EVERY ONE(公開日:2010.07.15)
【PICK UP!】ついに医療費無償に。減らせ!5歳未満の死亡率(2010.07.15)
「ありがとう!本当にありがとう!」シエラレオネの首都フリータウンの病院で妊婦が叫びました。2010年4月27日は、シエラレオネにとって忘れられない日となりました。この日、妊産婦および5歳未満の子どもに対する医療が無償になったのです。
フリータウンにある診療所で診察の順番を待つ妊婦(撮影:Aubrey Wade)
シエラレオネは子どもの死亡率や妊産婦の死亡率がもっとも高い国の一つです。出産における健康指標は最悪で、貧富を問わずすべての人たちが医療補助を必要としています。特に人口の多くを占める貧困層は医療費を払えない状況です。
シエラレオネでは8人に1人の女性が出産時に命を落とします。出産にかかる費用は通常10ドル、帝王切開は100ドルといわれ、医療費さえあれば命を落とさずに済みます。しかし、人口の70%の1日1ドルで生活をしている人々にとっては膨大な費用なのです。
下痢で赤ちゃんを失った母親は語ります「医者に15ポンド必要だと言われたけど、私はたった4ポンドしかもっていませんでした。医者は赤ちゃんを診ることなく車に乗って去って行きました。どうして私の赤ちゃんは死んでしまったの?私が貧乏だから?」。下痢は簡単に治療が可能な病気ですが、この国では、5歳未満の死亡の最大要因の一つなのです。
こうした胸を張り裂かれるような証言が、シエラレオネだけではなくアフリカ中に医療費無償化への動きをかきたてました。そして、市民社会組織とセーブ・ザ・チルドレン(以下、SC)のような国際開発団体も変革に向けてたゆみない働きかけをしてきました。
シエラレオネ政府は施策の実施を徹底し、多くの省庁が、SCを含む保健に関わる団体の協力のもと、医療費無償化に向けて様々な努力を続けてきました。国中に追加で供給・配分されるべき適切な薬品の量と、医療従事者が果たさなくてはならない仕事量に見合った昇給について計画を立てました。変革を支えるための追加資金、成功と失敗を検証するためのモニタリング評価の施策、そして、すべての人たちがこの施策を理解し無償で医療を受けられる権利を実現できるよう、コミュニケーション戦略の分野に関し計画を立てました。
出産を控えている女性を診るヘルスワーカー
(撮影 Aubrey Wade)
「SCの貢献に感謝します。自らの名声のためではなく、シエラレオネの真のパートナーとして、私たちが子どもたちのために役立てられるものを与えてくれたことに喝采を贈りたい」。SCは、シエラレオネにおける今回の医療費無償化に大いに貢献したことに対し、首相より感謝を受けました。
医療費無償化は、初期投資費1,900万ドルで、100万人以上の母親と子どもを救うと期待されています。4月27日の施行以来、5歳未満の外来診察者数が179%増加しています(DFID, the Department for International Development発表)。
今後は、リソース不足や設備の問題、無償化に伴う医療従事者の労働負担増の声など、どのようにこの新しいサービスを継続できるかが課題となります。
医療費無償化は、母子の死亡率改善を目指す「ミレニアム開発目標4・5」の達成につながる道のりでもあります。SCUKは、アフリカ中に医療費を無償化する運動を進めています。もし、アフリカで20の国が医療費無償化に乗り出せば、233,000人の子どもたちの命が救われると見込まれており、これにより、さらに多くの子どもたちが5歳の誕生日を迎えられるようになることが期待されます。
【シエラレオネの子どもたち 基礎情報】
体重チェックを受ける15か月の赤ちゃん
(撮影 Aubrey Wade)
- 1000人のうち140人の赤ちゃんが出産時に死亡
- 4人に1人の子どもが5歳の誕生日を迎えられない
- 8人に1人が妊娠か出産時に死亡
- 5歳未満の子どものうち3人に1人が標準体重に達していない
【知っていますか?シエラレオネってこんな国】
- 大西洋に面した英語圏の国
(首都フリータウン) - 人口:約600万人
面積:71,740km2 - 1人あたりの国民総所得(GNI)320ドル
*参考:日本は38,980ドル - 1930年にダイヤモンドが発見されて以来、ダイヤモンド採掘を基盤とした輸出国
- 首都フリータウンがあるフリータウン半島部以外はマングローブの林に覆われている
次回は「5歳未満の死亡率が最も高い国」を取り上げます。