ケニア(公開日:2013.10.13)
【ケニア/干ばつ】生まれて初めての野菜作り、そして収穫 〜 学校菜園(2013.10.13)
ケニア北東州に住む人々は、大部分が牧畜民で、家庭ではみな、ラクダや牛、ロバ、羊など、なにかしらの動物を飼って、家畜から得られる収入や乳にて生活をしています。
家庭では、これら家畜からの乳と肉が主食で、野菜を食べる習慣があまりありません。また、偏った食生活のせいか、この地域の子どもたちは、ケニアの子どもたちの平均身長より身長が低い傾向があります。
また、保存食を食べる習慣があまりなく、新鮮な肉と家畜の乳に依存する食生活は、災害の時にとりわけ問題を引き起こします。なぜならば、干ばつにより家畜が死んでしまうと、お乳も肉も事欠き、野菜や他の食べ物を食べる習慣がないため、子どもたちが栄養失調に陥ったり、死んでしまったりする原因となるのです。
牧畜民が大半を占めるこの地域では、子どもたちは農家を見たことも、野菜作りをする家庭も見たことがありません。日本ですと、学校で菜園活動を始めたり、夏休みの宿題で植物観察などがありますが、農業・植物に関する授業はこの地域の学校にはないのです。
また、大変乾燥した地域で木があまり生えていません。年2回の雨季の時しか雨が降らないため、野菜作りに欠かせない水も不足しています。こうした理由から、子どもたちは野菜作りの経験がないのです。
セーブ・ザ・チルドレンは、学校菜園での野菜作り活動を通じて、子どもたちに野菜作りの知識と経験を広げると同時に、肉とお乳以外のものを食べる機会を設けることで、干ばつが起きた時に栄養失調になりづらい食習慣を紹介することを目指しています。
実は野菜作りの経験がないのは、大人や学校の先生も同じです。セーブ・ザ・チルドレンは、まず、ケニアの農業省と協力して、先生たちへの農業研修から始めました。
初めて野菜作りに挑戦する先生たち。学校菜園の経験に自信がついて、自分の家でも家庭菜園を始めた先生がたくさんいます。
子どもたちも初めての経験です。農業省の職員の言うことを良く聞き、苗を植えるためのうねを掘っています。
ぐんぐんと育っています。良く育った植物は、トマト、ほうれん草、メイズ、すいか、豆類、また「スクマ」と「ケール」と言われるケニアの葉野菜です。
そして収穫! 自分たちが育てた野菜を収穫し、地域の人を招いて、学校でランチパーティを開きました。
子どもに野菜作りができるなんて思ってもいなかった地域の大人はびっくりです。
トマトがたくさん収穫できた学校では、地元の市場にトマトを販売し、ささやかですが利益を上げることができました。販売したお金で、野菜の種を買いました。
学校菜園で自信をつけた子どもたちは、今度は自分の家で菜園を作ってみました。
身近にある素材を利用して、やぎや羊から野菜を守るために柵を作ります。
多くの子どもが家でも見事に収穫をすることができました。この乾燥した地域でも野菜作りが可能なことを証明したのです。
子どもたちのこの成功を目のあたりにして、驚いたのは大人たちです。以前には、この乾燥した地域で野菜作りができるなんて思ってもみなかったのですから。
子どもたちの収穫に勇気づけられ、菜園作りに挑戦する人が増えてきました。この周辺では、小規模ですが、家庭菜園がいくつも見かけられるようになりました。
子どもたちは、「野菜作りは初めてなので難しかったし、水の確保が大変な時もあった。でも、キチンと面倒をみていたから、無事収穫することができた。また家でやってみたい」「自分たちで野菜を作って、それを保存しておいて、干ばつが来て家畜が死んでしまっても、野菜を食べることで飢えを防ぐことができると分かった」と語っています。
土地が学校菜園に不向きだった学校は、校内に植林をしました。緑がたくさん集まると、木々が水分を蓄え、干ばつが起きづらくなる効果があります。子どもたちは、木の伐採が干ばつを招いていることから、植物を大切にすることが干ばつ抑制のためになることを学びました。学校の木々は、まだ小さいですが、きちんと世話をすることで、将来大きな木になり、学校周辺の乾燥を防ぐようになればいいなと子どもたちは話しています。
本事業はジャパン・プラットフォームの助成と皆様からのご支援により実施されました。
(報告:田邑恵子)