アフガニスタン(公開日:2022.07.25)
【アフガニスタン 食料支援】新型コロナウイルス感染症の影響で家計が悪化した世帯への緊急食料支援完了のご報告
アフガニスタンでは、国内で最初の新型コロナウイルス感染症の感染者が2020年2月24日に報告されました。それ以降、感染症は国内全土に拡大し、多くの人々が失業や収入の減少を経験するなど、社会経済に甚大な影響を及ぼしました。
しかし、感染拡大以前から、40年続く紛争や頻発する干ばつなどの自然災害により食料不足の状況にあったアフガニスタンは、新型コロナウイルス感染症の影響を受け始めた2020年3月以降、食料の入手が困難な人口は約360万人増加し¹、社会経済の悪化による収入の減少、食料価格の高騰が相まって、世帯の困窮は深刻化していました²。
事業の対象地域であるアフガニスタン南部カンダハル州は、食料不足の状況が深刻な州の1つであり、2020年11月に発行された総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification: IPC)によると、カンダハル州全体で食料不足の状況は「危機的レベル」のIPC3の状態にあり、特にカンダハル市は、2020年11月〜2021年3月にかけて「緊急レベル」のIPC4に悪化すると予測されていました³。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前には、カンダハル州でIPC4の状態にあった人たちは、農村部と都市部を合わせて7万人弱⁴でしたが、感染拡大後には農村部で13万人以上、都市部で10万人以上⁵に増加しました。
このような状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、アフガニスタンで新型コロナウイルス感染症の影響を受けた世帯への緊急食料支援を実施しました。2021年3月25日から2022年3月31日まで実施した活動について報告します。
この事業では、カンダハル州において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で家計が悪化し食料の入手が難しくなった400世帯に対して、世帯全員の食料を1ヶ月分購入できるよう現金の提供を行いました。現金支援は、2021年11月から2022年3月にかけて、計3回行われました。
現金支援後に行った調査では、ほとんどすべての世帯において現金が食料購入のために使われ、世帯の食料不足の改善に貢献したことが確認されました。
加えて、食料不足の状態にある世帯では、一回あたりの食事の量を減らしたり、1日の食事の回数を減らすなど、健康に影響を及ぼすような負の対処法をとる傾向がありますが、私たちの活動で支援した世帯に、過去7日間でそのような対策をしたか質問したところ、「食事の回数や量を減らす」、「安価で栄養価の低い食料に切り替える」といった対処法については、半数以上の世帯が「とらなかった(0日間)」と回答しました。
今回の現金提供によって、負の対処法を取らなくても多くの世帯の栄養状態の確保ができているということが分かります。支援を利用した人からは、「家庭の食料不足から感じる緊張感やストレスが緩和されたほか、経済的問題が解決できました」といった声や、「現金支援を受けることで、十分な食料と生活必需品を購入することができました」といった声が聞かれました。
そして、現金支援と並行して、母子栄養や新型コロナウイルス感染症予防のための衛生習慣に関する啓発活動も行いました。
栄養の啓発活動では、まず地域の保健ボランティア50人に対して、母子の栄養ケアや衛生習慣に関する研修を実施し、その後、研修を受けた地域保健ボランティアが、3,375人の妊産婦や栄養不良の子どもを持つ養育者に対し、衛生習慣や栄養ケアに関する啓発活動を行いました。
事業の対象地域であるアフガニスタン南部カンダハル州は、食料不足の状況が深刻な州の1つであり、2020年11月に発行された総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification: IPC)によると、カンダハル州全体で食料不足の状況は「危機的レベル」のIPC3の状態にあり、特にカンダハル市は、2020年11月〜2021年3月にかけて「緊急レベル」のIPC4に悪化すると予測されていました³。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前には、カンダハル州でIPC4の状態にあった人たちは、農村部と都市部を合わせて7万人弱⁴でしたが、感染拡大後には農村部で13万人以上、都市部で10万人以上⁵に増加しました。
このような状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、アフガニスタンで新型コロナウイルス感染症の影響を受けた世帯への緊急食料支援を実施しました。2021年3月25日から2022年3月31日まで実施した活動について報告します。
この事業では、カンダハル州において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で家計が悪化し食料の入手が難しくなった400世帯に対して、世帯全員の食料を1ヶ月分購入できるよう現金の提供を行いました。現金支援は、2021年11月から2022年3月にかけて、計3回行われました。
現金支援後に行った調査では、ほとんどすべての世帯において現金が食料購入のために使われ、世帯の食料不足の改善に貢献したことが確認されました。
加えて、食料不足の状態にある世帯では、一回あたりの食事の量を減らしたり、1日の食事の回数を減らすなど、健康に影響を及ぼすような負の対処法をとる傾向がありますが、私たちの活動で支援した世帯に、過去7日間でそのような対策をしたか質問したところ、「食事の回数や量を減らす」、「安価で栄養価の低い食料に切り替える」といった対処法については、半数以上の世帯が「とらなかった(0日間)」と回答しました。
今回の現金提供によって、負の対処法を取らなくても多くの世帯の栄養状態の確保ができているということが分かります。支援を利用した人からは、「家庭の食料不足から感じる緊張感やストレスが緩和されたほか、経済的問題が解決できました」といった声や、「現金支援を受けることで、十分な食料と生活必需品を購入することができました」といった声が聞かれました。
そして、現金支援と並行して、母子栄養や新型コロナウイルス感染症予防のための衛生習慣に関する啓発活動も行いました。
栄養の啓発活動では、まず地域の保健ボランティア50人に対して、母子の栄養ケアや衛生習慣に関する研修を実施し、その後、研修を受けた地域保健ボランティアが、3,375人の妊産婦や栄養不良の子どもを持つ養育者に対し、衛生習慣や栄養ケアに関する啓発活動を行いました。
