ウガンダ(公開日:2017.05.16)
ステレオタイプからの脱却〜南スーダン難民支援の現場で〜
※この内容は、ハフィントンポスト誌に掲載された同タイトル記事の転載です。
3年以上にわたり人道危機の続く南スーダン。
今年2月には、北部ユニティ州で飢饉が宣言されるなど、国の前途に明るい兆しは見えない。
私は10年前、内戦が終結し、スーダンからの独立の是非を問う国民投票を数年後に控えた南部の復興支援に携わっていた。
あれから10年。復興を願って足繁く通った土地は、独立を果たしたが、再び衝突の地と化し2017年4月現在、およそ182万人の難民が周辺国に流出している *1。
■隣国へ逃れる子どもたち
こうした状況に対処するため、セーブ・ザ・チルドレンは、南スーダン国内での支援に加え、隣国のウガンダでも、難民となった子どもたちの保護事業を実施している。
今年1月下旬、私は活動のモニタリングのためにウガンダを訪れ、日差しが照りつけ、熱風の巻き起こす土埃が舞う現地で子どもたちの声を聴いてきた。
3年以上にわたり人道危機の続く南スーダン。
今年2月には、北部ユニティ州で飢饉が宣言されるなど、国の前途に明るい兆しは見えない。
私は10年前、内戦が終結し、スーダンからの独立の是非を問う国民投票を数年後に控えた南部の復興支援に携わっていた。
あれから10年。復興を願って足繁く通った土地は、独立を果たしたが、再び衝突の地と化し2017年4月現在、およそ182万人の難民が周辺国に流出している *1。
■隣国へ逃れる子どもたち
こうした状況に対処するため、セーブ・ザ・チルドレンは、南スーダン国内での支援に加え、隣国のウガンダでも、難民となった子どもたちの保護事業を実施している。
今年1月下旬、私は活動のモニタリングのためにウガンダを訪れ、日差しが照りつけ、熱風の巻き起こす土埃が舞う現地で子どもたちの声を聴いてきた。
南スーダン難民の子どもたちの話を聴く筆者
「ウガンダにたどり着くまで何日もの間、歩き通しでした。途中、教会に泊めてもらったのですが、寝ている間に火をつけられ、必死の思いで逃げ出しました。父さん、母さんも一緒にいたのですが、途中ではぐれてしまい、今でも行方は分かりません。ウガンダに辿りついた時に思ったこと?ほっとした。それだけです。」
こう語るのは、ウガンダ北部の難民居住区を訪れた時に出会ったサミュエルさん(仮名、16歳)。
サミュエルさんのように保護者や付添いの大人と離ればなれになってしまった子どもは、誘拐や虐待、児童労働といったリスクに晒されやすい。
ウガンダ国内に避難している南スーダン難民の中で、2017年4月現在、個別支援を必要とする子どもたちの人数は約8,600人に達し、この数は今後も増える見通しである *2。
■子ども支援に欠かせないケース・ワーカー
ウガンダで、こうした子どもたちへの支援を支えているのは、ケース・ワーカーと呼ばれる有給のボランティアたちの存在だ。
特に配慮の必要な子どもたちを日々訪問し、家族との再会支援や里親探しを行ったり、必要なサポートを提供する他の専門機関へつなげるなど、支援の最前線で日々の活動を支えている。
そして、彼らケース・ワーカーの多くが、自身も難民として南スーダンから逃れてきた人々だ。
ウガンダは、近隣諸国から120万人近くの難民を受け入れ*3 、土地の提供に加え、就労や移動の権利などを与えてウガンダ社会の発展に貢献できるようにしており、その難民政策は特筆に値する。
難民自身の力はまた、私たちが支援を行っていくうえでも欠かせない。
一緒に活動するケース・ワーカーの声を紹介したい。
「南スーダンでは教師をしていました。子どもたちと触れ合う機会が多かった私に、この仕事はうってつけだと考えたのです」
こう語るのは、ウガンダ北部の難民居住区を訪れた時に出会ったサミュエルさん(仮名、16歳)。
サミュエルさんのように保護者や付添いの大人と離ればなれになってしまった子どもは、誘拐や虐待、児童労働といったリスクに晒されやすい。
ウガンダ国内に避難している南スーダン難民の中で、2017年4月現在、個別支援を必要とする子どもたちの人数は約8,600人に達し、この数は今後も増える見通しである *2。
■子ども支援に欠かせないケース・ワーカー
ウガンダで、こうした子どもたちへの支援を支えているのは、ケース・ワーカーと呼ばれる有給のボランティアたちの存在だ。
