ガザ(公開日:2015.05.20)
ガザの子どもたちのための保護・教育支援事業の開始(2015.05.20)
パレスチナ・ガザ地区は、中東のエジプトとイスラエルに囲まれた小さな地域です。面積約360平方キロメートル(東京23区の6割程の広さに相当)に約170万人が暮らしています。
2014年7月7日から約50日間にわたり、ガザとイスラエルの間で攻撃の応酬があり、特にガザではイスラエルからの激しい空爆が続きました(8月26日に無期限停戦合意)。この紛争で2,257人(うち子どもは539人)が亡くなり、1万人以上(うち子どもは3,374人)が負傷するなどの甚大な被害が出ました*1。
今年1月、被害の大きかったガザの子どもたちの支援事業を実施する準備として、子どもたちの置かれている状況やニーズに関する調査を実施しました。
*1:”Gaza Initial Rapid Assessment” UNOHCA, Aug 2014, ”Humanitarian Situation Report State of Palestine” UNICEF, Dec 2014
ガザ地区の検問所はエジプトとイスラエルに管理されており、ガザ地区の住民は原則として自由に出入りすることができません。さらに、輸入も制限されていて、がれき撤去や建設に必要な重機や資機材も不足しているため、停戦から5か月がたっても、多くの建物はそのまま放置されていました。
(写真)人々は崩れかけた建物に住むことを余儀なくされています。
(写真)動物園や遊園地も破壊され、閉鎖されてしまいました。
■幼稚園への訪問
ガザ北部のベイト・ラヒヤ(Beit Lahiya)にある幼稚園を訪問し、先生にお話を伺いました。
(写真)幼稚園の先生から聞き取りをする海外事業部 村田職員
「この幼稚園には約200人の子ども(4〜5歳)が通っていましたが、紛争で1人が亡くなり、30人が怪我をしました。幼稚園だった建物は破壊されてしまったので、現在は地域の人々のご好意で、家賃を安くしてもらった場所を借りて運営しています。以前と比べると、他の子どもと遊ぶことなく孤立していたり、暴力を振るうようになった子どもが増えています。私たち幼稚園の教員は、こうした状況に対処するための研修をうけていないので、子どもたちの変化に十分に対応しきれていないのです。」
(写真)幼稚園だった建物は屋根が完全に崩れ落ちてしましました。
■子ども、保護者、教員への聞き取り
また、身体障害のある子どもを含む子どもたちや保護者、教員の方々に集まってもらい、聞き取りを行いました。
その結果、子どもたちの状況に関して以下のような報告がありました。
・暴力的な行動をとるようになった。
・勉強に集中できなくなった。
・うまく話せない、または話すことが少なくなった。
・夜に寝られなくなったり、悪夢を見て起きたり、失禁したりするようになった。
・雷などの大きな音でパニックに陥るようになった。
・仲間と一緒に遊ぶことなく孤立している。
・言葉では言い表せないほどの悲惨な状況を目の当たりにし、恐怖心から親のそばを
離れられない。
・身体障害のある子どもは、今後、人道危機が発生した際に逃げ遅れたり、取り残され
たりするかもしれないという恐怖を抱えており、2重の負担となっている(空爆予告
の情報が入ってから逃げるまでに2分ほどの猶予しかなく、実際に障害のある子ども
が取り残されたケースもある)。
また、子どもたちからは「遊べる場所がほしい」、「楽器やおもちゃ、本がほしい」、「遠足に行きたい」「歌ったり、踊ったりしたい」などという意見がありました。
さらに、教員からは、以下のような課題が挙げられました。
・学校では重度のトラウマを抱えた一部の子どもたちに対して、専門家によるカウンセ
リング等が行われているが、すべての子どもたちに対して心理社会的サポートを実施
するだけのキャパシティがない。
・学校には空爆の傷跡が残っていて、子どもたちに心理的な負担を与えている。
・今後の緊急事態に対応するための準備や、教員・学校相談員の能力が十分ではない。
(写真)地元NGOによる子どもたちの心理社会的サポートのアクティビティの様子
■事業の開始
こうした現地の人々の声をもとに、子どもたちにとって今なにが最も必要とされているかを考査し、4月30日から「人道危機の影響を受けたガザ地区の子どもたちの保護・教育支援事業」を開始しました。この事業では、教育施設の整備などを通じて、子どもたちにとって安心・安全な環境で教育を受けられる機会を提供します。
また、子どもたちは本来、どんな大変な状況からも回復する力(レジリエンス)を持っています。こうした子どもたちのレジリエンスを強化するために、課外プログラム、遠足、イベント、サマースクールの開催等といった活動を通じた心理社会的サポートを実施します。
