EVERY ONE(公開日:2010.11.01)
【PICK UP!】命を救え!助産婦の増員に取り組むナイジェリア(2010.11.1)
人口が多く、出産率も高いナイジェリア。世界有数の石油産出国であるにもかかわらず、政府が一人当たりにかける保健医療支出はアフリカで最も低く、貧困の蔓延と不十分な保健システムが大きな課題となっている国でもあります。出産の6割以上が専門家の介添えなしに家庭で行われており、妊娠・出産に伴うトラブルによって毎年3万6千人以上の女性や少女が命を落としています。妊産婦死亡率は、実に18人に1人という高い割合で、かつ、28万3千人もの新生児が生後1ケ月の間に悲しい死を遂げています。
ナイジェリアで暮らすガルバ(仮名)と3人の子どもたち。
ガルバは、妻と双子の赤ちゃんを出産時に亡くした。
(c)Pep Bonet/Noor
セーブ・ザ・チルドレンのスタッフは、支援の中でスハイブという一人の父親に出会いました。(上記写真とは異なる人物です。)スハイブは村の宗教的指導者であり、また、コーラン(イスラム教の聖典)を通して子どもたちにアラビア語での読み書きを教えるコーラン学校の教員でもあります。スハイブは、妻と赤ちゃんを出産時に同時に亡くした経験をもちます。
「妻の出産を楽にするため、慣習に従い、私はコーランの一部を書きとり、書いたものを洗い流し、その水を彼女に飲ませました。妻はすぐに出産しました。でも赤ちゃんは亡くなりました。出産後まもなくして妻は出血しはじめました。その間、私は赤ちゃんを洗って、墓地に埋めていました。墓地から戻る途中で、人から急いで自宅に帰るように言われました。家に駆けつけると妻は大量に出血していました。病院に運んで医者に診てもらったところ、出血過多で血管が虚脱状態になっていると言われました。輸血をしようとしている最中に、妻は亡くなりました。35歳でした。
亡くなったその日、妻はとても元気で私たちのために料理をしてくれました。まさかその日に彼女が亡くなるなんて...。妻は妊娠中よくマラリアにかかりましたが、少しすると良くなりました。近くの薬剤師から私が薬を買ってあげることもありました。妻は病院に定期検診にはいかず、妊娠中も治療を受けませんでした。今までもそういうことはしたことが無かったのです。前回の出産は、妻のおばに手伝ってもらいました。
私は妻と赤ちゃんを同じ日に亡くしました。これは10週間前に起きたことですが、私はいまだに深く傷ついています。妻は私に3人の子どもたちを残してくれました。上の子は12歳、一番下の子は2歳です。二人の息子は私が面倒をみています。娘は妻の妹と一緒に暮らしており、私はなるべく毎日娘の様子を見に行くようにしています。そうして今はなんとか生活しているのです。」
ナイジェリア政府は、セーブ・ザ・チルドレンなどの国際組織との連携や米・英政府からの支援のもと、この厳しい現実に立ち向かっています。保健従事者(ヘルスワーカー)を早急に雇用・育成し、よりよい保健サービスの提供や保健施設の建設を行うため、政府は「包括的母子保健戦略(Integrated Maternal, Child and Newborn Health Strategy)」を策定しました。この戦略には、訓練を受けた助産婦のもとでの出産を増やすことがコンポーネントの一つとして含まれています。最近までナイジェリアには、24時間体制でサービスを提供する公の保健施設はほとんどなく、十分な能力を備えた助産婦を確保している施設も多くはありませんでした。そこで、現在助産婦として働いている女性、そして、すでに退職した助産婦にも呼びかけを行い、緊急出産や新生児ケアに関するトレーニングを提供しました。
2010年1月現在、ナイジェリアでは、2,800人以上の助産婦が地方の村に派遣されています。その規模はさらに拡大される予定で、次にまず5千人に、そして2012年までには1万人に増員することが目指されています。適切な数の助産婦を配置するため、3〜4年間は地元コミュニティに戻り働くことを前提に、若い女性や女子に対して助産婦訓練のための資金援助が行われる予定です。
※セーブ・ザ・チルドレンでは、ナイジェリアの12の州において、基礎保健システム支援や暴力や搾取からの子どもの保護事業に取り組んでいます。
【ナイジェリアの子どもたち 基礎情報(2008年現在)】
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5歳未満の子どもの死亡率: 1,000人に186人が死亡。
※参考:日本では1,000人に4人。
毎年100万人以上の子どもたちが5歳の誕生日を迎える前に命を落としている。 - 5歳未満の子どもの27%が標準体重に満たない。
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18人に1人の女性が出産に伴い死亡している。
※参考:日本では11,600人に1人。
【知っていますか?ナイジェリアってこんな国】
- 国名:ナイジェリア連邦共和国
- 首都:アブジャ
- 人口:約1億5,470万人、面積 923,777km2(日本の約2.5倍)
- 公用語:英語
- 主要産業:原油、天然ガス、農業など
(出典:セーブ・ザ・チルドレン発行「State of the World’s Mothers 2010」、セーブ・ザ・チルドレンUKホームページ、外務省ホームページ)