スリランカ(公開日:2014.11.25)
スリランカ北部での基礎教育〜小学校の現状と取組み〜(2014.10.23)
スリランカは知る人ぞ知る人材立国です。1948年に英連邦内の自治領として独立以来、一貫して人への投資を行い、教育や医療に力を入れてきました。学校教育は大学まで無償で、病気になった際の治療費なども基本的にはかかりません。その甲斐あって、途上国とは言いながら、就学率や識字率、平均余命は南アジアの国々の中では群を抜いており、先進国にも見劣りしないものとなっています。
ただし、その高い就学率や識字率の裏で、数値だけでは読み取りにくい問題が存在していることも明らかになってきています。セーブ・ザ・チルドレン・スリランカ事務所が昨年行った調査によると、学習障害を持った子どもたちは、そうでない子どもたちとの間で、識字に関する指標に大きな開きがあることが明らかになっています。また、経済発展のすすむ都市部と、私たちが事業を行っている北部などの地方との間の学校設備や教員数などの格差も顕著です。
北部のある小学校の教室の様子
また、26年続いた内戦が2009年に終了し、平和が訪れてから既に5年が経とうとしていますが、最後の激戦地となった北部地域では、最近になってようやく故郷に戻ってくることができた家庭も多く、小学校を含む多くの建物が現在も荒廃したままになっています。
弾痕の残る崩れかけた校舎や仮設テントの校舎で、ぼろぼろになった遊具や教材を修繕しながら、先生たちの手作りの教科書や外部からの支援による物資提供で、学校運営を何とか続けているというような小学校が数多く存在します。
学校の敷地を囲う柵がないために動物や部外者が自由に出入りしてしまったり、戦時中に残された鉄くずや医療器具の残骸が校庭に埋まっていたりして、友人たちと外で思い切り体を動かして遊べないという小学校もあります。
北部では人々は自分たちの生活の再建と復興に忙しく、また、不安定で稼ぎも限られる日雇い労働に従事する保護者が多いために、子どもたちの教育に費やせる時間もお金も限られています(日雇い労働の場合、一日働いて日本円で1,000円程度しか稼げない)。そのため、450ルピー(約350円)の制服が買えない家庭も多く、政府から支給される1着の制服しか持っていない子どもが大勢います。
また、家庭の経済的な状況から子どもに鉄くずを拾わせる保護者もおり、学校に毎日通えない子どもも多いのが現状です。政府の予算は市内の大規模学校に振り分けられる傾向があり、村の奥地にある小規模の学校への財政支援はほとんどありません。
現在も戦争の爪痕が残る北部地域。
きちんとした教室がないため、一時的に建てられた教室で現在も授業が行われているところも多い。
スリランカで一般的な白の制服。着替えを買う経済的余裕がなく、政府から支給される1着を着続ける子どもが特に北部には大勢いる。
教員たちも住民同様戦火から逃れていたために、心に戦争の傷跡を残しています。そうした教員たちには心理社会的なケア、長年の避難生活から教職に復帰するための研修、授業に必要な教材の配給などが必要にもかかわらず、地域の貧困、政府や行政の優先度の低さといった要因から、きちんとしたサポートが得られていません。また、子どもたちの数に対して教員の数が不足しており、実務経験のない教員がボランティアで授業を受け持っているケースも見られます。
このような状況下で、途中で学校を辞めざるを得ない子どもたちも多く存在します。ユニセフが、2013年に発表した報告書によると、スリランカ全体で5〜9歳の子どもの退学率は1%、10歳で1%、そして13歳では5.1%とされています。ただし、これは国全体の平均値であり、紛争の影響があった北部のデータは無く、学校に通えていない、また途中で辞めざるを得なかった子どもたちの割合は国平均よりも高いと言われています。
スリランカ最大の都市コロンボなど、教育環境の整った他の都市の子どもたちは、遊具にも、教材にも、教員の質にも恵まれ、北部の子どもたちとの差が大きく広がっています。
このような状況を改善するために、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2014年6月から、内戦の影響を受けた子どもたちが安心して学び、夢と希望を育める環境の創出、地域の平和に貢献する人材の育成を目標に、北部州ムラティブ県の小学校において支援事業を実施しています。事業内容は、学校環境の整備、子どもの理解を促す教授法や子どもの意見を取りいれるための教員向け研修の実施、そして経済的に厳しい状況にある子どもたちへの教材・制服の提供です。
