アフリカ(公開日:2024.04.26)
【スーダン危機】武力衝突から1年:子ども2人に1人が攻撃に晒され
セーブ・ザ・チルドレンは、この1年間、スーダンで1,000万人以上の子どもが銃撃や砲撃などから5km圏内の紛争地域に暮らしていると報告してきました。
武力紛争が起こった位置や事象データ事業(ACLED)の分析から、スーダンでは、2人に1人の子どもが紛争の前線から5km圏内に現在いる、もしくは、過去1年間にいたことがあり、銃撃や砲撃、空爆などに晒されてきたことが明らかになりました[1]。
この人数は、武力衝突発生後1ヶ月間に同様の危機に晒された人数である660万人からさらに60%増加しており、紛争が国内において規模および範囲を広げ続けていることを示しています。
新たなACLEDとの共同分析によると、2023年4月15日にハルツームで武力衝突が発生して以来、1,000万人以上の子どもたちが戦闘や爆撃、即席爆発装置(IED)攻撃、迫撃砲やミサイル攻撃、市民を狙った直接的な攻撃に晒されてきました。
そして、壊滅的なけが、死、避難、精神的な被害、家やコミュニティの破壊を目のあたりにしたり、実際に経験したりしています。
2023年4月以降の暴力的事象の多くは、人口10万人以上の町や都市を含むスーダンにおいて、人口の密集している地域で発生しており、多くの子どもたちが深刻な精神的苦痛になるような暴力に晒され続けています[3]。
ACLEDの分析によると、昨年1年間で、こうした暴力に繰り返し晒されていた子どもは、約500万人にのぼります。
16歳のジュマンさんは、2023年11月に家族とともにスーダンから逃れ、現在はエジプトのカイロで暮らしており、セーブ・ザ・チルドレンが支援するスーダン難民のための学校に通っています。
「戦闘は本当に過酷でした。スーダンを離れるなんて想像もしていませんでした。」と言います。
カイロでは、学校の親友で同じくスーダンを追われた15歳のハナアさんとサッカーを楽しんでいます。ジュマンさんは、いつかスーダンに戻り、将来は医者になりたいと考えています。
「スーダンでの生活は楽しかったです。学校に行き、家に帰ると家族と過ごし、(友人と一緒にいる時は)楽しく勉強をしていました。」と話します。
セーブ・ザ・チルドレンのスーダン事務所所長アリフ・ノール(Dr. Arif Noor)は、次のように述べています。
「今回の調査結果は、武力闘争発生後から1年の間に、スーダンであまりに多くの子どもたちが、いかに死やけがの危機に晒されてきたかを示しています。
スーダンの子どもたちが味わった苦しみは、想像を絶するものです。殺戮、虐殺、銃弾が飛び交う道路、死体、砲撃された家屋を目の当たりにする一方で、自分たち自身が殺されたり、負傷したり、戦闘に参加させられたり、性的暴力を受けたりするのではないかという、現実的な恐怖とともに生活しています。
国連安全保障理事会は最近、停戦を呼びかけましたが、依然として紛争は続いており、数百万人の子どもたちが戦闘に巻き込まれています。
状況は限界に達しています。数百万人以上の子どもたちが十分な食料を手に入れることができず、380万人が栄養不良に陥っています。
また、国の保健医療サービスが機能していないために、何千人もの子どもたちが病気で命を落とす危機にも直面しています。
この1年間、学校に行けた子どもはひとりもいません。スーダンの子どもたちが経験しているようなことを、子どもたちは経験するべきではありません。」
ACLEDの代表兼最高経営責任者であるクリオナッド・ローリー(Clionadh Raleigh)は、次のように述べています。
「2023年4月に武力闘争が発生して以来、スーダン全土で1,000万人以上の子どもたちが致命的な暴力に晒され続けています。
この数字は、同様の危機に晒されてきた子どもの人数としては、世界で最も多く、ドイツの子どもの総人口に当たります。
スーダンの子どもたちの未来は、スーダンの人々が耐えてきた苦しみやその結果を無視した権力争いのうえに、無慈悲にも犠牲にされています。
紛争が1年間続いた今、この流れは今後数ヶ月の間に、さらに多くの子どもたち、家族、コミュニティが被害を受け、命を落とすことを予測できるものです。」
かつて、スーダンの穀倉地帯であったアル・ジャジーラを含む国内各地に戦闘が拡大するにつれ、致命的な戦闘に晒される子どもたちの数は増加しています。
紛争の激化により、400万人の子どもたちが今までに避難を余儀なくされており、この数は世界で最も多く[4]、また、今後何らかのアクションを起こさない限り、23万人の子どもと母親が飢餓で亡くなる可能性があります。
