ネパール(公開日:2007.08.01)
大洪水支援活動中(2007.08)
【南アジア大洪水 セーブ・ザ・チルドレン支援活動展開中】
ネパール現地速報
?SCJの迅速な救援活動は現地でも高い評価?
ネパールでは、7月上旬より始まった大雨により洪水と土砂崩れが発生し、ネパール全域、特に西部・中部・東部の平野地帯で被害が急増しています。現地入りが困難であるため正確な状況把握ができていませんが、発生当初数名だった死者数も一気に96名まで登りつめました(8月9日現在)。
ネパール現地速報
?SCJの迅速な救援活動は現地でも高い評価?
ネパールでは、7月上旬より始まった大雨により洪水と土砂崩れが発生し、ネパール全域、特に西部・中部・東部の平野地帯で被害が急増しています。現地入りが困難であるため正確な状況把握ができていませんが、発生当初数名だった死者数も一気に96名まで登りつめました(8月9日現在)。
被災地域は全国の約半分に当たる36郡に及び、被災世帯数は56,000(336,000人)、全壊家屋数は8,135、と多くの被害が発生しています。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの活動地域も大きな被害に会い、現地パートナーNGOとともに洪水発生直後から救援活動を始めています。現地パートナー
NGO、アスマンを通じて、すでにダヌシャ郡、マホタリ郡の5,900世帯を対象とし、食糧およそ11,000kgと防水シート300枚を配布しました。
当地の援助機関の中でも最も素早く救援活動を開始することができ、8月1日の当地の英字新聞(Kathmandu Post)でも報道されました。
以下、ネパール事務所長の現場からの生の声をお届けします。
【ネパール洪水救援日記】
SCJネパール事務所代表 定松 栄一
7月26日(木)
朝起きて、自宅に届いた朝刊の一面トップ記事を見て驚いた。「洪水で4人が死亡。全国各地で被災」。雨季のこの時期、ネパールで洪水の記事が載ることは珍しくないが、一面トップというのは尋常ではない。
さらに読み進むと、「マホタリ郡では、泥や竹で作られた家屋が連日の雨の影響で崩壊し、数百名の人々が住居を失った。郡立病院も屋根が陥没し患者は一階に避難中」とある。この日、被災が報じられていた7郡のなかでも、SCJ支援地マホタリ郡の状況はとりわけ厳しそうだ。
「これは大変なことになるかもしれない」私は事務所への道を急いだ。
救援活動を始めることになったら、私たちがまずやらなければならないのは、初動資金の確保だ。現場のスタッフはスタンバイできているのに資金が無いので動けない、といった事態は絶対に避けなければならない。
東京本部に緊急事態の内容を説明したところ、すぐに「了解。本部の緊急救援基金を取り崩します」との回答があった。いち早く資金確保の目処が立ったので、ひとまずホッとする。
「初動資金は確保した。現場は至急情報を集めて、救援計画を出してほしい」と指示を出した。
7月27日(金)
SCJのパートナー団体のアスマンからの情報で、被災地に向かう道路が洪水で寸断され、スタッフがなかなか現場に辿り着けずにいるらしい。アスマンの現地事務所の近くも、道路が腰のあたりまで水につかって、スタッフの出入りもままならないとのこと。
それでも午後4時頃になって、アスマンからようやく最初の救援計画がファックスで届く。食糧・医薬品・テントなどの救援物資を被災者に配布するというものだ。すぐにOKを出す。どうにか、ぎりぎりで、週末の休みに入る前に、SCJの事業地では救援活動を開始させることができた。
7月30日(月)
週末の間も洪水に関する報道には注意していたが、被災規模は日を追うに従って、縮小するどころか拡大しているような印象を受ける。
地図上でチェックしてみると、被災した郡の数は24にまで増えている。ネパール全75郡のうち1/3が被災していることになる。しかもSCJの事業地がある東部だけでなく、中部や西部にも被害が出ている。死者数も74人にまで増えた。もはや「全国規模の大災害」と言わなければならない。
こうなると、私としてはセーブ・ザ・チルドレンだけでなく、ネパールで活動する国際NGO全体の視野から考える必要が出てくる。と言うのも、ネパールには国際
NGO約70団体が加盟するネパール国際NGO協会(Association of International NGOs in
