アフガニスタン(公開日:2010.12.01)
「アフガンに生きる子どもたち」 第九回
アフガニスタンの四季
厳冬の後、純白のアーモンドの花が咲き誇る
夏空の下、黄金色の麦畑が乾いた風に揺られる
アフガニスタンは四季折々の表情が美しい。その自然美が奏でる光景は時に息を呑むほど幻想的で、どこか日本の四季にも似ていて懐かしい。何より、季節の変化を通じて、そこに生きる人びとの暮らしが垣間見えて飽きない。
アフガニスタンの夏は空気が乾燥し、暑い。気温が40度を超えることも珍しくない。しかし、湿気がない分、過ごしやすい。無辺に広がる青空には雲一つなく、上空から降り注ぐ灼熱の太陽光が肌をチクチクと突き刺す。その日差しに照らされ、大地に敷かれた麦畑が黄金色に輝く。乾いた風に揺られて麦の海が波打つ。
この時期、バザールは活気づく。露店の八百屋には、片手では持てないほど大きく実った楕円形のスイカや、パキスタンから輸入された甘いマンゴーが所狭しと山積みされる。小粒だが一粒食べると止められないほど甘くて美味しい種無しブドウもこの季節になるとお目見えする。
空き地や路地で遊ぶ子どもたちの定番は、凧揚げだ。透き通った大空を悠々と舞うその姿を見ていると、ここが紛争による破壊が続くアフガニスタンであることを忘れてしまいそうになる。日が暮れる間際まで、乾いた大地でサッカーボールを追いかける少年たち、水汲みを終え家畜のロバにまたがり帰路に着く少女たち――こうした何気ない光景を目にすると、紛争国といえど、そこには僕たちと変わらない普通の人びとの日常生活の時間が刻々と過ぎていることを改めて教えられる。
秋の訪れは不意にやってくる。9月、昨日まで半袖シャツや素足のままで終日過ごせるほど暑かったにも関わらず、翌日には厚手のフリースを着込むほど冷え込む日が来る。荒涼とした秋が到来し、厳冬の始まりがすぐそこまで来ていることを教えてくれる。
この時期になると収穫シーズンが始まる。たとえば、農村地ではいたるところでジャガイモの収穫が始まり、子どもたちも学校から帰宅すれば親やきょうだい、親戚たちと家族総出で畑でジャガイモを掘り起こす。収穫作物は備蓄されたり、各業者と販売契約がなされ、人びとの暮らしを支える。
11月、学校では学期末試験が行われ、冬休みを前に子どもたちも忙しない。そして、いよいよ4、5ヶ月に及ぶ長い冬を迎える。降り始めの時期は異なるが全国各地で降雪が始まり、山岳地では零下40度まで冷え込むこともある。木くずや薪を燃料とした昔ながらのストーブは柔らかい熱を発し体の芯まで温まることができる。その香ばしい自然の香りも格別だ。見渡す限り雪化粧をしたアフガニスタンは実に美しい。しかし、雪崩や洪水といった自然災害が人びとの暮らしに危険をもたらす季節でもある。
学校が長期休暇に入る冬は、復興援助の一環である教員養成など研修事業を実施する最適の時期でもある。しかし、積雪や冠水で道路が遮断され計画通りに物事が進まないのも常。その土地の気候や地理的条件の理解を深め、見えないリスクを予見することも復興支援には肝要だ。
3月末、雪解けとともに、春が到来する。山の峰にはまだ残雪が輝く中、大地にはアフガン薔薇や、赤や黄、白、紫といった色とりどりの野花が息吹く。日本では、桜の舞う季節に子どもたちが新しい学年を始めるのと同じように、アフガニスタンの子どもたちもまたこの季節、桜そっくりのアーモンドの花のもとで新学期を迎える。各村の通りには登下校する子どもたちで賑わい、その活気で冬の名残は掻き消される。
アーモンドはアフガニスタンでは一般的なもので、バザールでも国産の実が売られている。そのアーモンドはアフガニスタンの長く厳しい雪の季節を耐え、冬の終わる時期にその実を開花させる。
農村地では深紅の花や白の野花が咲き、春の到来を告げる
園田『解放教育』(明治図書)2010年12月号より