また、地域保健ボランティアは、啓発活動を行う中で中度急性栄養不良の子どもたちを205人特定し、12日間連続で栄養のある食事を提供しながら、子どもたちの養育者向けに安全で栄養のある食事について情報提供するセッションも実施しました。12日間のセッション完了後には、参加したすべての子どもたちの栄養状態の改善が確認されました。
衛生習慣についても同様に、まず地域で衛生習慣の啓発活動を行う20人の地域衛生プロモーターに対して新型コロナウイルス感染症に特化した衛生習慣や衛生用品の使い方に関する研修を行いました。
その20人の地域衛生プロモーターをリーダーとして、85人の地域衛生プロモーターを育成し、彼らが地域に暮らす3万8,295人に対して新型コロナウイルス感染症に特化した衛生習慣に関する啓発活動を行いました。
地域衛生プロモーターは、啓発活動をする一方、地域で特に脆弱な状態にある世帯、例えば、5歳未満の子どもや妊産婦、障害のある人、高齢者、慢性疾患のある人のいる世帯や、女性が世帯主の世帯などを特定し、4,706世帯を対象に衛生キットを配布しました。衛生キットには、手洗い用せっけんや、水の保管に使えるタンク、生理用品などが入っています。
さらに、このような啓発活動をより強化するため、対象地域内で新型コロナウイルス感染予防に関するポスターを掲示したり、ラジオを通じて感染予防に関するメッセージを1日4回放送したりしました。多くの人の目に入りやすいポスターや、地域の人たちが最も利用しやすいラジオという媒体を使うことで、正しいメッセージを幅広く伝えることができました。
このような啓発活動の結果、事業終了時の調査では、子どもの栄養摂取や母乳育児の方法、手洗いすべきタイミングなどについて、地域の人たちの知識の向上が確認されました。
また、地域における乳幼児の下痢の件数の減少や、野外排泄の減少、適切なタイミングでの手洗いの実践の増加なども確認され、多くの人が得た知識を実践に移していることが示唆されます。
2022年7月時点で、アフガニスタンでは、現在も新型コロナウイルス感染症が拡大しており、また2021年8月にタリバンによる実質的な支配がはじまって以降、深刻化する経済危機の影響を受けてさらに危機的な食料不足の状況にあります。
2022年5月時点では国民の47%にあたる1,970万人が、危機的な食料不足に直面しているといわれています⁶。セーブ・ザ・チルドレンは、このような緊急下において、アフガニスタンの子どもたちやその家族の栄養状態と衛生状況が改善されるよう、これからも支援を継続していきます。
本事業は、皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。
(海外事業部 清水奈々子)
¹OCHA, Afghanistan: Humanitarian Needs Overview (2021), 19 December 2020 p.81
²OCHA, Afghanistan Humanitarian Response Plan(2018-2021), January 2021 revision. p.9
³IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan November 2020, p.9
⁴IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan November 2019, p.6
⁵IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan November 2020, p.9
⁶IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan May 2022, p.1
衛生習慣についても同様に、まず地域で衛生習慣の啓発活動を行う20人の地域衛生プロモーターに対して新型コロナウイルス感染症に特化した衛生習慣や衛生用品の使い方に関する研修を行いました。
その20人の地域衛生プロモーターをリーダーとして、85人の地域衛生プロモーターを育成し、彼らが地域に暮らす3万8,295人に対して新型コロナウイルス感染症に特化した衛生習慣に関する啓発活動を行いました。
地域衛生プロモーターは、啓発活動をする一方、地域で特に脆弱な状態にある世帯、例えば、5歳未満の子どもや妊産婦、障害のある人、高齢者、慢性疾患のある人のいる世帯や、女性が世帯主の世帯などを特定し、4,706世帯を対象に衛生キットを配布しました。衛生キットには、手洗い用せっけんや、水の保管に使えるタンク、生理用品などが入っています。
さらに、このような啓発活動をより強化するため、対象地域内で新型コロナウイルス感染予防に関するポスターを掲示したり、ラジオを通じて感染予防に関するメッセージを1日4回放送したりしました。多くの人の目に入りやすいポスターや、地域の人たちが最も利用しやすいラジオという媒体を使うことで、正しいメッセージを幅広く伝えることができました。
このような啓発活動の結果、事業終了時の調査では、子どもの栄養摂取や母乳育児の方法、手洗いすべきタイミングなどについて、地域の人たちの知識の向上が確認されました。
また、地域における乳幼児の下痢の件数の減少や、野外排泄の減少、適切なタイミングでの手洗いの実践の増加なども確認され、多くの人が得た知識を実践に移していることが示唆されます。
2022年7月時点で、アフガニスタンでは、現在も新型コロナウイルス感染症が拡大しており、また2021年8月にタリバンによる実質的な支配がはじまって以降、深刻化する経済危機の影響を受けてさらに危機的な食料不足の状況にあります。
2022年5月時点では国民の47%にあたる1,970万人が、危機的な食料不足に直面しているといわれています⁶。セーブ・ザ・チルドレンは、このような緊急下において、アフガニスタンの子どもたちやその家族の栄養状態と衛生状況が改善されるよう、これからも支援を継続していきます。
本事業は、皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。
(海外事業部 清水奈々子)
¹OCHA, Afghanistan: Humanitarian Needs Overview (2021), 19 December 2020 p.81
²OCHA, Afghanistan Humanitarian Response Plan(2018-2021), January 2021 revision. p.9
³IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan November 2020, p.9
⁴IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan November 2019, p.6
⁵IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan November 2020, p.9
⁶IPC, Acute Food Insecurity Analysis Afghanistan May 2022, p.1