ネパール(公開日:2012.07.24)
教育環境の改善に向けて(2012.07.28)
みなさん、「万人のための教育」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?英語では、Education for Allと言います。これは1990年、国連や世界銀行が中心となって立てた世界の教育に関する国際目標のことで、その目標のひとつに、2015年までに世界じゅうのすべての子どもが初等教育(日本の小学校に相当)を受けることができるようにする、というものがあります。
ネパールもこの目標を達成するために政府や市民組織が一丸となって、すべての子どもが学校に行けるよう様々な努力をしています。当初は、すべての子どもが学校に行くためには、教室が足りない、教員が足りない、という問題への対応が中心で、日本政府をはじめ世界各国の政府や国際機関が資金を拠出し、教室建設を支援しましたが、今は教室建設を続けながらも、徐々に「教育の質」の問題に焦点が移りつつあります。「教育の質」とは、日本ではあまり耳慣れない言葉かもしれません。実は、国際教育に携わっている人の間でも「教育の質」について共通の定義があるわけではないようです。分かりやすい定義では、教員一人当たりの生徒数を使うケースもありますが、ここ数年、子どもがどれだけ学んだか、読み書きや算数のテストを使って子どもの「学習達成度」をみることの重要性が指摘されています。
今年から、セーブ・ザ・チルドレンは、日本政府のコミュニティ開発支援無償という支援枠組みを使って、ネパールの8つの郡において、教室建設と合わせて、教室内の環境整備、学校運営委員会の組織強化、教員研修といった様々な活動を組み合わせたプロジェクトを開始しました。現在、ネパール政府と協力して、各郡のなかで事業対象とする40〜50校の選定をしています。今年の6月から8月にかけて、各郡で現状を把握するための調査を展開しています。
今まで様々な国の支援を受けてきたものの、学習環境が劣悪な学校はたくさんあります。政府の支援が間に合わないため、村人が自分たちで教室を建てるケースも多く、その場合、村人が少しずつお金を出し合って、非常に簡素なものを作ります。床はなく地べたのままで、子どもが安心して、集中して学べる環境ではありません。
<生徒数が多く混みあっている教室、ナワルパラシ郡>
教室が出来上がったら、先生たちが子どもを励まし、可能性・自主性を少しでも引き出す教育ができるように、教育の質を視野に入れた活動も展開することとしています。
ネパールでは、以前は特に農村部の女の子は学校に行かない、というのが通例でした。しかし、国際目標と政府やNGOの努力によって徐々に女子の就学率も上がってきています。今後は、学習環境を整備し、セーブ・ザ・チルドレンのような市民組織が政府やコミュニティと協力して、より質の高い教育支援を持続的に行っていくことが、「万人のための教育」目標に合致し、子どもの教育を受ける権利を確実にしていくことだと考えています。
(報告:ネパール駐在員 塩畑真里子)