アフガニスタン(公開日:2022.10.04)
【アフガニスタン 事業開始】現金支援と栄養・子どもの保護に関する啓発活動を通じた世帯の対処能力向上支援
アフガニスタンでは、2021年8月のタリバンによる政変後、約1年が経過しました。しかし、紛争や政情不安、自然災害、新型コロナウィルス感染症の感染拡大など、さまざまな要因により、深刻な人道危機に陥っています。
特に食料については、2021年は過去27年間で最悪ともいえる干ばつが発生したため国内の人口の約半数が総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification: IPC)で「危機的レベル」であるIPC3の状態にあります¹。
事業地のアフガニスタン東部ナンガハル州は、特に食料危機に直面している地域とされており、セーブ・ザ・チルドレンが2021年8月の政変以降にアフガニスタン国内7州を対象に行った調査では、深刻な食料不安の割合が最も高く69.3%にのぼることが分かっています²。
ナンガハル州の中でも都市部の状況はより深刻で、ナンガハル州全体よりも深刻度の高いIPC4の「緊急レベル」とされています³。
都市部は、作物を育てる農地などがないことに加え、食料価格の急激な上昇も見られ、セーブ・ザ・チルドレンが行った調査でも、農村部(86.6%)より都市部(90.7%)で食料を手に入れることへのニーズが高いことが報告されています。
こうした喫緊の食料危機が子どもたちにもたらしている影響は深刻です。私たちの調査でも、過去4週間以内の食事の状況を子どもたちに質問したところ、65.5%の子どもたちが1日2食以下、もしくは不定期な食事しかとれていないと回答し、残りの約3割(33.6%)の子どもたちは、1日3食食べているものの、その多くが栄養価の低い食品や、身体に好ましくない食事を摂っていることが分かっています。
養育者から見て子どもがやせていたり、成長が遅かったりといった、栄養不良の兆候が見られるかという質問では、都市部において60.0%の養育者が「兆候が見られる」と回答し、農村部(47.6%)よりも高い結果となっています。
さらに、こうした背景から児童労働も増加しています。政変以降、以前とは違った形で家族のサポートをする必要があったかという問いに対し、24.1%の子どもが無報酬の仕事(家業の手伝いなど)を行っており、20.2%が報酬のある仕事を行っていると回答しました。また、生計が苦しい時の対処法について養育者に質問したところ、調査した7州において全体の18%、ナンガハル州では55.6%⁵が子どもに仕事をさせると回答しており、児童労働といった子どもへ影響が及ぶリスク(子どもの保護のリスク)が高まっていることが分かります。
これらの現状を踏まえ、セーブ・ザ・チルドレンは2022年8月から、ナンガハル州の都市部を中心に、路上で働く子どもたちやその家族と、紛争や政変、自然災害などの影響を受けている世帯を対象に、(1)食料へのアクセス確保、(2)栄養と子どもの保護に関する知識の向上を目的とした事業を開始しました。この事業では、以下の活動を実施します。
(1)食料確保のための現金支援
食料危機への直接的な支援として、路上で働く子どもたちとその家族、人道危機の影響を受け食料の入手が困難な世帯に対して現金を支援します。現金やバウチャーによる支援は、国連機関が発表したアフガニスタン人道対応計画2022⁶においても、優先される支援形態として言及されています。現金支援後には、効果を確かめるため、その使途や具体的な食事の変化を調査します。
(2)栄養と子どもの保護に関する啓発発動
現金を支援する世帯に対し、母子の健康のための栄養ケアや、子どもの保護に関する啓発活動を実施します。
この啓発活動では、現金支援活動と連携し、推奨される現金の使い道を示すとともに、6ヶ月以上の子どもの食事(離乳食を始める時期、月齢に応じた離乳食の固さや形態、調理の際の衛生環境、お菓子や紅茶、コーヒー、ジュースなど与えるべきでない食材、母乳の継続など)や妊娠中、授乳中の母親の栄養ケア(多様な食材から栄養をとることの重要性など)、発育に重要な栄養素やそれを含む食材、食品群の説明、食材の保管の仕方などについて、イラストや写真、表などを使用したパンフレットやポスターなどの視覚教材を用いて説明します。
また、子どもの保護に関する知識としては、子どもの虐待や搾取からの保護、危険な労働に従事する子どもが直面するリスク、子どもの権利を侵害する行為などについて啓発活動を行います。
この事業を通して、アフガニスタンの子どもたちやその家族の栄養状況の改善のみならず、栄養や子どもの保護に関する知識の向上を目指します。それにより、事業地の人たちが主体性を持ち持続的に自身の対処能力を強化していくことができるよう活動を行っていきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。
(海外事業部 渡会慧)
¹IPC, Afghanistan IPC Acute Food Insecurity Analysis March-November 2022, May 2022, p.1
²Save the Children, Afghanistan Multi-sectoral Needs Assessment, January 2022, p.55
³IPC, Afghanistan IPC Acute Food Insecurity Analysis March-November 2022, May 2022, p.5
⁴WFP, Afghanistan: Countrywide Weekly Market Price Bulletin, 08 June 2022
⁵Save the Childrenが行ったAfghanistan Multi-sectoral Needs Assessmentで収集されたデータセットより引用