これまで、子どもを含む1万5,200人以上が犠牲になり、数千人が負傷したと言われていますが、この数字は、報告されている人数であり、実際の人数より少ないとも考えられています[5]。
今日まで、国連の人道支援計画の5%が充当されていますが、いまだ、25億ドル(約3,870億円)以上が不足しています [6]。
セーブ・ザ・チルドレンは、1983年からスーダンで活動しています。2023年には、150万人の子どもを含めた計210万人に直接的支援を行い、子どもの保護、質の高い教育へのアクセス、保健・栄養支援、緊急事象への対応に重点を置いた事業を実施しています。
<いのち・みらい貯金箱>
セーブ・ザ・チルドレンは、国内外の緊急・人道支援の最前線で、保健医療、食料やこころのケアなど幅広い支援を提供し、子どもたちの命と未来を守るために活動しています。「いのち・みらい貯金箱」は、緊急支援が必要な地で迅速に支援を行うための資金です。世界各地の自然災害や人道危機における支援に役立てられます。
[1]ACLEDとWorldPopは、紛争の影響を受けた人々の人口統計学的・地理学的特性に関する情報を提供する指標を開発している。この指標は、ACLEDの事象に基づく紛争データとWorldPopが推定する人口規模を統合し、各事象による市民への影響を推定するものである。https://acleddata.com/conflict-exposure/
[2] 本記事に用いられたスーダンにおいて紛争に晒された子どもたちに関するデータ分析は、子どもたちに焦点を当て、かつACLEDが紛争に「晒された」地域に、異なるバッハーゾーンを適用しているため、オンラインACLED紛争暴露計算機による全人口暴露数とは異なる。
[3] ACLEDは、昨年起きた暴力的事象の約3分の2が人口10万人以上の都市や町で起きており、かつ、そのうちの95%が、既にこういった事象に晒された全地域の56%で起きていると推定している。これは、この地域に暮らす人々が、暴力に繰り返し晒されていることを示唆している。
[4] unicef.org/sudan/reports/unicef-sudan-humanitarian-situation-report-january-2024
[5] 国連が引用しているACLEDの数字
[6] 国連人道問題調整事務所(UN OCHA)財務追跡サービスhttps://fts.unocha.org/countries/212/summary/2024
武力紛争が起こった位置や事象データ事業(ACLED)の分析から、スーダンでは、2人に1人の子どもが紛争の前線から5km圏内に現在いる、もしくは、過去1年間にいたことがあり、銃撃や砲撃、空爆などに晒されてきたことが明らかになりました[1]。
この人数は、武力衝突発生後1ヶ月間に同様の危機に晒された人数である660万人からさらに60%増加しており、紛争が国内において規模および範囲を広げ続けていることを示しています。
新たなACLEDとの共同分析によると、2023年4月15日にハルツームで武力衝突が発生して以来、1,000万人以上の子どもたちが戦闘や爆撃、即席爆発装置(IED)攻撃、迫撃砲やミサイル攻撃、市民を狙った直接的な攻撃に晒されてきました。
そして、壊滅的なけが、死、避難、精神的な被害、家やコミュニティの破壊を目のあたりにしたり、実際に経験したりしています。
2023年4月以降の暴力的事象の多くは、人口10万人以上の町や都市を含むスーダンにおいて、人口の密集している地域で発生しており、多くの子どもたちが深刻な精神的苦痛になるような暴力に晒され続けています[3]。
ACLEDの分析によると、昨年1年間で、こうした暴力に繰り返し晒されていた子どもは、約500万人にのぼります。
16歳のジュマンさんは、2023年11月に家族とともにスーダンから逃れ、現在はエジプトのカイロで暮らしており、セーブ・ザ・チルドレンが支援するスーダン難民のための学校に通っています。
「戦闘は本当に過酷でした。スーダンを離れるなんて想像もしていませんでした。」と言います。
カイロでは、学校の親友で同じくスーダンを追われた15歳のハナアさんとサッカーを楽しんでいます。ジュマンさんは、いつかスーダンに戻り、将来は医者になりたいと考えています。
「スーダンでの生活は楽しかったです。学校に行き、家に帰ると家族と過ごし、(友人と一緒にいる時は)楽しく勉強をしていました。」と話します。
セーブ・ザ・チルドレンのスーダン事務所所長アリフ・ノール(Dr. Arif Noor)は、次のように述べています。
「今回の調査結果は、武力闘争発生後から1年の間に、スーダンであまりに多くの子どもたちが、いかに死やけがの危機に晒されてきたかを示しています。
