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スリランカ
(公開日:2011.11.02)

アンパラ県における教育支援事業 〜子どもたちが安心・安全に教育を受けるために〜(2011.11.2)

 

 




DSC00332.JPG 出来上がった新しい校舎と子どもたち


  


スリランカの東部に位置するアンパラ県では、2009年に終わった内戦の被害を長年にわたって被った地域であるとともに、2004年の大津波の被害の影響が現在でも色濃く残っています。一方で、各国から寄せられる支援の多くは、内戦が最後まで続いた北部に向けられがちで、アンパラ県をはじめとする東部や山間部には十分な支援が行き届いていません。ンフラ整備は遅々として進まず、子どもたちが通う学校はどれも、経年による老朽化や損壊がひどい状態にあります。


 


 



current classroom.JPG  修復前の既存教室の様子。椅子・机がなく、屋根が崩れ危険なため、使用することができませんでした。


 


ティーケー・ウラニ・サラスワティ・ヴィデャラム小中一貫校もそのような学校の一つでした。同校には、女生徒46名、男子生徒49名、合計95名が在籍しており、周辺34km3村に住む生徒たちが通っています。学校は2010年に9学年まで収容する学校として登録されたのですが、現在小学校6年生までの学級のみが開始されています。教室が破損して使用できない状態にあったため、79学年は授業を開始出来ずにいました。他の学校は生徒たちの家から遠くにあるため通うことが難しく、高学年の生徒たちは授業を受けられない状態が続いています。また、この学校には先生が8名いますが、英語、数学、化学の担任教師が不足しています。


 


 




IMG_0832.JPG  同校での小学1年生の国語(タミル語)の授業風景。


机や椅子が不足しており、床に座って書き取りをしなければならず、


雨の日は床が雨水や泥水で汚れており、床に座って勉強することもできませんでした。


 


学校には4校舎あり、1棟は職員用、他の3棟を教室として使用しています。教室3棟のうちの特に1つは損壊が激しく、雨季には教室内が水であふれ、授業を行えない状態でした。そのため、雨季には生徒全員が授業を受ける場所が確保できず、ほとんどの生徒は雨季の間は学校には通わず、家で過ごさざるを得ない状態にありました。また、教材、学用品、図書設備も不足しています。


 


このような状況に対してセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)では、株式会社CHINTAI様からのご寄付を頂き、20111月から6月まで同校を対象に教育支援事業を実施しました。



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新設の教室には水はけのための排水路が設置されました。


 


 


実施に際しては、校長先生や教員、保護者、その他関係者と協議し、以下の内容を行いました。


(1) 学校校舎の修復、および設備の修復


地方教育局、および学校関係者と話し合い、修復が必要な箇所のうち、特に至急に修復が必要な1)既存教室(1教室)の修復、2)教室(1教室)を新設、3)学習机、学習椅子の購入、4)校内にある井戸の修復および飲料水用の水タンクの設置を実施しました。実施に当たっては、保護者の方々がボランティアとして修復に関わって下さりました。


  


 



IMG_2281.JPG  新しい机と椅子が配備され、天候に関係なく机に座って黒板を写すことができます。


 


 


(2) 生徒会の形成、および学校環境整備・学校運営への子どもの参加の促進


同小中学校には、PTAが組織されており、親はPTAを通じて学校の環境改善や運営に参加することができますが、学校に通う子どもたちで構成される生徒会はなく、自らの意見やイニシアティブを集約する「場」がありませんでした。そこで教員の呼びかけにより、同小学校で現在最上級生である56年生の子どもたちを集め、生徒会の役割や活動を説明したところ、多くの子どもたちが生徒会の組織への意欲を見せたことから、生徒会を組織しました。その後、子どもたちが主体的に学校環境整備や運営に参加することができるよう5年生、6年生の子どもたちを中心に生徒会の運営や役員の役割を学ぶリーダーシップ研修を学校と協力して実施しました。


 


子どもたちは、学校をよくしていくためにどうしたらいいのか、何ができるのか、生徒会メンバーが集まって考え、話し合うことは、実はとても面白く、楽しいことなんだと感じたようです。生徒会の初めてのプロジェクトは、本事業で建設した1教室、および修復した既存教室2教室の外壁と内壁のペンキの色を選ぶことでした。生徒会を中心に子ども達が選んだ色で塗られた新しい教室が完成すると、子ども達は、自分たちで決めたことが目に見える形で現れたことがとても嬉しく、また学校環境改善に貢献できたことをとても誇らしく感じています。



 




 


 



DSCN5690.JPG                   生徒会で話し合った事柄をまとめています。


 


 



