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南スーダン
(公開日:2025.01.23)

【南スーダン】国内避難民の子どもをあらゆる暴力から守る仕組みをつくるために

 
複合的な人道危機が続く南スーダンで、子どもたちを守るために
2011年に独立した南スーダン共和国。しかし、その後も紛争が絶えず、さらに気候変動や感染症蔓延の影響が重なり、人々の生活は深刻な人道危機に直面しています。特に、洪水や新型コロナウイルス・エボラウイルスなどの感染症、物価高騰など、さまざまな要因が重なり、2023年11月時点では900万人1が人道支援を必要としていました。


また2023年4月には、隣国スーダンで大規模な武力衝突が発生し、その後多くの人々が安全を求めて南スーダンに避難してきました。この新たな危機により、南スーダン国内での避難民の数は急増し、既存の支援体制がさらに圧迫され2、避難民キャンプやホストコミュニティでは食料や医療、子どもの保護に対するニーズが一層高まっています。



洪水によって家々が被害にあった南スーダン東部ジョングレイ州ボル郡の様子
(2021年1月)


子どもの保護、性とジェンダーに基づく暴力(SGBV)の課題
こうした状況の中で、南スーダンでは、暴力や虐待からの保護を必要とする人々が増えています。2024年に南スーダンで保護を必要としている子どもや青少年は320万人と推計3され、また、約270万人が、性とジェンダーに基づく暴力(Sexual and Gender-Based Violence/SGBV)のリスクに直面していると報告されています4。特に国内避難民キャンプの過密状態は、これらのリスクをさらに高めています。


洪水被害で設立されたマンガラ国内避難民キャンプの現状
マンガラ国内避難民キャンプは、中央エクアトリア州に位置し、2020年に洪水の被害を受けたジョングレイ州の住民を受け入れるために設立されました。このキャンプでは2023年10月時点で約3万9千人が暮らしています5



洪水の被害により、南スーダン東部ジョングレイ州ボル郡の家を離れ避難所で暮らす
子どもと母親(2021年1月)



子どもの保護に関するニーズの大きさを表した地図と支援対象地の場所
(出典:OCHA, South Sudan: Humanitarian Needs and Response Plan 2024, November 2023, p.18)

国内避難民キャンプでは、シェルター(簡易住居)や水・衛生、教育、食糧サービスなどの基礎的な支援が不足しており、特に子どもの保護やSGBVサバイバー(SGBV被害に遭った人)への支援が重要な課題となっています。例えば、セーブ・ザ・チルドレンが2022年に実施した調査では、回答者の98.9%が「子どもに体罰を加えた経験がある」と答え、家庭内での虐待リスクの深刻さが明らかになりました。また、家庭内で女性が財産を持たず、生活を男性に依存しているため、親密なパートナーからの暴力のリスクが高いことも指摘されています。さらに、児童婚や性的搾取の被害に遭う子どももおり、被害者自身が社会的差別・偏見や報復を恐れて、被害を報告しないケースが多いのが現状です。

また、避難民だけでなく近隣のホストコミュニティでもSGBVや子どもの保護に関する支援が不足しており、キャンプの住民に加え、ホストコミュニティも対象とした支援が必要とされています。

支援の拡充と現地での取り組み
こうした複雑な課題を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、2022年からマンガラ国内避難民キャンプで子どもたちの保護とSGBVサバイバーへの支援を行っています。2023年10月〜2024年9月に行った2年目の事業では、先行事業からの学びを活かし、以下のような取り組みを行いました。

● 保護が必要な子どもを特定し支援する取り組み(ケースマネジメント)
虐待やネグレクト、搾取、SGBVを含めた暴力などの被害を受けた子どもや、そのようなリスクがある子ども、脆弱な立場におかれた子どもを特定し、その子どもが直面している問題の解決に向けた個別支援(ケースマネジメント)を行いました。特に、SGBVの被害を受けた子どもには、専門的な研修を受けたスタッフが対応し、必要に応じて保健・医療機関での処置を支援するなど、特別な配慮の下で支援を行いました。また、養育者と離ればなれになってしまった子どもについては、家族の追跡と再会の手助けをしました。