引き続き、事業の進捗と子どもたちの成長の様子をこのブログでご報告していきます。
本事業は、皆さまからのご寄付、および株式会社プロデュース・センターからのご支援により実施しています。
スリランカ担当:利川
ただし、その高い就学率や識字率の裏で、数値だけでは読み取りにくい問題が存在していることも明らかになってきています。セーブ・ザ・チルドレン・スリランカ事務所が昨年行った調査によると、学習障害を持った子どもたちは、そうでない子どもたちとの間で、識字に関する指標に大きな開きがあることが明らかになっています。また、経済発展のすすむ都市部と、私たちが事業を行っている北部などの地方との間の学校設備や教員数などの格差も顕著です。
北部のある小学校の教室の様子
また、26年続いた内戦が2009年に終了し、平和が訪れてから既に5年が経とうとしていますが、最後の激戦地となった北部地域では、最近になってようやく故郷に戻ってくることができた家庭も多く、小学校を含む多くの建物が現在も荒廃したままになっています。
弾痕の残る崩れかけた校舎や仮設テントの校舎で、ぼろぼろになった遊具や教材を修繕しながら、先生たちの手作りの教科書や外部からの支援による物資提供で、学校運営を何とか続けているというような小学校が数多く存在します。
学校の敷地を囲う柵がないために動物や部外者が自由に出入りしてしまったり、戦時中に残された鉄くずや医療器具の残骸が校庭に埋まっていたりして、友人たちと外で思い切り体を動かして遊べないという小学校もあります。
北部では人々は自分たちの生活の再建と復興に忙しく、また、不安定で稼ぎも限られる日雇い労働に従事する保護者が多いために、子どもたちの教育に費やせる時間もお金も限られています(日雇い労働の場合、一日働いて日本円で1,000円程度しか稼げない)。そのため、450ルピー(約350円)の制服が買えない家庭も多く、政府から支給される1着の制服しか持っていない子どもが大勢います。
また、家庭の経済的な状況から子どもに鉄くずを拾わせる保護者もおり、学校に毎日通えない子どもも多いのが現状です。政府の予算は市内の大規模学校に振り分けられる傾向があり、村の奥地にある小規模の学校への財政支援はほとんどありません。
現在も戦争の爪痕が残る北部地域。
きちんとした教室がないため、一時的に建てられた教室で現在も授業が行われているところも多い。
スリランカで一般的な白の制服。着替えを買う経済的余裕がなく、政府から支給される1着を着続ける子どもが特に北部には大勢いる。
教員たちも住民同様戦火から逃れていたために、心に戦争の傷跡を残しています。そうした教員たちには心理社会的なケア、長年の避難生活から教職に復帰するための研修、授業に必要な教材の配給などが必要にもかかわらず、地域の貧困、政府や行政の優先度の低さといった要因から、きちんとしたサポートが得られていません。また、子どもたちの数に対して教員の数が不足しており、実務経験のない教員がボランティアで授業を受け持っているケースも見られます。
このような状況下で、途中で学校を辞めざるを得ない子どもたちも多く存在します。ユニセフが、2013年に発表した報告書によると、スリランカ全体で5〜9歳の子どもの退学率は1%、10歳で1%、そして13歳では5.1%とされています。ただし、これは国全体の平均値であり、紛争の影響があった北部のデータは無く、学校に通えていない、また途中で辞めざるを得なかった子どもたちの割合は国平均よりも高いと言われています。
スリランカ最大の都市コロンボなど、教育環境の整った他の都市の子どもたちは、遊具にも、教材にも、教員の質にも恵まれ、北部の子どもたちとの差が大きく広がっています。
このような状況を改善するために、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2014年6月から、内戦の影響を受けた子どもたちが安心して学び、夢と希望を育める環境の創出、地域の平和に貢献する人材の育成を目標に、北部州ムラティブ県の小学校において支援事業を実施しています。事業内容は、学校環境の整備、子どもの理解を促す教授法や子どもの意見を取りいれるための教員向け研修の実施、そして経済的に厳しい状況にある子どもたちへの教材・制服の提供です。
引き続き、事業の進捗と子どもたちの成長の様子をこのブログでご報告していきます。
本事業は、皆さまからのご寄付、および株式会社プロデュース・センターからのご支援により実施しています。
スリランカ担当:利川