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ガザ
(公開日:2025.01.17)

【パレスチナ・ガザ地区】2024年、爆発性の武器によって、1日あたり15人の子どもが生涯にわたる障害を抱える可能性があります。

 
2024年にガザ地区で使用された爆発性の武器によって、月平均で475人、1日あたり15人の子どもたちが、四肢の欠損や聴覚障害など、生涯にわたる障害を抱える可能性があることがわかっています。

この人数は、セーブ・ザ・チルドレンを含む人道支援団体で構成されるパレスチナ・ガザ地区の保護クラスターによるレポートにて報告されており、同レポートでは、2024年1月〜11月の間に、少なくとも5,230人の子どもたちが重傷を負ったにもかかわらず、イスラエル軍による病院や医療従事者への攻撃、医療物資のガザ地区への持ち込み制限によって必要なリハビリ・治療を受けられず、生涯にわたる障害を抱えるかもしれないと言及されています 。

しかし、これらの推計値は最低限の人数であり、今回の戦争で負傷した子どもたち全てを含んでいないと思われます。また、危機下で体験または目撃したトラウマ的な出来事の結果、生涯にわたって精神的な障害を抱え苦しむ可能性のある子どもたちのことも把握できていません。

四肢の欠損、視力、聴力の喪失、精神障害を含む人々の傷は、ガザ地区の保健システムの崩壊、医薬品の流通制限、薬の不足によって日々悪化していますが、同時に、こうした状況は、ガザ地区での適切な治療やリハビリケアが不可能に近いことを示しています。

ガザ地区で唯一の四肢再建やリハビリのためのセンターは、医療物資とスタッフの不足によって2023年12月から機能しておらず、2024年2月の空爆でさらに被害を受けました。

特に足を失った子どもたちは、専門家による長期的なケアが必要となり、成長するにつれて定期的(時には6ヶ月ごと)に補装具やその他の治療を見直す必要がありますが、ガザ地区では現在、こうした治療を受けることは不可能です。 

 
セーブ・ザ・チルドレンのパートナー団体であるMAP(Medical Aid for Palestinians)の整形外科医であるアナ・ジーラニ氏は、次のように述べています。

 「(負傷した子どもたちの治療についてですが)、子どもたちの骨は成長しているものの、骨の成長部分に怪我をすれば、その部分は成長が止まってしまいます。栄養不良が悪化すれば、更に傷は治りません。私たちは、基本的に治らない傷を縫うことでごまかしているにすぎません。一見傷は安定してみえても、手足はうまく動かず骨は治らないため、子どもたちは四肢を切断せざるを得ないのです。」


また、2023年10月から11月にかけて45日間ガザ地区に滞在し、アル・アハリ病院で手術を行った、子どもの爆風傷害の治療に精通した外科医ガッサン・アブ・シッタ氏も

「ガザ地区は、紛争による負傷を再定義しています。私は、歩けるようになる前に、四肢の切断を余儀なくされた多くの乳児を見ました。目で見た物と四肢の協応を、脳が習得する前に負傷したため、子どもたちの発達に影響を与えることが懸念されます。

現在、何千人もの子どもたちが補装具を必要としていますが、反対側の手足に問題を抱える可能性も高いです。また、股関節や膝関節に初期の変形性関節症が起こるかもしれませんし、あるいは背骨の変形が起こるかもしれません。20代や30代になる頃には、正常な関節に余計な圧力がかかるため、通常ならば70代や80代で受ける人工関節の置換手術が必要になるかもしれません。」
   


爆撃により、足に大けがを負った少年(10歳)

また、紛争で負傷した子どもたちに精神保健・心理社会的支援を提供しているパートナー団体のカウンセラーはこう話します。

「私たちが支援した子どもたちの一人、アフマドさんは5歳で、家族とともに避難所となった学校に暮らしていました。しかし、その学校が攻撃され、父親と片腕を失いました。カウンセリングの際、アフマドさんと一緒に粘土で遊んでいたのですが、アフマドさんは私に、粘土で新しい腕を作ってほしいと言いました。そこで私は彼に、うまくいけばガザから出るときに新しい腕が手に入るよ、と伝えました。彼は更に私に粘土を渡して、新しいお父さんを作って、と言ったのです。」  


セーブ・ザ・チルドレンの人道政策・アドボカシー部門グローバル責任者であるアレクサンドラ・サイエは話します。 

「ガザ地区では、子ども時代が苦痛とトラウマに取って代わられ、子どもたちを効果的に治療・支援する手立ては組織的に根絶されています。子どもたちの生存はことごとく阻まれ、彼らが必要とする支援を提供するための私たちの活動も阻まれています。

  ガザ地区に見られる身体的・精神的苦痛の規模と深刻さは、一人ひとりの命を奪うだけでなく、今後何世代にもわたる、パレスチナ社会の構造そのものと未来を脅かしていると言えます。未来を守り、これ以上回復不可能な損失を防ぐためには、国際社会による早急な行動が必要です。一日一日と解決が遅れるたびに、脆くなってしまったパレスチナの子どもたちの未来が更に損なわれる危険があります。」


2024年9月、世界保健機関(WHO)は、ガザで22,500人以上の人々が人生を変えるほどの傷を負い、「現在、そして今後何年にもわたって」リハビリを必要としていると発表しました。WHOは、新たに負傷した人だけでなく、すでに慢性的な症状や障害のある何万人ものパレスチナ人が、重要な生活・医療サービスの崩壊によって危機にさらされている、と発表しています。 
  
セーブ・ザ・チルドレンは、引き続き恒久的停戦を求めると共に、ガザ地区への国際犯罪の遂行に使用されるおそれのある武器、部品、弾薬を供給する全ての国々に、供給をやめるよう要請します。また、イスラエル政府に対し、援助物資の輸送を妨げる全ての制限を解除するよう求めています。

また、国際司法裁判所は、ジェノサイド(大量虐殺)が行われる危険性があるとの見解を示し、イスラエル政府に対し、ジェノサイド条約の範囲内のあらゆる行為を停止するよう命じています。


セーブ・ザ・チルドレンは、1953年以来、パレスチナの子どもたちに必要不可欠なサービスと支援を提供しており、1973年以来、パレスチナ占領地域に常駐しています。私たちは現在も、ヨルダン川西岸地区とガザ地区で活動しています。  


セーブ・ザ・チルドレンとそのパートナー団体は、飲料水、食料、衛生用品、マットレス、毛布、学習教材、遊具を含む必要な物資を、ガザ地区50ヶ所で100万人以上に提供してきました。また、現金給付や、子どもたちの遊び場の提供、精神保健・心理社会的支援、栄養改善や精神保健支援を含む保健医療プログラムも実施しています。ここ数週間から数ヶ月の間だけでも、私たちは何千もの家族に食料や布団・毛布、雨除けの防水シート、その他のシェルター(簡易住居)用品を含む越冬用の物資を提供し、家族が厳しい冬の風雨から身を守れるように支援しています。  


(海外事業部 金子由佳)

 

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