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ネパール
(公開日:2008.10.01)

教育の力を肌で感じて(2008.10)

 

【教育の力を肌で感じて】
?ネパールからの報告?


セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)ネパールの定松事務所長から
嬉しい報告が届きました


【最下位カーストの集落で驚きの変化が】

鮮やかなピンクの民族衣装を着た10歳くらいの少女SCJが今年1月から、JICA草の根技術協力事業の支援を得て教育事業を始めたドム*の集落を、およそ1年ぶりに訪ねたのですが、その時私は、まるで雷に打たれたような衝撃を受けました。というのも、村の入り口に着いた途端に、鮮やかなピンクの民族衣装を来た10歳くらいの少女(写真)がにっこり微笑みながら、「ナマステ(こんにちは)!」と挨拶の言葉をかけて来たのです。

※ドム:ネパール東部平野部のヒンドゥー教徒のカースト。彼らは竹細工のほかに豚の飼育を生業としていることから、上位カーストの人々に「穢れている」とみなされ、不可触カーストのなかでも最下位に位置付けられている。


ムの集落は、たいていはおとなも子どもも薄汚れた身なりをして、気だるい感じで地べたに座ったり寝転がったりしていることが多く、よそから来た者に挨拶をするなどということはまずありません。
そのような場面を予想していた私にとって、その少女は、私がドムの人たちに対して抱いていたイメージを根底から覆すものだったのです。
聞けば、彼女は間違いなくドムの子どもで、その集落から近くの小学校に通っているとのことでした。我に返って、周りを見渡すと、その子ほど鮮やかではないまでも、小学校の制服を来た子どもたちがほかにも何人もいるではありませんか。村人たちにたずねると、その集落で就学年齢に
達した子どもは、今は全員が学校に通っているとのことでした。

【教育は世代を超えて】
私たちが支援しているドムの人々は、社会的に様々な差別を受けていて、親たちの世代はほとんど学校教育を受けたことがなく、子どもたちも同様です。
昨年、ネパールの児童労働を取材に来た日本の新聞記者に同行して、あるドムの集落を訪ねました。例によって子どもは一人も学校に通っておらず、大人もほとんど学校教育を受けた経験が無かったのですが、一人だけ4年生くらいまで学校に通ったことがあるという10代と思しき少年がいました。

「せっかく4年生まで通ったのに、なぜ途中で通学を止めてしまったのか」と聞いたところ、学校である日先生が宿題を生徒たちに配っていた時に、他の生徒には手渡ししていたのに、彼のところに来ると直接彼に手渡す代わりに彼の隣に座っていた生徒に「おい、お前からこいつに渡しておけ」と言って、次の生徒のところに移っていったそうです。彼はこの教師の態度に深く傷つき、次の日から学校に通うのを止めてしまったとのことでした。

不可触カーストの親たちがなぜ子ども
を学校に通わせないのかを上位カーストの村人たちにたずねると、決まったように「親が教育を受けていないので、教育の大切さを理解していないからだ」という答が返ってきます。それは確かに一つの側面には違いないのですが、彼らがこれまでに様々な差別を受けてきたがゆえに「自分たちはどうせ教育には縁がない」と諦めざるを得なくなっていることには、なかなか思い至りません。
このような状況を踏まえて、SCJはネパールで教育支援に力を入れています。

SCJのネパールでの活動

今回の訪問で変わっていたのは子どもたちだけではありません。どうも、おとなたちも前より身なりがきれいになり、表情も引き締まって見えます。
「子どもたちが学校に通い始めたことで、皆さんたちにも何か変化があったのですか」とたずねると、「以前は他人の残飯を食べたり、何日間も洗濯をしない服を来ていても何とも思わなかったが、子どもたちが学校で身なりをきれいにすることや衛生的な食事をすることを学んでからそうしたことをいやがるようになったので、自然
と自分たちもそういうことをしなくなった」とのことでした。

「たった1年でこれだけ変わるのなら、この少女がおとなになり自分の子どもを育てる頃には、いったいどれだけの変化が起こることだろうか・・・」
そんな教育の力の大きさを感じ、これからもネパールの変化を見続けることを心に誓いながら、私はこの集落を後にしたのでした。





 

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