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ガザ
(公開日:2015.09.02)

ガザにて「子どものための心理的応急処置(PFA)」指導者育成研修を実施しました

 
ガザでは2014年7月〜8月にかけて51日間に及んだイスラエルとの紛争により、子どもを含む多くの人々が大きな影響を受けています。生活のインフラだけでなく、人々のこころにも傷跡を残しています。停戦から1年が経過した今なお、7割を超える子どもは日常的な悪夢や夜尿症などに悩まされており、深刻なこころの問題を抱える子どもたちが数多くいます。

このような状況を受け、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは2015年4月より、ガザにおいて、心理社会的支援と医療やカウンセリングサービスの提供など、子どもたちの保護・教育支援事業を行っています。この一環として、「子どものための心理的応急処置(PFA)」の研修を実施しました。

日本でも2014年から、東日本大震災の影響を受けた地域をはじめ、各地で普及する活動を進めています。今回の研修では、日本国内で普及にあたっている東日本復興支援事業部の職員がガザに出張し、セーブ・ザ・チルドレンのガザ事務所の職員と共に講師を務めました。


「子どものための心理的応急処置」指導者育成研修の様子

体の傷に救急処置・応急手当が必要なように、こころの傷へも救急処置・応急手当があり、早期に適切な手当を施すことで、速やかな回復を助けたり、長期にわたる深刻な心の問題が発生するリスクを劇的に下げることができます。

子どもにとってトラウマとなるような出来事が起きた時には、必要な支援の担当者や専門家に引き継ぐまで、周りにいる大人によって救急処置・応急手当が行われることが望ましいのです。そして、体の傷の救急処置・応急手当を、研修等で少しの知識を習得した一般の人が行えるように、こころの傷への救急処置・応急手当についても同様に、精神科医や心理カウンセラーなどの専門家ではない一般の人が行えることがあります。

ガザにおける紛争は、現在は停戦状態にありますが、それでも空爆やテロなどの事件が時折発生しています。また、2006年以降、数年おきに大きな紛争に発展するような事件が起きている状況を勘案すれば、大人たちが子どものこころの応急手当についての知識を持っていることは非常に大切です。


「子どものための心理的応急処置」指導者育成研修の様子

今回の研修は、「子どものための心理的応急処置」を普及することができる人材を育て、ガザにおいて人道危機や災害等が発生した場合に、ストレスを抱えた子どもに対して速やかに救急処置・応急手当を施し、かつ適切な支援につなげることができるようにすることを目的としています。研修には、セーブ・ザ・チルドレンのガザ事務所の職員、パートナー団体やコミュニティ団体の関係者、幼稚園や小学校の先生29名が参加しました。


研修講師を務めた東日本復興支援事業部職員(赤坂美幸)と
ガザ事務所職員(イブラヒム・アブ・ソベイ)

「子どものための心理的応急処置」は世界的に共通の手法ですが、地域による文化の違いや共通点も考慮していく必要があります。例えば、日本では困っていることをなかなか他人に相談しない傾向がありますが、ガザの人々はそうではないようです。一方、日本とガザでは精神的・心理的な治療や支援に対して人々が抱く抵抗感や、身内以外の他人への親切な対応やもてなしの心など、似ている側面もあると感じました。特に、精神的・心理的な治療や支援を受けている人への偏見や、そのような問題を抱えること自体を恥と捉えたりする考え方により、治療や支援を受けることを避ける人がいるという状況は、日本でもガザでも見られる傾向のようです。


デモンストレーションするセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの職員

今回の研修では、参加者が熱心に取り組む様子に、とても心動かされました。研修が始まる前は、退屈して寝てしまう人がいたらどうしようと心配していたのですが、参加者全員が真剣なまなざしでノートを取り、ロールプレイでは迫真の演技を披露してくれました。名優揃い、といったところでしょうか。

本事業では、事業の質を維持するために、11月と2月に今回の研修の参加者に対するフォローアップ研修を行う予定です。


グループワークの発表を準備する参加者


 グループワークの結果を発表する参加者


パペットを利用しながらロールプレイを行う参加者

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは今後もガザでの子どもたちの保護・教育支援事業を続けてまいります。

本事業は皆さまからのご支援と、ジャパン・プラットフォームの助成により実施しています。

報告者:赤坂美幸、佐藤収、紺野誠二


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2014年7月7日、ガザから発射されるロケット弾への対応として、イスラエルは軍事作戦を開始。同年7月18日には、ガザの過激派が軍事活動に利用していると言われる地下トンネルを破壊することを公の目的に掲げ、ガザへの地上侵攻が開始されました。これによって住民が密集する都市部において戦闘が行われ、砲撃、空爆、激しい戦闘によって、大量の避難民、死亡者、負傷者が生じ、ガザからの継続的なロケット弾の発射により、イスラエル側の住居や工場などの民間インフラにも被害がありました。2014年8月5日、イスラエルの軍隊は国境まで撤退。8月26日には双方によって停戦が受け入れられ、現在に至っています。
しかしながら、ガザでは依然として住居がない人が10万人おり、現在も続いているガザの封鎖や人道支援/資金の中断や不達により復興は著しく遅れていて、人道的状況は深刻です。

セーブ・ザ・チルドレン、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのガザでの支援活動
セーブ・ザ・チルドレンは、30年以上にわたり、ガザを含むパレスチナ全土で活動を続けてきました。ガザにおいては、緊急人道支援に加え、子どもやその家族への長期的な支援活動を実施している最も大きな国際NGOのひとつです。昨年のガザ紛争の勃発から今日までに、食糧、医薬品、新生児キット、水の配給、医療やカウンセリングサービスの提供、訓練されたボランティアのカウンセラーによる24時間ヘルプラインの運営支援などを通じ、145,945人の子どもたちに支援を届けてきました。また、子どもの保護や健康におけるリスクの低減、地域社会による緊急事態や災害への備えや対応の改善など、子ども自身の心理社会的な側面を含め、地域社会や子どもたちのレジリエンス(立ち直る力、回復力、復元力、弾力)の強化を目的とした活動も行っています。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、日本人現地駐在員を派遣して、今年4月よりガザの子どもたちの保護・教育支援事業を実施しています。この事業を通じて、子どもたちにとって安心・安全な教育環境の整備を行うとともに、子どもたちへの心理社会的サポートを地域ぐるみで行うことで、子どもたちや地域の人々が自らの力で困難を克服する力を育みます。



 

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