トップページ > スタッフブログ > ガザ > 【パレスチナ・ガザ地区】衝突から300日近く「人道支援実施地域」への攻撃、絶え間ない移動命令、支援関係者への攻撃が人道支援の実施に支障をきたしている

ガザ
(公開日:2024.08.06)

【パレスチナ・ガザ地区】衝突から300日近く「人道支援実施地域」への攻撃、絶え間ない移動命令、支援関係者への攻撃が人道支援の実施に支障をきたしている

 
イスラエルが「人道支援実施地域」と指定した地域や援助機関が支援を実施している地域を含むパレスチナ・ガザ地区全域への大規模な空爆、物資搬入に必要な検問所の機能制限は、人道支援の実施を著しく妨げていると、7月30日に発表された人道実施に関する報告書(※1)の中でセーブ・ザ・チルドレンを含む20の援助機関が警告しています。


ガザ危機が始まって300日近くが経過しましたが、人々は極端に短い期間(※2)で、以前は安全とみなされていた場所からの避難を繰り返し余儀なくされています。かつて北部から南部ラファに避難していた人たちがさらに避難を命じられ、ガザ中部では、犠牲者が増えています。

ガザの保健省によると、中部への空爆によって、19万人以上の人たちが、同地域のデル・アル・バラフやハン・ユニスからわずか4日で移動を迫られ、2024年7月23日時点でハン・ユニスでは73人が空爆により犠牲になり、270人が負傷したとされています。また国連によれば、ガザ地区の80%以上の地域がイスラエルによって立ち入り禁止区域に設定され、残りのわずか17%の地域に190万人の人たちが避難しなければならない事態となっています。(※3

さらに、検問所は封鎖され、治安管理もなされないばかりか、国連やNGOなど支援機関への攻撃も繰り返し行われ、域内の人道支援は著しく妨げられています。支援団体「ウォー・チャイルド」の現地提携団体の現地スタッフ2人が犠牲になったほか、中部のヌセイラートでの空爆では、さらにもう1人のスタッフが負傷し、スタッフの子ども4人全員が犠牲となりました。また、「アクションエイド」の提携団体現地スタッフの自宅も空爆され、スタッフの4人の子どもも犠牲になっています。

そうした厳しい状況下で、セーブ・ザ・チルドレンは、猛暑の中1ヶ月以上ケレム・シャローム検問所で待機していたトラック4台分(80パレット)の医療物資を、車列を組んでガザ地区に運ぶことができました。医療物資には、命を守る抗生物質や心臓病の薬などが含まれていました。しかし、重要な医薬品でさえタイムリーに届けることができず、医療施設は国連機関からの物資提供に頼っていますが、それも常に不足しています。

また、セーブ・ザ・チルドレンでは、温度管理が必要な医薬品17箱が、イスラエルの物資搬入を行う機関COGAT(Coordinator of Government Activities in the Territories)によって搬入を拒否され、エジプトのアルアレシュに留め置かれていることを確認しています。イスラエル当局に、温度管理ができる密閉式トラックの検問通過が認められていないためで、こうした事態は、何度も起きています。

他の援助機関も同様の困難に直面しています。例えばオックスファムは、給水タンクや、海水を淡水化する装置、蛇口、発電機、トイレの搬入について認可されているものの、検問所で留め置かれ、域内に搬入することができていません。また、ノルウェー難民委員会(NRC : Norwegian Refugee Council)が調達した864張りのテントは、アルアリッシュから、最近ケレム・シャローム検問所に到着しましたが、治安の悪さと安全上の懸念のため、同じようにガザ域内に搬入できないままとなっています。

国連によると(※4)、ガザに搬入される人道支援物資の1日平均量は2024年4月以来56%減少しています。さらに、保健医療施設の崩壊、継続的な移動命令による人口過密によって、水などを媒介とする感染症のリスクが極端に高くなっています。

2024年7月23日、世界保健機関(WHO)は、6つの廃水サンプルから、ポリオウイルス(※5)がガザ全域に広がる危険性が高いと発表しました。WHOによると、現在、5歳未満の数万人の子どもたちがポリオに感染する危険にさらされており、ガザを越えて国際的に感染が広がる可能性も否定できないとされています。(※6)

セーブ・ザ・チルドレンの中東地域ディレクターであるジェレミー・ストーナーは、次のように述べています。

「私たちは、ガザの子どもたちの命を救うために全力を尽くしていますが、私たちの仕事は日に日に困難さを増しています。市民を収容できない地域に強制的に避難させることは、まったく新しいレベルの人道的大惨事を引き起こしています。もう避難できる場所はなく、子どもたちを生かすための救命物資もほとんどありません。重要な支援が届かなければ、命は失われ続けるのです。 

そして、支援関係者も暴力から免れることはできません。私たちのスタッフの一人は、2023年12月にイスラエルの空爆によって妻と4人の子どもたちとともに犠牲になりました。それ以来、支援関係者は標的とされ続けています。人道支援スタッフは決して標的になってはならないし、物資の輸送車や物資のための倉庫を含む人道支援施設は保護されなければなりません。私たちは何度も何度も訴えてきました。即時かつ恒久な停戦こそが、ガザの人命を救う唯一の方法です」

セーブ・ザ・チルドレンは1953年以来、パレスチナ自治区の子どもたちに必要不可欠なサービスを届けてきました。
そして現在は、ガザ地区の人たちに飲料水、食料、衛生用品、マットレス、毛布、シェルター(住居)、教育支援など、重要な支援を届けるため、24時間体制で活動しています。加えて、子どもたちとその家族に精神保健・心理社会的支援を提供し、生活必需品を購入するための現金も届けています。
しかし、より多くの人々に確実に支援を届けるためには、イスラエル政府がガザ地区の包囲を解き、ガザ地区全域への制限なしの人道アクセスを認め、すべての当事者が敵対行為を停止しなければならないと考えます。


(※1) Gaza Humanitarian Snapshot #2: 13 - 29 July 2024 - occupied Palestinian territory | ReliefWeb


(※2) UN Human Rights Office - OPT: Khan Younis – Evacuation order and fatalities [EN/AR] - occupied Palestinian territory | ReliefWeb


(※3) Humanitarian Situation Update #194 | Gaza Strip | United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs - occupied Palestinian territory (ochaopt.org)

(※4) Humanitarian Situation Update #196 | Gaza Strip | United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs - occupied Palestinian territory (ochaopt.org)

(※5) WHO sees 'high risk' of polio virus spreading across Gaza, assessment underway | Reuters

(※6) The virus that causes polio has been found in Gaza. Here’s why that is grim news | Science | AAAS







































 

あなたのご支援が子どもたちの未来を支えます

もっと見る

月々1500円から、自分に合った金額で子どもの支援ができます。
定期的に年次報告書や会報誌をお送りしています。

1回から無理なくご支援いただけます。

PAGE TOP