こうした支援を進めるにあたっては、他の支援機関との連携がとても重要です。そのため、他支援機関との会合を開き、保健施設に専門の担当者を配置するなど、必要な支援をスムーズに届けられる仕組みを促進しました。



子どもの保護の活動を担うスタッフへの研修の様子
(2023年12月、マンガラ国内避難民キャンプ)


精神保健・心理社会的支援の提供と拡充
3つの学校に「子どもにやさしいスペース」を作り、研修を受けたファシリテーターや学校関係者が、子どもたちに対し構造化された心理社会的支援のグループセッションを行いました。長期化する避難生活などにより不安定な環境に身を置く子どもたちが、安心できる環境において、縄跳びや積み木、ストーリーテリング、歌やスポーツなどの活動を通じて、ストレスを和らげ、心と身体の健康を保ち、困難に立ち向かう力(レジリエンス)を高めることを目指しました。

また、グループセッションや個別支援を通じてさらにケアが必要とされた子どもには、少人数や個別でのカウンセリングを提供しました。



学校でのグループセッションの様子(2024年3月、マンガラ国内避難民キャンプ)


性とジェンダーに基づく暴力(SGBV)の予防と対応強化
個別支援に加え、女子や女性が安心して過ごせるスペースを設けました。ここでは、レクリエーションやグループセッション、自身や家族への心と身体のケアに関する教育、SGBVに関する相談や情報提供を行い、SGBVサバイバーやリスクがある女子や女性が安心・安全に過ごせる居場所を提供しました。利用者からは「この場所があることで地域の中で安心感を持って生活できる」などの声が多く聞かれました。

さらに、SGBVサバイバー、障害のある女子や女性、養育者と離れてしまった女子、学校に通えていない女子などに対して、再利用可能な生理用パッドや下着、石けん、懐中電灯などが入った「女性支援キット」を配布しました。また、地域での啓発活動を通じて、SGBVを防ぐための意識を高める取り組みも行いました。



SGBVサバイバー支援に関する研修の様子
(2024年3月、マンガラ国内避難民キャンプ)


地域の力で子どもを守る仕組みづくり
子どもたちを暴力や虐待から守るため、地域の中から選ばれたメンバーが「地域に根差した子どもの保護ネットワーク」を作り、そのメンバーに研修を行いながら、地域全体で子どもへの暴力や虐待などを予防・対応する体制を整えました。メンバーは地域の中で、暴力などのリスクに晒されている子どもを見つけて必要な支援へつないだり、地域全体で暴力などから子どもを守るため、地域住民の意識を高める活動を行う重要な役割を担っています。

地域の人たち自身が主体となり問題解決に取り組むことで、地域の課題への予防や対応能力が向上するとともに、コミュニティへの帰属感や課題への当事者意識、自分たちの地域をより良くしようという意識が高まったことも感じられました。



地域住民に対する意識啓発活動の様子(2024年7月、マンガラ国内避難民キャンプ)


セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちがあらゆる暴力などから守られ、安心・安全な環境で生活することができるよう南スーダンでの支援を継続していきます。

本事業は皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。


(海外事業部 奥村絵美)

1 OCHA,South Sudan: Humanitarian Needsand Response Plan 2024, November 2023, p.2
2 OCHA, South Sudan: Humanitarian Needsand Response Plan 2024, November 2023, p.2
3 OCHA,Humanitarian Action Analysisneeds and response: South Sudan, November 2023
4 OCHA,Humanitarian Action Analysisneeds and response: South Sudan, November 2023
5 CCCMCluster, South Sudan: CCCM Cluster IDPSite Masterlist - October 2023


 

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