⁶OCHA, Afghanistan: Humanitarian Response Plan (2022), January 2022, p.39
特に食料については、2021年は過去27年間で最悪ともいえる干ばつが発生したため国内の人口の約半数が総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification: IPC)で「危機的レベル」であるIPC3の状態にあります¹。
事業地のアフガニスタン東部ナンガハル州は、特に食料危機に直面している地域とされており、セーブ・ザ・チルドレンが2021年8月の政変以降にアフガニスタン国内7州を対象に行った調査では、深刻な食料不安の割合が最も高く69.3%にのぼることが分かっています²。
ナンガハル州の中でも都市部の状況はより深刻で、ナンガハル州全体よりも深刻度の高いIPC4の「緊急レベル」とされています³。
都市部は、作物を育てる農地などがないことに加え、食料価格の急激な上昇も見られ、セーブ・ザ・チルドレンが行った調査でも、農村部(86.6%)より都市部(90.7%)で食料を手に入れることへのニーズが高いことが報告されています。
こうした喫緊の食料危機が子どもたちにもたらしている影響は深刻です。私たちの調査でも、過去4週間以内の食事の状況を子どもたちに質問したところ、65.5%の子どもたちが1日2食以下、もしくは不定期な食事しかとれていないと回答し、残りの約3割(33.6%)の子どもたちは、1日3食食べているものの、その多くが栄養価の低い食品や、身体に好ましくない食事を摂っていることが分かっています。
養育者から見て子どもがやせていたり、成長が遅かったりといった、栄養不良の兆候が見られるかという質問では、都市部において60.0%の養育者が「兆候が見られる」と回答し、農村部(47.6%)よりも高い結果となっています。
さらに、こうした背景から児童労働も増加しています。政変以降、以前とは違った形で家族のサポートをする必要があったかという問いに対し、24.1%の子どもが無報酬の仕事(家業の手伝いなど)を行っており、20.2%が報酬のある仕事を行っていると回答しました。また、生計が苦しい時の対処法について養育者に質問したところ、調査した7州において全体の18%、ナンガハル州では55.6%⁵が子どもに仕事をさせると回答しており、児童労働といった子どもへ影響が及ぶリスク(子どもの保護のリスク)が高まっていることが分かります。
これらの現状を踏まえ、セーブ・ザ・チルドレンは2022年8月から、ナンガハル州の都市部を中心に、路上で働く子どもたちやその家族と、紛争や政変、自然災害などの影響を受けている世帯を対象に、(1)食料へのアクセス確保、(2)栄養と子どもの保護に関する知識の向上を目的とした事業を開始しました。この事業では、以下の活動を実施します。
(1)食料確保のための現金支援
食料危機への直接的な支援として、路上で働く子どもたちとその家族、人道危機の影響を受け食料の入手が困難な世帯に対して現金を支援します。現金やバウチャーによる支援は、国連機関が発表したアフガニスタン人道対応計画2022⁶においても、優先される支援形態として言及されています。現金支援後には、効果を確かめるため、その使途や具体的な食事の変化を調査します。
(2)栄養と子どもの保護に関する啓発発動
現金を支援する世帯に対し、母子の健康のための栄養ケアや、子どもの保護に関する啓発活動を実施します。
この啓発活動では、現金支援活動と連携し、推奨される現金の使い道を示すとともに、6ヶ月以上の子どもの食事(離乳食を始める時期、月齢に応じた離乳食の固さや形態、調理の際の衛生環境、お菓子や紅茶、コーヒー、ジュースなど与えるべきでない食材、母乳の継続など)や妊娠中、授乳中の母親の栄養ケア(多様な食材から栄養をとることの重要性など)、発育に重要な栄養素やそれを含む食材、食品群の説明、食材の保管の仕方などについて、イラストや写真、表などを使用したパンフレットやポスターなどの視覚教材を用いて説明します。
また、子どもの保護に関する知識としては、子どもの虐待や搾取からの保護、危険な労働に従事する子どもが直面するリスク、子どもの権利を侵害する行為などについて啓発活動を行います。
この事業を通して、アフガニスタンの子どもたちやその家族の栄養状況の改善のみならず、栄養や子どもの保護に関する知識の向上を目指します。それにより、事業地の人たちが主体性を持ち持続的に自身の対処能力を強化していくことができるよう活動を行っていきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。
(海外事業部 渡会慧)
¹IPC, Afghanistan IPC Acute Food Insecurity Analysis March-November 2022, May 2022, p.1
²Save the Children, Afghanistan Multi-sectoral Needs Assessment, January 2022, p.55
³IPC, Afghanistan IPC Acute Food Insecurity Analysis March-November 2022, May 2022, p.5
⁴WFP, Afghanistan: Countrywide Weekly Market Price Bulletin, 08 June 2022
⁵Save the Childrenが行ったAfghanistan Multi-sectoral Needs Assessmentで収集されたデータセットより引用
⁶OCHA, Afghanistan: Humanitarian Response Plan (2022), January 2022, p.39