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ミャンマー
(公開日:2008.02.01)

10人に一人が5歳の誕生日を迎えられません

 

【ミャンマーの子どもたちの10人に一人が5歳の誕生日を迎えられません】
?栄養と衛生が重要課題?


ミャンマーのカレン州でSCJが2006年からJICA草の根技術協力事業の支援により行っている「子どもの健康と栄養事業」を、広報担当者が視察してきました。ミャンマーの子どもたちの様子を報告します。

「ない」ということを知ること

今回、カレン州パアン町の村々で行っている事業を視察してきました。主な内容として、地域の診療所建設、栄養改善事業、母子健康手帳普及活動、ハエ防止トイレ設置事業を見てきました。村の人々の話を聞いていて、一貫して感じたことは、「以前は何の知識もなかったので・・・」という意見でした。

病気になっても診療所がない、子どもが栄養不良でもなぜそうなるかわからない・どうやって改善するかわからない、トイレを使うことの意味を知らない、妊娠中に何に気をつけるべきかわからない、衛生がなぜ重要か知らない・・・知らなければ、わからなければ、その状況を受け入れるしかなく、どう改善するべきかわからない、いや改善するべきということがわからないのです。

「ない」ということに気づいてもらうこと、そしてあるべき状況に改善していくべきことに気づいてもらうこと、そうすれば驚くほどの変化が可能です。

しかし、だからこそ、事業を始めるときの住民への説明・説得が一番むずかしかったようです。どうしてSCJの活動が必要なのか、どういう意味があるのか、SCJのスタッフたちは時間はかかってもきちんと納得してもらうよう努力と工夫を重ねたということです。このように住民ときちんと話し合うこと、そして事業を進めながらも柔軟にニーズをくみ取っていくこと、これはNGOならではの活動の良さだと実感しました。

【1.地域保健診療所建設事業】
SCJ は、パアンの地域保健診療所6ヶ所の建設支援を行っています。これは、村レベルでの保健サービスを改善することにより、子どもの健康と栄養状態の改善を目指すものです。診療所建設の際には、コミュニティに建設委員会を設置し住民自らが建設に関わることにより子どもの健康と栄養への住民の関与を深めることも図ります。

?タウンダゴン村を訪ねて?

建設委員会の若きリーダーが診療所建設の概要、コミュニティにとってのチャレンジなどを説明してくれました。1月にオープニングセレモニーを行ったばかりのタウンダゴン村の診療所を訪問しました。

この村には以前は診療所がなく、SCが政府の提案によりこの村で事業を始める際には村人と良く議論を重ねました。他2村と合同で建設委員会を設置しました。

土地は、このリーダーの父親が寄進してくれ、SCJ資金以外の土地の整備、追加の備品、輸送や労働力の一部などは村人のボランティアや寄付によって賄いました。この地域はタイへの出稼ぎ者が多く、出稼ぎ者からの寄付も多かったということです。


建設委員会、訪問したJICAミャンマーの宮本所長と馬部所員、SCJ和田駐在員と皆で診療所の前で記念撮影印象的だったのは、リーダーの説明が一通り終わり、今度はこちらから質問と挨拶を述べようとすると、「まだ伝えたいことがある」と身を乗り出し、SCJ- JICAに厚いお礼を述べてくれたこと。

「診療所の開業自体は昨年の10月からで、分娩以外にもセミナーなど活動を行っている。建設にかかわった3村以外の村も利用しており、ロケーションが良いので地域にとって利用価値の高いものになっている。委員会は今後もメンテナンスなど診療所のサポートを継続し住民へ働きかけていく」と情熱的に締めくくってくれました。

【2.栄養事業(給食セッション)】
3歳未満児とその母親を対象に、子どもや妊婦・母親に必要な栄養や衛生について学び、実際に栄養のある食べ物を調理して給食セッションを行うことにより、コミュニティが自分たちの生活に学んだことを取り入れ、子どもの栄養不良状態を改善するとともに、村レベルでの保健・栄養に関する見識を高め、行動を改善することを目指しています。

?ウィンチャン村を訪ねて?

(左上)セッションの最初は、いろいろなテーマについて勉強します。今日は、子どもの栄養がテーマ。(右上)給食準備中のお母さんたち(左下)食事前に手を洗うことも重要な研修です(右下)実際に子どもたちに食べさせます。おいしいかな?
【3.タマウ村を訪ねて】
実際に栄養事業を受けたタ・ブーさんの家を訪ねました。
タ・ブーさんはパオー族。両親がバンコクに出稼ぎ中の姪のムー・ムー・エーのために栄養事業に参加しました。自分も3人の子持ちで、2エーカーの田んぼを耕して生計としています。

事業への参加は、時間が取られその分仕事ができなくなるので最初は乗り気でなかったということ。しかし、以前は栄養に関する知識がゼロだったのが、今では食事や栄養について学び、栄養不良の子どもにどのような食事をさせれば良いかという知識が身につき、自分の子どもたちのためにも実践しているとのこと。


(左)自宅で栄養事業で習った食事を実際に作ったものを和田スタッフに見せるタ・ブーさん(右)ご飯を食べるムー・ムー・エーちゃん(2歳)【4.母子健康手帳普及活動】
妊娠中・後に注意するべきことなどを中心に学ぶセッション。事業の一環として、助産師を通じて提供する母子健康手帳の使い方、衛生管理などを学ぶ。


?タマウ村で事業の様子を視察しました?

(左)実際に母子健康手帳の見本を配って説明(右)その場で絵を描きながら、手や爪の衛生の大切さを説明
 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

【SCJスタッフのテェインギ・ウィンの話】

タマウ村の母親たちに研修を行うテェインギ。元気で明るくリズミカルな喋りが印象的でした。タマウ村での研修を自分がトレーナーとして実施するのは2回目で、1回目はナルギス前。(彼女は昨年のサイクロン災害緊急援助要員として被災地で支援活動に従事後パアンに戻る)。

タマウ村に限らず、それぞれの村にそれぞれの特徴があり難しさがあります。ビルマ語を理解しない人たちもいるため、村のボランティアのサポートは非常に重要。

また、村の母親たちのメンタリティは教育や栄養に関心がないことが多く、またシャイで人前で話すことが苦手な人が多いので、研修に参加してもらうことが最初は難しいです。8ヶ月前と比べて、タマウ村のお母さんたちは随分と明るく前向きに研修を受けているのが印象的でした。

私は元々自分の村で子どもたちに教えたり様々なワークショップに参加したりという経験があったので、トレーナーとして活動することに問題はありませんでしたが、妊娠や衛生・栄養などの知識は本を読んだり、自分で、また同僚と一緒に、勉強したり練習するように努力しました。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

実際にミャンマーに行ってみると、電気や道路など社会インフラの不足・不整備が、特に地方で、想像以上でした。電気や水道、道路といった社会インフラは、生活の利便性というだけでなく、社会とそこに住む人々の未来を描く礎です。

その欠如は、政治的閉塞感とあいまって社会の停滞感を生じさせています。人口の4割を子どもが占めるこの国で、子どもたちが未来を描けるように、一歩ずつでも着実な変化をもたらしていくことが大切です。そのために、日本の皆さまをはじめとする国際社会がミャンマーに関心を持ち続けることが重要なのだと思います。

SCは、これからもミャンマーの子どもたちのために活動していきますので、皆さまのサポートをお願いいたします。


葉山久美子






 

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