日本/地域NPO支援(公開日:2025.06.13)
子ども・地域おうえんファンド 助成先団体紹介(1)
日本に暮らす子どもたちは、日々の生活の中でどれだけ権利を保障されているでしょうか。
住む土地や環境などに左右されることなく、子どもたちの育ちやまなび、遊び、参加など当たり前の権利を保障するためには、子どものすぐそばにいる地域の大人の関わりが大切です。学校、保育園・幼稚園、自治体、企業などに加え、地域のNPOも子どもや保護者の細かな状況を知り、柔軟に支援をしている重要な存在です。
そこでセーブ・ザ・チルドレンは、日本国内で子ども支援活動を行う地域の非営利団体(NPO)を対象とした助成プログラム「子ども・地域おうえんファンド」(以下、おうえんファンド)を実施しています。
※おうえんファンドについて詳しくはこちら
おうえんファンドは、最長3年間の助成プログラムです。助成金に加え、人材獲得・資金調達といった組織や事業の継続・発展を支えるための組織基盤強化、および子どもの権利保障のための環境づくり支援を行っている点が特徴です。
住む土地や環境などに左右されることなく、子どもたちの育ちやまなび、遊び、参加など当たり前の権利を保障するためには、子どものすぐそばにいる地域の大人の関わりが大切です。学校、保育園・幼稚園、自治体、企業などに加え、地域のNPOも子どもや保護者の細かな状況を知り、柔軟に支援をしている重要な存在です。
そこでセーブ・ザ・チルドレンは、日本国内で子ども支援活動を行う地域の非営利団体(NPO)を対象とした助成プログラム「子ども・地域おうえんファンド」(以下、おうえんファンド)を実施しています。
※おうえんファンドについて詳しくはこちら
おうえんファンドは、最長3年間の助成プログラムです。助成金に加え、人材獲得・資金調達といった組織や事業の継続・発展を支えるための組織基盤強化、および子どもの権利保障のための環境づくり支援を行っている点が特徴です。
2022年より毎年1回の助成先公募を続けており、現在11団体が助成先となっています。
第1回助成先団体は、2025年9月末日をもって助成期間が終了します。今回はこのうち2団体について、2023年1月から現在までの事業の様子を紹介します。
■ 特定非営利活動法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(事業実施地域:東京都豊島区)
※団体について詳しくはこちら
事業名:地域がつながる としま学校カフェ

豊島子どもWAKUWAKUネットワークは、地域の子どもを地域で見守り育てるために設立されました。
該当地域において、福祉行政と地域の連携は進んできたものの、学校との連携は十分ではないという認識のもと、本事業を通じて学校カフェ運営に取り組んできました。
2023年5月より、豊島区立西池袋中学校において、不登校の生徒が利用でき、通学している生徒も放課後に立ち寄れる学校内のカフェ「にしまるーむ」を開いています。
開設以来、居場所で飲み物の提供を行いリラックスできる雰囲気をつくるなど、これまでの「学校」にとらわれない発想でさまざまな取り組みを行ってきました。その結果、2025年4月時点で月にのべ1,840人程度の生徒が利用するようになりました。
居場所の活動を続けてきたことで、生徒からは「小学生の頃から不登校で(中略)教室に行くのは緊張して辛かった。でもにしまるーむができたから2年生になっても学校に来れている。大人と普通の話ができる時間って特別」といった声が聴かれるようになりました。
同時に、地域や学校の大人に対しても、学校内に先生や保護者以外の大人がいる意味と価値を伝え続けています。2024年9月16日に西池袋中学校で開いた「中学校内の居場所サミット」には地域の保護者、学校関係者、行政職員など約200人の参加がありました。
教育と福祉、地域と学校、教員と生徒など、立場によって物事の見方は異なりますが、その違いをマイナスと捉えず、常に子どもの最善の利益のために前向きに働きかけていく姿勢が団体の魅力です。
また、このように地域全体を動かす事業を進める一方で、自団体内の基盤整備にも取り組んでいます。
おうえんファンドの組織基盤強化支援を活用し、団体では事務局業務の棚卸と整理、ボランティアに関するデータの整理などを進めてきました。地域の子どもも大人も孤立することなく、安心して集えるネットワークの起点として、持続可能な団体運営も目指しています。
■特定非営利活動法人 ReBit(事業実施地域:全国)
※団体について詳しくはこちら
事業名:LGBTQの子どもにとっても、生きる・育つ・守られる・参加する「子どもの権利」を実現する