特に配慮の必要な子どもたちを日々訪問し、家族との再会支援や里親探しを行ったり、必要なサポートを提供する他の専門機関へつなげるなど、支援の最前線で日々の活動を支えている。
そして、彼らケース・ワーカーの多くが、自身も難民として南スーダンから逃れてきた人々だ。
ウガンダは、近隣諸国から120万人近くの難民を受け入れ*3 、土地の提供に加え、就労や移動の権利などを与えてウガンダ社会の発展に貢献できるようにしており、その難民政策は特筆に値する。
難民自身の力はまた、私たちが支援を行っていくうえでも欠かせない。
一緒に活動するケース・ワーカーの声を紹介したい。
「南スーダンでは教師をしていました。子どもたちと触れ合う機会が多かった私に、この仕事はうってつけだと考えたのです」
「南スーダンからウガンダまでの道中、ずっと子どもたちと一緒に逃げてきました。だから子どもたちが、どんな気持ちでいるかはよく分かります。私なら子どもたちの気持ちに寄り添えると思ったのです」
支援活動に従事するケース・ワーカーをはじめとする現地スタッフたち
こうした言葉から見えてくるのは、「かわいそうな」や「悲惨な状況に置かれた」といった枕詞がつくステレオタイプ化された「難民」ではない。
志に基づき、自分たちの持つ能力や経験を活かしながら、厳しい状況を少しでも改善していこうと考える、芯の強い人々の姿である。
彼らをはじめとする難民は、難民条約、そして国際人権諸条約に則って、保護され、その権利が守られなければならない人々であると同時に、自らの力で将来を切りひらいていく可能性や主体性を持った人々でもあるのだ。
難民問題を巡って、今、世界は揺れている。
様々な立場ごとに異なる視点があり、答えが出ない問題のように見えるかもしれない。
だが、私が出会った、難民の子どもたちのために日々奔走する、自らも難民である現場のスタッフが教えてくれたのは、難民とは「助ける存在」や「他所からきた他者」ではなく、よりよい社会のために、「共に歩む存在」だということだ。
世界の人々が抱くステレオタイプ化された「難民」像に対する意識が変わり、難民の人たちとの向き合い方が変わるように、私たちは日々努力を続けていかなくてはならないと改めて認識させられた。
志に基づき、自分たちの持つ能力や経験を活かしながら、厳しい状況を少しでも改善していこうと考える、芯の強い人々の姿である。
彼らをはじめとする難民は、難民条約、そして国際人権諸条約に則って、保護され、その権利が守られなければならない人々であると同時に、自らの力で将来を切りひらいていく可能性や主体性を持った人々でもあるのだ。
難民問題を巡って、今、世界は揺れている。
様々な立場ごとに異なる視点があり、答えが出ない問題のように見えるかもしれない。
だが、私が出会った、難民の子どもたちのために日々奔走する、自らも難民である現場のスタッフが教えてくれたのは、難民とは「助ける存在」や「他所からきた他者」ではなく、よりよい社会のために、「共に歩む存在」だということだ。
世界の人々が抱くステレオタイプ化された「難民」像に対する意識が変わり、難民の人たちとの向き合い方が変わるように、私たちは日々努力を続けていかなくてはならないと改めて認識させられた。
*1 UN High Commissioner for Refugees (UNHCR), South Sudan Situation: Regional Update, April 2017.
*2 子どもの保護情報システム(CPIMS: Child Protection Information Management System)のデータによる。
*3 UN High Commissioner for Refugees (UNHCR),UGANDA : South Sudan Refugee Situation, April 2017.
(海外事業部プログラム・コーディネーター:吉田克弥)
*2 子どもの保護情報システム(CPIMS: Child Protection Information Management System)のデータによる。
*3 UN High Commissioner for Refugees (UNHCR),UGANDA : South Sudan Refugee Situation, April 2017.
(海外事業部プログラム・コーディネーター:吉田克弥)