スーダンの子どもたちが味わった苦しみは、想像を絶するものです。殺戮、虐殺、銃弾が飛び交う道路、死体、砲撃された家屋を目の当たりにする一方で、自分たち自身が殺されたり、負傷したり、戦闘に参加させられたり、性的暴力を受けたりするのではないかという、現実的な恐怖とともに生活しています。
国連安全保障理事会は最近、停戦を呼びかけましたが、依然として紛争は続いており、数百万人の子どもたちが戦闘に巻き込まれています。
状況は限界に達しています。数百万人以上の子どもたちが十分な食料を手に入れることができず、380万人が栄養不良に陥っています。
また、国の保健医療サービスが機能していないために、何千人もの子どもたちが病気で命を落とす危機にも直面しています。
この1年間、学校に行けた子どもはひとりもいません。スーダンの子どもたちが経験しているようなことを、子どもたちは経験するべきではありません。」
ACLEDの代表兼最高経営責任者であるクリオナッド・ローリー(Clionadh Raleigh)は、次のように述べています。
「2023年4月に武力闘争が発生して以来、スーダン全土で1,000万人以上の子どもたちが致命的な暴力に晒され続けています。
この数字は、同様の危機に晒されてきた子どもの人数としては、世界で最も多く、ドイツの子どもの総人口に当たります。
スーダンの子どもたちの未来は、スーダンの人々が耐えてきた苦しみやその結果を無視した権力争いのうえに、無慈悲にも犠牲にされています。
紛争が1年間続いた今、この流れは今後数ヶ月の間に、さらに多くの子どもたち、家族、コミュニティが被害を受け、命を落とすことを予測できるものです。」
かつて、スーダンの穀倉地帯であったアル・ジャジーラを含む国内各地に戦闘が拡大するにつれ、致命的な戦闘に晒される子どもたちの数は増加しています。
紛争の激化により、400万人の子どもたちが今までに避難を余儀なくされており、この数は世界で最も多く[4]、また、今後何らかのアクションを起こさない限り、23万人の子どもと母親が飢餓で亡くなる可能性があります。
これまで、子どもを含む1万5,200人以上が犠牲になり、数千人が負傷したと言われていますが、この数字は、報告されている人数であり、実際の人数より少ないとも考えられています[5]。
今日まで、国連の人道支援計画の5%が充当されていますが、いまだ、25億ドル(約3,870億円)以上が不足しています [6]。
セーブ・ザ・チルドレンは、1983年からスーダンで活動しています。2023年には、150万人の子どもを含めた計210万人に直接的支援を行い、子どもの保護、質の高い教育へのアクセス、保健・栄養支援、緊急事象への対応に重点を置いた事業を実施しています。
<いのち・みらい貯金箱>
セーブ・ザ・チルドレンは、国内外の緊急・人道支援の最前線で、保健医療、食料やこころのケアなど幅広い支援を提供し、子どもたちの命と未来を守るために活動しています。「いのち・みらい貯金箱」は、緊急支援が必要な地で迅速に支援を行うための資金です。世界各地の自然災害や人道危機における支援に役立てられます。
[1]ACLEDとWorldPopは、紛争の影響を受けた人々の人口統計学的・地理学的特性に関する情報を提供する指標を開発している。この指標は、ACLEDの事象に基づく紛争データとWorldPopが推定する人口規模を統合し、各事象による市民への影響を推定するものである。https://acleddata.com/conflict-exposure/
[2] 本記事に用いられたスーダンにおいて紛争に晒された子どもたちに関するデータ分析は、子どもたちに焦点を当て、かつACLEDが紛争に「晒された」地域に、異なるバッハーゾーンを適用しているため、オンラインACLED紛争暴露計算機による全人口暴露数とは異なる。
[3] ACLEDは、昨年起きた暴力的事象の約3分の2が人口10万人以上の都市や町で起きており、かつ、そのうちの95%が、既にこういった事象に晒された全地域の56%で起きていると推定している。これは、この地域に暮らす人々が、暴力に繰り返し晒されていることを示唆している。
[4] unicef.org/sudan/reports/unicef-sudan-humanitarian-situation-report-january-2024
[5] 国連が引用しているACLEDの数字
[6] 国連人道問題調整事務所(UN OCHA)財務追跡サービスhttps://fts.unocha.org/countries/212/summary/2024