ベトナム(公開日:2024.05.20)
ベトナム・ソンラ省:山岳地域で生活する少数民族の貧困問題の解決と母子の栄養改善に向けて
2024年5月13日に、在ベトナム日本国大使館で日本NGO連携無償資金協力「ソンラ省における少数民族の生計向上のための農業及び栄養改善事業(第2年次)」の贈与契約署名式が開催されました。2024年6月1日から始まる第2年次の活動に向けて、2023年から実施している活動をご紹介します。
在ベトナム日本国大使館での署名式
(写真右は渡邊滋臨時代理大使、左はベトナム駐在員の梛野)
(写真右は渡邊滋臨時代理大使、左はベトナム駐在員の梛野)
この活動は、ベトナム北部の山岳地域ソンラ省バックイェン県とびソプコプ県の深刻な貧困状況にある少数民族のコミュニティ(6コミューン)を対象としています。
家族が栄養のある食事をとれることと地域における農産物の円滑な流通を目的に、各世帯に対して農業生産の向上支援を行うことで生計を改善に取り組んでいます。
また、地域の農業および保健関係者との連携を通じて、妊婦と子どもの栄養改善を支援し、子どもの身体の健全な成長を図ることで、少数民族コミュニティでの継続的な社会経済の発展を目指します。
事業の各活動の詳細はこちら→
https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=4139
1年次の活動では、知識と栽培方法が分からないために、少ない種類の野菜しか栽培できなかったこの地域の農業生産課題に対応するため、生産者グループの設立と同グループへの多様な野菜栽培技術や家畜の飼育に関する指導を行いました。
これにより、各世帯での野菜栽培と養鶏の促進および収入向上を目指したモデル農園設置に向けた協議を村の住民やコミューンの農業普及員と行ってきました。
また、少数民族の伝統的な社会慣習の課題解決を目指し、ジェンダー平等の研修を通して家庭内での家事や育児、農作業の実施状況を把握し、父親と母親がお互いに協力しあえる環境を整えられるよう促してきました。
離乳食調理指導の様子(壁のポスターは事業で作成した教材)
ジェンダー研修で現在の家庭内での仕事を書き出す
活動地では5歳未満の子どもの60%近くが慢性的な栄養不良に直面している状況を受け、UNICEFや世界保健機関(WHO)が提唱する「人生最初の1000日」(母親の妊娠から子どもが2歳になるまでの子どもの成長と発育に最も影響する重要な期間)に基づき、妊婦の産前健診受診の必要性、生後6ヶ月までの完全母乳育児、6ヶ月以降の補完食(離乳食)の調理・摂取に関する指導を、保健医療施設関係者や現地の女性委員会メンバー、子どもを持つ家庭に対して行ってきました。
事業開始前には、子どもへの離乳食としておかゆを薄めたものだけが与えられていましたが、研修を受けた母親たちからは、野菜や卵、肉類を入れることで栄養バランスの良い離乳食を作るようになったという声があがっています。
バックイェン県とソプコプ県は、地域(コミューン)によっては50%が貧困状態にあり、地理的にも他の山岳地域に比べて地方都市から遠隔地に位置しているため、村へのアクセスが困難で、活動が思うように進まないこともありました。
村レベルで日々活動するコミューンや村の保健や農業関係者などとの電話やSNSを使った密なコミュニケーションによる支援を省や県政府とともに行うことにより遠隔地での活動の解決を目指します。
また、農業に関する活動では、グッドプラクティス(好事例)を持つ農家を活用し、周辺農家への成果の波及を行います。
今後も現地で農業生産の向上、ジェンダー平等の啓発、母子の栄養改善を行い、地域の生計を向上させていく予定です。
離乳食の調理指導後に子どもに研修で作った食事を与える
2024年5月8日から10日にかけて実施された視察では、在ベトナム日本国大使館の佐々木祥平書記官が事業地のバックイェン県を訪問し、第1年次で実施してきた、ジェンダー平等の研修や、離乳食の調理指導の活動を視察しました。
子どもの母親からの聞き取りでは、「本事業の支援のおかげで、低栄養だった子どもの体重が少しずつ増えてきた。子どもには健康に育って欲しい」との声がありました。
少数民族の家庭からのヒアリング
離乳食調理指導の視察
また、大使館の職員が訪れるということで、県の人民委員会の幹部や県保健局の局長も同行しました。この機会を通じて、現地行政の今後の活動への協力を一層促進していきたいと考えています。
現地政府関係者との協議
訪問はソンラ省感染症予防センター(CDC)のウェブサイトでも取り上げられました。
https://cdcsonla.gov.vn/Y-TE-SON-LA/tham-quan-thuc-dia-cac-xa-thu-huong-du-an-cai-thien-sinh-ke-cua-cac-dan-toc-thieu-so-o-tinh-son--384191
また、活動地のソンラ省のテレビや新聞でも本事業を取り上げてもらいました。
ソンラ新聞(オンライン記事)
https://baosonla.org.vn/xa-hoi/cai-thien-dinh-duong-cho-ba-me-tre-em-vung-dan-toc-thieu-so-BHU9j5USR.html
本事業は外務省からの助成(日本NGO連携無償資金協力)に加えて、民間企業2社(株式会社魚国総本社、有限会社三平商会)と皆様からのご寄付を受け、活動を実施しています。
(海外事業部ベトナム駐在員 梛野耕介)