2014年7月7日から約50日間にわたり、ガザとイスラエルの間で攻撃の応酬があり、特にガザではイスラエルからの激しい空爆が続きました(8月26日に無期限停戦合意)。この紛争で2,257人(うち子どもは539人)が亡くなり、1万人以上(うち子どもは3,374人)が負傷するなどの甚大な被害が出ました*1。
今年1月、被害の大きかったガザの子どもたちの支援事業を実施する準備として、子どもたちの置かれている状況やニーズに関する調査を実施しました。
*1:”Gaza Initial Rapid Assessment” UNOHCA, Aug 2014, ”Humanitarian Situation Report State of Palestine” UNICEF, Dec 2014
ガザ地区の検問所はエジプトとイスラエルに管理されており、ガザ地区の住民は原則として自由に出入りすることができません。さらに、輸入も制限されていて、がれき撤去や建設に必要な重機や資機材も不足しているため、停戦から5か月がたっても、多くの建物はそのまま放置されていました。
(写真)人々は崩れかけた建物に住むことを余儀なくされています。
(写真)動物園や遊園地も破壊され、閉鎖されてしまいました。
■幼稚園への訪問
ガザ北部のベイト・ラヒヤ(Beit Lahiya)にある幼稚園を訪問し、先生にお話を伺いました。
(写真)幼稚園の先生から聞き取りをする海外事業部 村田職員
「この幼稚園には約200人の子ども(4〜5歳)が通っていましたが、紛争で1人が亡くなり、30人が怪我をしました。幼稚園だった建物は破壊されてしまったので、現在は地域の人々のご好意で、家賃を安くしてもらった場所を借りて運営しています。以前と比べると、他の子どもと遊ぶことなく孤立していたり、暴力を振るうようになった子どもが増えています。私たち幼稚園の教員は、こうした状況に対処するための研修をうけていないので、子どもたちの変化に十分に対応しきれていないのです。」
(写真)幼稚園だった建物は屋根が完全に崩れ落ちてしましました。
■子ども、保護者、教員への聞き取り
また、身体障害のある子どもを含む子どもたちや保護者、教員の方々に集まってもらい、聞き取りを行いました。
その結果、子どもたちの状況に関して以下のような報告がありました。
・暴力的な行動をとるようになった。
・勉強に集中できなくなった。
・うまく話せない、または話すことが少なくなった。
・夜に寝られなくなったり、悪夢を見て起きたり、失禁したりするようになった。
・雷などの大きな音でパニックに陥るようになった。
・仲間と一緒に遊ぶことなく孤立している。
・言葉では言い表せないほどの悲惨な状況を目の当たりにし、恐怖心から親のそばを
離れられない。
・身体障害のある子どもは、今後、人道危機が発生した際に逃げ遅れたり、取り残され
たりするかもしれないという恐怖を抱えており、2重の負担となっている(空爆予告
の情報が入ってから逃げるまでに2分ほどの猶予しかなく、実際に障害のある子ども
が取り残されたケースもある)。
また、子どもたちからは「遊べる場所がほしい」、「楽器やおもちゃ、本がほしい」、「遠足に行きたい」「歌ったり、踊ったりしたい」などという意見がありました。
さらに、教員からは、以下のような課題が挙げられました。
・学校では重度のトラウマを抱えた一部の子どもたちに対して、専門家によるカウンセ
リング等が行われているが、すべての子どもたちに対して心理社会的サポートを実施
するだけのキャパシティがない。
・学校には空爆の傷跡が残っていて、子どもたちに心理的な負担を与えている。
・今後の緊急事態に対応するための準備や、教員・学校相談員の能力が十分ではない。
(写真)地元NGOによる子どもたちの心理社会的サポートのアクティビティの様子
■事業の開始
こうした現地の人々の声をもとに、子どもたちにとって今なにが最も必要とされているかを考査し、4月30日から「人道危機の影響を受けたガザ地区の子どもたちの保護・教育支援事業」を開始しました。この事業では、教育施設の整備などを通じて、子どもたちにとって安心・安全な環境で教育を受けられる機会を提供します。
また、子どもたちは本来、どんな大変な状況からも回復する力(レジリエンス)を持っています。こうした子どもたちのレジリエンスを強化するために、課外プログラム、遠足、イベント、サマースクールの開催等といった活動を通じた心理社会的サポートを実施します。
さらに、紛争で傷ついた子どもたちを支える周りの大人たちを支援するために、教員への対応能力強化研修や地域の人々への働きかけも併せて実施します。
今後も事業の様子をご紹介していきます。
本調査および事業は、皆さまからのご支援とジャパン・プラットフォームからの助成によって実施されています。
ガザ事業担当:村田あす香
今後も事業の様子をご紹介していきます。
本調査および事業は、皆さまからのご支援とジャパン・プラットフォームからの助成によって実施されています。
以上
ガザ事業担当:村田あす香