Nepal、以下AIN)というネットワーク組織があり、私は2年前からその役員も務めているからだ。
アスマンからファックスで初動活動の報告が届く。SCJの事業地のあるマホタリ郡とダヌシャ郡の計8村・2市で、すでに1321世帯に食糧計3,500kgの配布を完了。
8月1日(水)
洪水の被害に関する記事が日を追って増えているのに、NGOの救援活動を報じた記事が全く見られないのが気になった。おそらく、どこのNGOも救援活動で手一杯で、マスコミ対策までは気が回っていないのだろう。
私は、以前アスマンとSCJの教育事業の現場を取材してくれた新聞記者のことを思い出し、メールを打った。「洪水に関する連日の報道、ありがとう。アスマンもSCJの支援を受けて、東部平野で救援活動を実施中・・・。」
8月2日(木)
朝刊を開いて、思わず歓声を上げる。扱いは大きくはないが、アスマンとSCJの救援活動を報じる記事がちゃんと載っている。これもアスマンがいち早く現場で救援に動き、SCJ本部もすぐに初動資金を手当てしてくれたおかげだ。
今回、アスマンがいち早く救援に動けたのは、彼らが日ごろの活動を通じて、車道が使えなくても歩いて被災地に辿り着く方法を知っていたり、ふだん一緒に活動している学校関係者や青年団らと連絡を取り合って、被災状況や現場のニーズを把握できたからだ。改めて、日ごろから地域に密着して活動することの大切さを痛感する。
8月3日(金)
ネパール政府(内務省)で、赤十字、国連、NGOを交えて開かれた洪水救援調整会議にAIN代表として出席。会議の冒頭、国連から、前日までに国連がまとめた災害救援情報が発表される。
このデータをもとに、ネパール政府は、これまでに把握した救援ニーズとすでに実施・約束された援助とを比較して、未だにカバーされていないニーズとして、向こう3ヶ月間で150万米ドルの支援を、国際社会に対して要請した。これによって今回のネパールの洪水は正式に「国際的な支援を必要とする災害」になった。
被災地の現場は未だに水が引かず、被害の詳しい様子がわかっていない地域も多い。今後、現場からの情報が入ってくるにつれて、救援のニーズはさらに拡大する可能性がある。
緊急救援だけではない。近く、ネパール平野部で夏休みに入っていた学校が再開することになっているが、現在、学校の多くは被災者の避難場所として使われていて、授業再開の目処が立っていない。教室内に浸水して被害を受けた学校も多い。
子どもの権利を守る団体として、SCJは今後、より子どものニーズに焦点を当てた復興援助へと活動内容を移していく必要があるだろう。
以上
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの活動地域も大きな被害に会い、現地パートナーNGOとともに洪水発生直後から救援活動を始めています。現地パートナー
NGO、アスマンを通じて、すでにダヌシャ郡、マホタリ郡の5,900世帯を対象とし、食糧およそ11,000kgと防水シート300枚を配布しました。
当地の援助機関の中でも最も素早く救援活動を開始することができ、8月1日の当地の英字新聞(Kathmandu Post)でも報道されました。
以下、ネパール事務所長の現場からの生の声をお届けします。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
【ネパール洪水救援日記】
SCJネパール事務所代表 定松 栄一
7月26日(木)
朝起きて、自宅に届いた朝刊の一面トップ記事を見て驚いた。「洪水で4人が死亡。全国各地で被災」。雨季のこの時期、ネパールで洪水の記事が載ることは珍しくないが、一面トップというのは尋常ではない。
さらに読み進むと、「マホタリ郡では、泥や竹で作られた家屋が連日の雨の影響で崩壊し、数百名の人々が住居を失った。郡立病院も屋根が陥没し患者は一階に避難中」とある。この日、被災が報じられていた7郡のなかでも、SCJ支援地マホタリ郡の状況はとりわけ厳しそうだ。
「これは大変なことになるかもしれない」私は事務所への道を急いだ。
救援活動を始めることになったら、私たちがまずやらなければならないのは、初動資金の確保だ。現場のスタッフはスタンバイできているのに資金が無いので動けない、といった事態は絶対に避けなければならない。
