トップページ > スタッフブログ > 日本/災害時における心理社会的支援 > シンポジウム「今、災害支援の現場で求められているもの 〜子どものこころのケア〜」を東京と神戸で開催

日本/災害時における心理社会的支援
(公開日:2018.12.17)

シンポジウム「今、災害支援の現場で求められているもの 〜子どものこころのケア〜」を東京と神戸で開催

 

セーブ・ザ・チルドレンは、2018年11月11日にJICA関西(神戸)にて、同17日にJICA地球ひろば(東京)にて、シンポジウム「今、災害支援の現場で求められているもの 〜子どものこころのケア〜」を開催しました。


このシンポジウムは、セーブ・ザ・チルドレンが取り組む緊急時の子どものこころのケア(*1)について多くの方に知っていただくとともに、子ども支援の視点から現場での課題を考えることを目的としていました。高校生から教育や福祉、災害支援などの現場で活躍する方まで幅広い層から関心が寄せられ、神戸では60名以上、東京では100名以上が参加しました。

はじめに、東京大学総合文化研究科特任准教授の井筒節氏より「世界の人道支援において精神保健・心理社会的支援が果たす役割」と題して基調講演が行われました。世界の50人に1人は人道危機の中にいると言われている中、国連においてもあまり強調されてこなかった精神保健・心理社会的支援(*2)が持続可能な開発目標(SDGs)において取り上げられるようになるまでの道のり、国際的なガイドライン策定への関わりなど、国際社会における精神保健・心理社会的支援の潮流について多岐に渡る報告がありました。


そのうえで、危機的な出来事の中で深刻なストレスにさらされた人々に対して、世界保健機関(WHO)などが2011年に開発した心理的応急処置(Psychological First Aid :PFA)マニュアルに基づき、「害を与えない」ことを原則に、基本的ニーズが満たされる支援、話したい人がいたら傾聴する、安心させ落ち着かせる、必要に応じて社会的支援につなぐことの必要性が話されました。一方で、「してはならないこと」として、「無理に話をさせない」「できない約束はしない」「知らないことを作り話しない」「その人の強さや自尊心を奪わない」といったことが挙げられました。さらに、当事者でなく協力者が意思表示をすることで「誰もが気軽に協力を頼むことができ、協力し合える」社会を目指した、「協力者カミングアウト」という新たな取り組みもご紹介されました。


                        東京大学総合文化研究科特任准教授 井筒節氏によるご講演

続いて、セーブ・ザ・チルドレンからは「国内災害における子ども支援の取り組み〜東日本大震災や西日本豪雨の活動から〜」と題して報告を行いました。これまで私たちが日本国内の災害支援現場で実施してきた「こどもひろば」などの経験から、「子ども」にフォーカスしたこころのケアが求められていること、さらに、行政や医療関係などの専門家との連携の重要性についても言及しました。とりわけ、2018年西日本豪雨の災害直後に岡山県が実施した「被災地域における子どもの安全・安心な居場所」事業にセーブ・ザ・チルドレンが協力した例を挙げながら、地域にある資源をつなぐことの大切さを強調しました。

                 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部 赤坂美幸による活動報告

後半は、日本の災害支援現場の最前線で活躍されているDPAT(災害派遣精神医療チーム)の関係者を交え、パネルディスカッションを行いました。パネリストからは、支援現場で直面するジレンマ、被災者の「害にならない」支援をすることや被災者が選択できるオプションを増やすことの重要性、さらに現場における子ども支援をめぐる課題が、活発に提議されました。


参加者からは、「連携の重要性に関する話を聞いて、日頃から地域でのネットワークを構築することの重要性について再認識しました」「相次ぐ災害の発生を受けて、子どものこころのケアに関する最新の動向について、学ぶことができました」などの感想があげられました。

          日本の災害支援現場の最前線で活躍されている専門家を招いたパネルディスカッション

セーブ・ザ・チルドレンが実施している「子どものためのPFA」(*3)研修に参加したい、災害時の子どものこころのケアについてより深く学びたいといったリクエストも多く、今後も引き続き、災害時の子どものこころのケアについて多くの方とともに考え、学ぶことのできる機会を作っていきます。

当シンポジウムのプログラムはこちら(神戸東京


*1 国連人道問題調整事務所のもと国連機関と国際NGOなどが形成するIASC(Inter-Agency Standing Committee:機関間常設委員会)によるガイドラインでは、緊急下の「こころのケア」を表現するために、精神保健と心理社会的支援を併記しています。セーブ・ザ・チルドレンのこころのケア活動は、この心理社会的支援にあたります。

*2 精神保健・心理社会的支援(Mental health and Psychosocial Support  : MHPSS)とは、心理社会的ウェルビーイングを守り、促進し、また精神疾患を予防・治療することを目的とするあらゆる種類のコミュニティ内、そして外部からの支援を表す用語 。 (災害・紛争等緊急時における精神保健・心理社会的支援に関するIASCガイドライン, 2007)

*3 「子どものための心理的応急処置(Psychological First Aid for Children  )」とは、世界保健機関(WHO)などが作成したPFAマニュアルをもとにセーブ・ザ・チルドレンが2013年に開発した、子どもの認知発達段階の特性にあわせて、災害時に普段と異なる様子を示す子どもたちに対して彼らのこころを傷つけずに対応するための支援の姿勢や行動です。

PFAは、『スフィア・プロジェクト〜人道憲章と人道対応に関する最低基準』や『災害・紛争等緊急時における精神保健・心理社会的支援に関する IASC ガイドライン』(機関間常設委員会(IASC)、2007)などのグローバルガイドラインにおいて、人道支援従事者が受けるべきトレーニングとして位置付けられています。日本でもここ数年、災害支援に携わる関係者の中で関心が高まっています。



 

あなたのご支援が子どもたちの未来を支えます

もっと見る

月々1500円から、自分に合った金額で子どもの支援ができます。
定期的に年次報告書や会報誌をお送りしています。

1回から無理なくご支援いただけます。

PAGE TOP