日本/東日本大震災/防災(災害リスク軽減)(公開日:2015.06.19)
「楽しく、主体的に学ぶ防災」のための第2回東松島市教員研修会
東松島市の小・中・高校では、昨年からセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとNPO法人プラス・アーツが共同開発した防災教育教材「東日本大震災の教訓を漫画で学ぼう! とっさのひとこと」「なまずの学校(改訂版)」「みんなで遊んでたすカルテット」 を導入しています。昨年に続いて(昨年の様子はこちら)、 今年もセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、教育委員会による防災教育の教員研修に協力。2015年5月26日、防災主幹・防災主任の先生を中心に初めて参加した先生や2回目の先生、計25名が参加しました。子どもたちが楽しく、主体的に防災について学ぶために、各学校で上記の教材を用いて行っている授業内容を共有しました。
■包括的な学校の安全
まずは、セーブ・ザ・チルドレンが、ユネスコやユニセフなどとともに、世界各地で推進している「包括的な学校の安全」を紹介しました。子どもたちにとって学校が安全な場所であるために、次の3本柱で構成された枠組みです。
?安全な学習施設(安全な場所、建物、維持管理など)
?学校の防災管理体制(防災マニュアル、学校継続計画など)
?防災教育(カリキュラム、教員研修、防災訓練など)
災害でショックを受けた子どもにとって日常を取り戻すことは重要で、その中心となるのが学校です。しかし、学校は避難所として使用されるため、東日本大震災では授業を再開するのに時間がかかりました。学校が長期間閉鎖しないために、地域の人たちと話し合い、各学校の学校防災マニュアルに対策を盛り込んでもらえるようにお願いしました。
※「包括的な学校の安全」の詳細(英文)はこちら。
■「とっさのひとこと」鳴瀬未来中学校 木村先生
次は、鳴瀬未来中学校の木村先生による「とっさのひとこと」の実践報告。同校では2年生に、「状況4 連絡方法を決めておく」を実施しました。3コマ漫画の全コマを一度に見せるのではなく、 プロジェクターに1コマ、1コマ映して状況を説明したという工夫が紹介されました。生徒には、状況シートをコピーして配布し、3コマ目の空白のセリフを書いてもらったところ、生徒からは「電話にでないね…」「お父さんなら大丈夫よ!」などの、セリフが発表されたそうです。
そして、「お父さんと連絡をとるために、どんな方法が考えられますか」と問いかけ、生徒はグループで話し合いました。教訓シートから、「災害伝言ダイヤル171」などについても説明されたそうです。授業の進め方に加えて、鳴瀬未来中学校には家族を亡くした生徒もいるため、「とっさのひとこと」から選ぶトピックや状況を説明する時に注意した点なども共有されました。被災地で防災の授業をする際、時には子どもたちへの特別な配慮が必要な場合があります。
■「なまずの学校」赤井南小学校 及川先生
「なまずの学校」の実践報告は、赤井南小学校の及川先生からです。「なまずの学校」では、災害時に発生するさまざまなトラブルを手持ちのアイテムカードを選んで解決します。まず、「手に入れやすい物、使いやすい物を選ぶこと」「答えは一つではないこと」を伝えたそうです。
問題には「協力問題」とそうでない問題がありますが、必ず両方の問題をすることにし、最初は個人でカードを選ぶ「個人戦」、そしてグループで話し合ってカードを選ぶ「団体戦」を行うというアイデアが紹介されました。「団体戦」では、選ぶカードが2枚と限定されたため、先生たちは手持ちのカードからベストの組み合わせのカードを選ぼうと真剣なディスカッションとなりました。
■「新聞紙でスリッパ作り」赤井小学校 酒井先生
「新聞紙でスリッパ作り」の実践報告は、赤井小学校の酒井先生。昨年、「スリッパ作り」に対しては「小学校1年生には少し難しいかもしれない」という声が出ていましたが、スリッパの折り方の工程について一つひとつ見本を作り、順々に黒板に貼って説明するという方法を教えてもらいました。
大人の場合は新聞紙の大きさで、ちょうどのサイズのスリッパができるのですが、小学校1年生の場合は、新聞紙半分の大きさで作ったという工夫も共有されました。
見本を見ながら説明を聞いて作っている先生たちですが、「意外と難しいぞー」との声も。「1年生みんな作れましたよ!」と励ましの言葉もあり、無事全員が作り終えました。
■参加した先生の感想
昨年の研修会は、防災教育教材の使い方の説明が中心でしたが、2回目の今回は実際に授業で使ってみた経験を共有したことから、先生たちにとって他の学校でどのような取り組みを行っているのかを知る良い機会となったようでした。また、課題を見つけて防災教育を進めていこうという決意もうかがえました。
「同じ東松島市内で、他の学校がこのような取り組みをされていることを初めて知りました。本校の生徒はどちらかというと意識が低いように感じることがあったので、教材を生かして意識を高められたら、と思いました」(中学校の先生)
「子どもたちが興味をもって活動に取り組めると感じました。しかし、ただのゲームで終わらないように、防災に対する子どもへの意識付けなど、私たち教師の進め方を工夫していく必要があると感じました」(小学校の先生)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが紹介している「楽しく、主体的に学ぶ防災」、そしてすぐに使える実践的な防災学習への評価もありました。
「子どもには楽しいと感じるものが有効なので、紹介されたような教材はとても役に立つと思いました」(小学校の先生)
「ありがとうございました。習ったことはすぐにでも活用していきたいと思います。特に教具を使うものは小さい子から、親しめるようなので、実態に応じて活用させたいと思います」(小学校の先生)
また、研修会を継続することが大切だと思われる感想もありました。
「やはり1年間で忘れてしまうことがあった。今回再び思い出すことができてよかった」(小学校の先生)
「防災教育を進めるにあたり、様々な手立てや方法を情報交換の形で行うことができるよい機会であると感じた」(小学校の先生)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの東日本大震災復興支援事業では、子どもたちが楽しく、主体的に防災を学ぶことができるように、東松島市をはじめとして岩手県、宮城県、福島県で防災教育を推進しています。このような防災教育研修会が、各地で継続的に実施されていくために、これからも活動していきます。みなさまのご支援をよろしくお願いします。
(報告:東京事務所 太田まさこ、仙台事務所 菅原絵美)