東京本部に緊急事態の内容を説明したところ、すぐに「了解。本部の緊急救援基金を取り崩します」との回答があった。いち早く資金確保の目処が立ったので、ひとまずホッとする。
「初動資金は確保した。現場は至急情報を集めて、救援計画を出してほしい」と指示を出した。
7月27日(金)
SCJのパートナー団体のアスマンからの情報で、被災地に向かう道路が洪水で寸断され、スタッフがなかなか現場に辿り着けずにいるらしい。アスマンの現地事務所の近くも、道路が腰のあたりまで水につかって、スタッフの出入りもままならないとのこと。
それでも午後4時頃になって、アスマンからようやく最初の救援計画がファックスで届く。食糧・医薬品・テントなどの救援物資を被災者に配布するというものだ。すぐにOKを出す。どうにか、ぎりぎりで、週末の休みに入る前に、SCJの事業地では救援活動を開始させることができた。
7月30日(月)
週末の間も洪水に関する報道には注意していたが、被災規模は日を追うに従って、縮小するどころか拡大しているような印象を受ける。
地図上でチェックしてみると、被災した郡の数は24にまで増えている。ネパール全75郡のうち1/3が被災していることになる。しかもSCJの事業地がある東部だけでなく、中部や西部にも被害が出ている。死者数も74人にまで増えた。もはや「全国規模の大災害」と言わなければならない。
こうなると、私としてはセーブ・ザ・チルドレンだけでなく、ネパールで活動する国際NGO全体の視野から考える必要が出てくる。と言うのも、ネパールには国際
NGO約70団体が加盟するネパール国際NGO協会(Association of International NGOs in
Nepal、以下AIN)というネットワーク組織があり、私は2年前からその役員も務めているからだ。
アスマンからファックスで初動活動の報告が届く。SCJの事業地のあるマホタリ郡とダヌシャ郡の計8村・2市で、すでに1321世帯に食糧計3,500kgの配布を完了。
8月1日(水)
洪水の被害に関する記事が日を追って増えているのに、NGOの救援活動を報じた記事が全く見られないのが気になった。おそらく、どこのNGOも救援活動で手一杯で、マスコミ対策までは気が回っていないのだろう。
私は、以前アスマンとSCJの教育事業の現場を取材してくれた新聞記者のことを思い出し、メールを打った。「洪水に関する連日の報道、ありがとう。アスマンもSCJの支援を受けて、東部平野で救援活動を実施中・・・。」
8月2日(木)
朝刊を開いて、思わず歓声を上げる。扱いは大きくはないが、アスマンとSCJの救援活動を報じる記事がちゃんと載っている。これもアスマンがいち早く現場で救援に動き、SCJ本部もすぐに初動資金を手当てしてくれたおかげだ。
今回、アスマンがいち早く救援に動けたのは、彼らが日ごろの活動を通じて、車道が使えなくても歩いて被災地に辿り着く方法を知っていたり、ふだん一緒に活動している学校関係者や青年団らと連絡を取り合って、被災状況や現場のニーズを把握できたからだ。改めて、日ごろから地域に密着して活動することの大切さを痛感する。
8月3日(金)
ネパール政府(内務省)で、赤十字、国連、NGOを交えて開かれた洪水救援調整会議にAIN代表として出席。会議の冒頭、国連から、前日までに国連がまとめた災害救援情報が発表される。
このデータをもとに、ネパール政府は、これまでに把握した救援ニーズとすでに実施・約束された援助とを比較して、未だにカバーされていないニーズとして、向こう3ヶ月間で150万米ドルの支援を、国際社会に対して要請した。これによって今回のネパールの洪水は正式に「国際的な支援を必要とする災害」になった。
被災地の現場は未だに水が引かず、被害の詳しい様子がわかっていない地域も多い。今後、現場からの情報が入ってくるにつれて、救援のニーズはさらに拡大する可能性がある。
緊急救援だけではない。近く、ネパール平野部で夏休みに入っていた学校が再開することになっているが、現在、学校の多くは被災者の避難場所として使われていて、授業再開の目処が立っていない。教室内に浸水して被害を受けた学校も多い。
子どもの権利を守る団体として、SCJは今後、より子どものニーズに焦点を当てた復興援助へと活動内容を移していく必要があるだろう。
以上
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