ReBitは、LGBTQ(注1)を含めたすべての子どもが、ありのままで大人になれる社会の実現を目指して活動する団体です。
教員や子ども・若者支援者、行政担当者などが性の多様性を学ぶ機会が少ないために、教育や施策の進め方に迷う場面が多いことを受け、団体では本事業を通じて授業サポートや啓発研修、行政連携などを行ってきました。
事業の柱の1つは、「学校現場での授業実施や教職員へのクラス運営サポート」です。
この柱では、学校で、子どもたちや教職員に向けて授業や研修を行ってきました。子どもたちへの授業では、「みんなが多様な中の一員であること」を伝え、「多様な性」を切り口にして多様性について考える時間を大切にしています。
また、教職員研修あたっては、SOGIEインクルーシブ(注2)な学校環境づくりを目指し、行動する「アライ先生」(注3)の育成に注力してきました。
子どもたちのなかにLGBTQがいることを前提に、教職員や周囲の大人が安全な環境をつくるとともに適切な相談対応ができる状態を目指し、研修の内容をブラッシュアップし、講師が各自の経験と共に伝えられるよう、工夫してきました。
研修を受けた教職員からは、「当事者の方のお話を初めて聞きました。切実な課題であることを改めて知りました」「ワークを通して、教員の工夫次第で変えられることがたくさんあることがわかりました」などの感想が寄せられました。
子どもたちからは「初めて真面目にLGBTQのことを考えた」「今回の授業で得た知識は絶対に忘れたくない」「性の多様性についてもっと知り、自分ができることを考えていきたいと思った」などといった声も増え、学校現場での理解が進んでいると実感できるようになったことも大きな成果です。
さらに団体は、地域にLGBTQのセーフスペースを増やすことや、行政連携や調査にも積極的に取り組んできました。
例えば、「自治体LGBTQ/SOGIEできることハンドブック」の公開にあわせ、自治体との意見交換や取り組みの伴走も行っています。
このように意欲的に事業展開を続ける中で、団体の組織規模も大きく成長しています。
新たなメンバーの採用も大幅に増え、組織体制の整備、スタッフ間の連携強化、人事制度の整備などが重要になってきました。こうした組織強化に取り組むことも、団体が長く活動し続けていくためには不可欠です。
団体では外部支援者のサポートを受けながらバリュー(団体で大切にする価値観)の言語化や人事制度づくりなどを進めており、おうえんファンドではこれらの取り組みにかかる費用も助成対象としています。
今後は、政策に関わるアドボカシーや、同じ目標を持つ他団体の支援にも注力していきたいとのことです。行動し続けるアライの大人があふれる社会を目指して、力強く前進しています。
(注1)LGBTQ:Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、Questioning(クエスチョニング)の頭文字をとって性的少数者の総称として使われる言葉
(注2)SOGIEインクルーシブ:だれもがもつ「性的指向(Sexual Orientation)」「性自認(Gender Identity)」「性表現(Gender Expression)」が尊重されている環境を表す
(注3)アライ:LGBTQのことを理解し、支援のために行動する人
(国内事業部 菅野諒子)
第1回助成先団体は、2025年9月末日をもって助成期間が終了します。今回はこのうち2団体について、2023年1月から現在までの事業の様子を紹介します。
■ 特定非営利活動法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(事業実施地域:東京都豊島区)
※団体について詳しくはこちら
事業名:地域がつながる としま学校カフェ

豊島子どもWAKUWAKUネットワークは、地域の子どもを地域で見守り育てるために設立されました。
該当地域において、福祉行政と地域の連携は進んできたものの、学校との連携は十分ではないという認識のもと、本事業を通じて学校カフェ運営に取り組んできました。
2023年5月より、豊島区立西池袋中学校において、不登校の生徒が利用でき、通学している生徒も放課後に立ち寄れる学校内のカフェ「にしまるーむ」を開いています。
開設以来、居場所で飲み物の提供を行いリラックスできる雰囲気をつくるなど、これまでの「学校」にとらわれない発想でさまざまな取り組みを行ってきました。その結果、2025年4月時点で月にのべ1,840人程度の生徒が利用するようになりました。
居場所の活動を続けてきたことで、生徒からは「小学生の頃から不登校で(中略)教室に行くのは緊張して辛かった。でもにしまるーむができたから2年生になっても学校に来れている。大人と普通の話ができる時間って特別」といった声が聴かれるようになりました。
同時に、地域や学校の大人に対しても、学校内に先生や保護者以外の大人がいる意味と価値を伝え続けています。2024年9月16日に西池袋中学校で開いた「中学校内の居場所サミット」には地域の保護者、学校関係者、行政職員など約200人の参加がありました。
このサミットでは、にしまるーむだけでなく他地域での校内居場所の例も紹介し、不登校生徒の教室復帰のみを目的としない居場所のさまざまなあり方や意義を伝えました。

