イエメン(公開日:2017.01.26)
閉鎖の危機に瀕するイエメンの病院
−保健医療システムの崩壊により800万人の子どもたちが医療サービスを受けることができず、取り残されている−
セーブ・ザ・チルドレンは、昨年12月に作成した最新の報告書「生き残るために闘う:イエメン保健医療システムの崩壊」で、乳幼児死亡率の増加やイエメンの保健医療システムが崩壊の危機に瀕していると訴えます。
少なくとも1,219人の子どもたちが、紛争を直接的な原因として命を落としているほか、慢性的な医薬品や医療職員の不足によって、さらに年間1万人もの防ぐことができた死が引き起こされており、直接の攻撃で命を落とす以外にも、紛争は間接的にも子どもたちに大きな影響をもたらしていると報告しています。
270ヶ所以上の保健医療施設が戦闘の被害を受けていて、3,500ヶ所ある施設の半数以上が閉鎖、もしくは、一部分のみ機能している状態だと考えられています。そのため800万人もの子どもたちが基本的な医療を受けることができない状況が引き起こされていると国連は伝えています。
また、多くの医師や職員がイエメンを離れたり、故郷から避難を余儀なくされ国内避難民となり、国全体で資格あるスタッフの不足が深刻な状況です。
セーブ・ザ・チルドレンのイエメン事務所代表エドワード・サンティアゴは、「戦争が起こる前でさえも、何万人もの子どもたちが予防可能な病気によって命を落としていました。しかし、現在、状況はさらに悪化し、毎週およそ1,000人の子どもたちが、下痢や栄養不良、呼吸器感染症のような予防できる病気で亡くなっています。戦争の混乱により、親たちが仕事や生計手段を失うことで、ローンを組む人もいる一方で、多くの人々は、病院に行く交通費をまかなうために、貴金属や乗り物、ガスボンベや土地といった財産や持ち物を売らなければならないと話していました。病院の施設にたどり着いても、すぐに必要な薬の代金を支払えない場合が多いだけでなく、多くの親たちはそこに命を救うために必要な薬がないことに気付くのです」と語ります。
イエメンの首都サヌアにあるアルサビーン病院の課長代理ヒレル・モハメド・アルバハリさんは、2015年3月に戦争が始まって以来、ほとんどの医薬品の価格は300パーセント値上がりし、病院にとっても、大半の家庭にとっても治療は手の届かないものになったと考えています。ヒレル・モハメド・アルバハリさんは、次のように話します。
「薬も医師や従業員の給料も足りません。私たちは、患者さんが支払うわずかな治療費による収入に頼っています。しかし、もし病院のメンテナンスや追加の医療器具が必要になっても、私たちにはお金がありません。封鎖のため医療器具も手に入りません。9ヶ月未満の乳幼児のみICU(集中治療室)に受け入れ可能で、それ以上の月齢の乳幼児たちのための場所はありません。この地域で唯一の小児科病院ですが、ICUは20床しかありません。」
ニーズが増える一方で、わずかなベッドと保育器しかないため、多くの乳幼児や子どもたちは医療施設から断られたり、あるいは、アルサビーン病院のように、場所や隔離施設がないために、はしかのような感染力の強い感染症にかかった子どもたちと同じ病室に収容されています。
セーブ・ザ・チルドレンは、切迫した人道危機に対し、国内60ヶ所の保健医療施設に必要な機器、医薬品や、必要なトレーニングを提供するとともに、緊急栄養治療を行う移動医療チームを派遣しています。崩壊しつつある保健医療システムへの支援は、年間40万人の人々に届き、そのうち半数以上は子どもたちです。
そして、私たちは、紛争に関わる当事者に対し、必要な商業物資や人道支援物資の輸入障壁を取り除くこと、そして、イエメン全土において、迅速で、制限のない人道支援のアクセスを訴えています。また、全ての当事者は、子どもたちを殺害したり重傷を負わせること、病院への攻撃、戦闘グループによる子どもの徴兵や搾取をしないなどの国際人道法と国際人権法にもとづく義務を遵守し、子どもに対する重大な人権侵害を終わらせるための手段を早急にとるべきだと訴えます。