Color selection for the class room painting 1.jpg


                生徒会で話し合い、教室の壁の色を自分たちで決めました。


 


 


(3) 教員研修の実施


同校を管轄する州政府教育局と協力して、同教育局の教育担当官や弊会の教育専門家を講師に招き、同小中学校および近隣の小中学校の教員18名を対象に、教員研修を実施しました。研修に参加した教員は、教育の概念や政府が推奨する学校環境水準について講義を受け、体罰や差別をなくし全ての子どもたちが平等に教育を受けることの大切さや、子どもの自主性や創造性を引き出すような子どもにやさしい学習環境づくりについて学びました。参加者は、体罰や否定的な言葉による指導でなく、肯定的で子どもたちのやる気を引き出すようなコミュニケーションのあり方をロールプレイで体験しました。また講師は、モデルスクールでの整理整頓された教室や子どもたちの作品や学習ポスターが飾られた教室など、子どもにやさしい環境作りを実践している例を紹介しました。研修に参加した教員からは、「子どもにやさしい環境作りというアプローチは初めて聞いた」「教え方やちょっとした工夫で学習環境を改善することできることを知った」「子どもの親にも伝え学校の活動へのより積極的な参加を求めていきたい」などの声が聞かれました。


 


 



P5070004.JPG      教員もやる気が高まり、子どもたちも興味を持って授業に臨むようになりました。


 


今回の支援に関して、以下のような声が寄せられています。


 


校長の声


「今回の支援で開催された教員研修には、私と教員4名が参加しました。研修が終わってから、大きな変化があったと感じました。例えば教員の振る舞いといった部分です。以前は全員ではないにしろ、時間通りに学校に来ない教員や早退する教員がいました。働く気がなかったのです。また、教員としての責任にも欠けていたと思います。しかし今はすべてが一変しました。学校にきちんと来る教員の数は増え、この地域で最も高い95%の出勤率となっています。」


 


「今回のご支援で教室の修復や設備の拡充をしていただいたことに本当に感謝しています。特に、子どもにやさしい学習環境を整えるために、教室の屋根の修復や拡張をしていただいたり、水タンクを設置していただいたり、遊び場を整えてくださったことは子どもたちが今後この学校で学んだり遊んだりしていくうえで大変大きな意味を持ちます。今まで6年生までしか受け入れることのできなかったこの学校ですが、来年度には枠を広げて8年生までを迎えようと考えています。」


 


子どもの声


「私たちの学校がほかの学校みたいにきれいになってとてもうれしいわ。新しい教室で勉強できるのがすごくうれしい。井戸水なんて昔はとっても塩からかったけど、今はおいしい水が飲めるの。新しく出来た教室とか水タンクとかを見ると『さあがんばって勉強しよう!』って思います。」


 


「先生だけじゃなく、父さん・母さんがすごく変わったわ。前は、先生たちにあんまりやる気がなくて、あんまり気にかけてもらえなかった。授業も先生が黒板に板書するだけで、本当にその科目が学べているかどうか不安だったし。でも今はいろいろなやり方で教えてくれるの。前よりももっと先生たちに気にかけてもらっているように感じるし、今はすっごく楽しいよ。」


 


「学校がすごく変わったよ。遊び場がきれいになったし、新しい教室や水タンクができたし、屋根も新しくなったし。新しい学校を見ると、もっと教室で勉強したいなあって思うんだ。」


 


「父さんや母さんも学校の行事に参加するようになったよ。今では僕らがどんな勉強をしているか、ちゃんと分かってくれてるんだ。父さんは学校のフェンス作りを手伝ってたし、母さんも校内やトイレの掃除をほかのお母さんと一緒にしているよ。父さんや母さんがそうやって学校のことを気にかけてくれているのを見ると、なんだか僕まで嬉しくなっちゃうな。」



  


 



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                          「学校に行くのが楽しい!」「もっと勉強したいな」


 


 




6年生までの学級しか開かれていなかったティーケー・ウラニ・サラスワティ・ヴィデャラム小中一貫校ですが、今回のご支援のおかげで、8年生までが同校に通学できる見込みとなりました。それと並行して上がってきた課題が、増加する学級の担任となる教師の確保です。本事業終了後、学校運営委員会と郡教育事務所との間でミーティングが開かれ、郡教育事務所長は12月までに同校に対する教員の補充を約束しました。また十分な広さの校庭の確保や科学室などの設備の充実が課題として挙がっています。学校運営委員会は近日中に、郡政府事務所を訪れ校庭用の土地の確保の陳情を行うとともに、設備の充実について保護者からのさらなる協力を呼びかけていきます。


 




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