力を向上していくことで、地域全体で就学前教育の環境を整え、子どもの心身的発達を包括的に支えていく体制の構築が必要となります。
具体的には、センターに通う子どもたちに最も大きな影響を与える教員、保護者、コミュニティを対象に、能力向上と意識の啓発を目指した研修を行います。
現在はベースライン調査を終えて、各種研修内容の詳細を現地の関係者と詰めているところです。夏から秋にかけて1回目の研修を実施する予定です。
将来には、この事業の経験・成果が活用され、紛争の影響を受けた北部州において就学前の子どもたちが健全に発達することを目指します。
引き続き、事業の進捗と子どもたちの成長の様子をこのブログでご報告していきます。
内戦の影響を受けた北部地域で子どもたちの健全な成長を目指していきます。
本事業は、皆さまからのご寄付、およびJICA草の根技術協力事業、また三平商会(ドコモショップ館山店)からのご支援により実施しています。
スリランカ担当:利川