さらに、地域住民が子どもの権利について考え話し合う機会を設けたり、にしまるーむを見学し、学校との交流や居場所の意義について意見交換をしたりと、地域の人を巻き込む多様な活動を実現し、活動の輪を広げてきたことも大きな成果です。

中学校内の居場所サミット
さらに、地域住民が子どもの権利について考え話し合う機会を設けたり、にしまるーむを見学し、学校との交流や居場所の意義について意見交換をしたりと、地域の人を巻き込む多様な活動を実現し、活動の輪を広げてきたことも大きな成果です。
教育と福祉、地域と学校、教員と生徒など、立場によって物事の見方は異なりますが、その違いをマイナスと捉えず、常に子どもの最善の利益のために前向きに働きかけていく姿勢が団体の魅力です。
また、このように地域全体を動かす事業を進める一方で、自団体内の基盤整備にも取り組んでいます。
おうえんファンドの組織基盤強化支援を活用し、団体では事務局業務の棚卸と整理、ボランティアに関するデータの整理などを進めてきました。地域の子どもも大人も孤立することなく、安心して集えるネットワークの起点として、持続可能な団体運営も目指しています。
■特定非営利活動法人 ReBit(事業実施地域:全国)
※団体について詳しくはこちら
事業名:LGBTQの子どもにとっても、生きる・育つ・守られる・参加する「子どもの権利」を実現する

ReBitは、LGBTQ(注1)を含めたすべての子どもが、ありのままで大人になれる社会の実現を目指して活動する団体です。
教員や子ども・若者支援者、行政担当者などが性の多様性を学ぶ機会が少ないために、教育や施策の進め方に迷う場面が多いことを受け、団体では本事業を通じて授業サポートや啓発研修、行政連携などを行ってきました。
事業の柱の1つは、「学校現場での授業実施や教職員へのクラス運営サポート」です。
この柱では、学校で、子どもたちや教職員に向けて授業や研修を行ってきました。子どもたちへの授業では、「みんなが多様な中の一員であること」を伝え、「多様な性」を切り口にして多様性について考える時間を大切にしています。
また、教職員研修あたっては、SOGIEインクルーシブ(注2)な学校環境づくりを目指し、行動する「アライ先生」(注3)の育成に注力してきました。
子どもたちのなかにLGBTQがいることを前提に、教職員や周囲の大人が安全な環境をつくるとともに適切な相談対応ができる状態を目指し、研修の内容をブラッシュアップし、講師が各自の経験と共に伝えられるよう、工夫してきました。
研修を受けた教職員からは、「当事者の方のお話を初めて聞きました。切実な課題であることを改めて知りました」「ワークを通して、教員の工夫次第で変えられることがたくさんあることがわかりました」などの感想が寄せられました。
子どもたちからは「初めて真面目にLGBTQのことを考えた」「今回の授業で得た知識は絶対に忘れたくない」「性の多様性についてもっと知り、自分ができることを考えていきたいと思った」などといった声も増え、学校現場での理解が進んでいると実感できるようになったことも大きな成果です。
さらに団体は、地域にLGBTQのセーフスペースを増やすことや、行政連携や調査にも積極的に取り組んできました。
例えば、「自治体LGBTQ/SOGIEできることハンドブック」の公開にあわせ、自治体との意見交換や取り組みの伴走も行っています。
このように意欲的に事業展開を続ける中で、団体の組織規模も大きく成長しています。
新たなメンバーの採用も大幅に増え、組織体制の整備、スタッフ間の連携強化、人事制度の整備などが重要になってきました。こうした組織強化に取り組むことも、団体が長く活動し続けていくためには不可欠です。
団体では外部支援者のサポートを受けながらバリュー(団体で大切にする価値観)の言語化や人事制度づくりなどを進めており、おうえんファンドではこれらの取り組みにかかる費用も助成対象としています。
今後は、政策に関わるアドボカシーや、同じ目標を持つ他団体の支援にも注力していきたいとのことです。行動し続けるアライの大人があふれる社会を目指して、力強く前進しています。
(注1)LGBTQ:Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、Questioning(クエスチョニング)の頭文字をとって性的少数者の総称として使われる言葉
(注2)SOGIEインクルーシブ:だれもがもつ「性的指向(Sexual Orientation)」「性自認(Gender Identity)」「性表現(Gender Expression)」が尊重されている環境を表す
(注3)アライ:LGBTQのことを理解し、支援のために行動する人
(国内事業部 菅野諒子)