アフガニスタン(公開日:2010.12.15)
紛争と貧困にあえぐ子どもたちに教育を 〜バーミヤン州における教育復興事業〜
村の民家の一角に、子どもたちとお母さんたちが集まりました。これから開始する就学前の幼児教育の事前調査のためです。
ルガヤ(6歳)とナディア(4歳)は従兄同志です。今度から一緒に幼児教室に通います。ルガヤのお母さんサラ(40歳)、ナディアの叔母のパリ(16歳)は学校に行ったことがなく、読み書きが出来ません。
ルガヤと母親のサラ
「娘に小学校に上がる前から友達と一緒に学べるチャンスが出来て、とてもうれしい。この子はとても頭のいい子だと思うの。就学前教室でいろいろなことを学ぶことは、小学校に通う準備をする上で重要なことだし、この子にとってとてもいいことだと思う。」
とサラは誇らしげに語ります。
ルガヤも、教室に通うのを楽しみにしているようです。小さな声で恥ずかしそうに話してくれました。
「ナディアと一緒になら教室に通ってもいいわ。友達と一緒に歌ったり勉強したりするの。」
ナディアと叔母のパリ
ナディアには心配ごとがあります。ナディアは叔母夫婦と暮らしていますが、小学校に通うナディアの叔父にあたる男の子が、学校で体罰を受けて帰ってくることが多いようです。
「学校では先生にたたかれるって聞く。たたかれるから、学校には行きたくない。」
アフガニスタンの子どもたちを取り巻く状況は複雑です。
2001年、タリバン政権の崩壊により、20年以上続いた内戦が終結を迎えましたが、この期間に学校施設を含むインフラ設備は壊滅的な打撃を受けました。内戦終結からおよそ10年たった今日においても、不安定な治安状況が続く中、地震や干ばつ、洪水などの自然災害の影響もあり、復興への道のりは困難を極めています。
紛争の影響、文化的慣習などが複雑に絡み合い、教育分野においても多くの問題を抱えています。現在アフガニスタンでは、500万人の子どもたち(学齢期の子ども全体の41%相当)が未だ教育機会を享受できずにいます(i)。特に女性の教育が立ち遅れており、女性の約8割が読み書きが出来ません(ii)。また小学校に入学ができても、女子の74%・男子の56%は、小学五年生に達する前に学校をドロップアウトしてしまいます(iii)。
問題の一因として、整備が行き届いていない学校環境や、指導力を持った教員が少ないこと、子どもたちの学習レディネスが乏しく、集団での学習環境に不慣れなことが挙げられています。
教室不足の問題から、夏は暑く冬は極寒を迎える中で、多くの子どもたちが屋外での授業を余議なくされています。また、セーブ・ザ・チルドレンの調査で、女子校では教師の60%、男子校においては100%もの教師が、「しつけ」と称して子ども達に何らかの暴力を行使している事がわかりました。就学前の幼児教育は、子どもの人間性と潜在能力を育む過程において非常に重要であるにも関わらず、アフガニスタンでは、都市部のごく限られた地域を除き、幼児期を迎える子どもたちが就学前教育を享受できる機会はあまりありません。
屋外で授業を受ける子どもたち
こうした状況を受け、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは2010年8月からバーミヤン州において、学習環境の改善に向けた事業(ジャパン・プラットフォーム助成)を開始しました。学校校舎の増設といったハード面はもちろん、教員研修や就学前教育、保健教育といったソフト面を含む包括的な事業を実施し、紛争と貧困の影響下にある子どもたちが、教育を通して未来への希望を持ち続けることができるよう活動を進めています。
i. UNAMA, 2010, Annual Report on Protection of Civilians in Armed Conflict 2009
ii. The State of World's Children 2010
iii. HRRAC, 2004, Report Card: Progress on Compulsory Education; Grade 1-9