イエメン(公開日:2018.10.16)
イエメンの子どもたちのメンタルヘルス―長期にわたり暴力に晒される生活
2018年8月9日、イエメン北部サアダ県で、多くの子どもを乗せた遠足から戻る途中のスクールバスが空爆を受け、子ども40人が犠牲になりました。ハリッドさん(12歳)は、このスクールバスに乗車しており、ひどく負傷し、生活には車椅子が必要となりました。さらに、このときの恐ろしい経験により、苦痛を感じ、何も考えられなくなっています。
ハリッドさんは、次のように話します。
「私たちは、今からみんなで遊ぼうとしているところで、幸せでした。市場に到着したとき、そこにはたくさんの人がいて、いつもと変わりありませんでした。そこで、攻撃があり、友人がいなくなってしまったのです。友人の痛みと、自分自身の痛みを感じます。それ以外何も感じません。紛争が終わることを望みます。そうすれば勉強を続けることができ、自分の人生を築くことができ夢もかなえることができます。はやく紛争が終わってほしいです。そうすれば子どもたちも、女性も男性も殺されることがなくなります。彼らが何の罪を犯したというのでしょうか」
ハリッドさんは、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフに対して、空爆があった日から、夜眠れなくなり、また、上空を飛ぶ航空機の音を聞くと恐怖を感じるようになったとも話しています。
現在、イエメンは、世界で最も危険な場所の一つであり1、イエメンの子どもたちは、これまでの生涯において、すでに一人当たり1万8,000回以上の空爆を経験しています2。 現在も続く残虐な行為は、子どもたちが絶えず極度の暴力に晒されていることを意味し、精神的打撃を受ける危険性をさらに高めています。
イエメンの子どもたちは、友人や家族が目の前で犠牲になったり、崩壊する家の瓦礫の下に埋まるのを見てきました。また、学校や病院が標的にされ、破壊されるのを目撃し、最低限の食料や医薬品を手に入れることができず、ふつうの生活を奪われている状況が続いています。 長期にわたる紛争やストレス、先行きが不透明な状況に置かれることにより、子どもたちは非常に不安定になり、この心理的不安は生涯にわたって継続してしまう恐れがあります。
一方、イエメンでは、精神的苦痛を抱えた子どもたちのためのメンタルヘルスのサービスや十分な支援は、ほとんどなく、保健医療施設の半数以上は、閉鎖か、一部しか機能していない状況です3。世界保健機関(WHO)によると、2017年に、イエメンで働く精神科医は40人しかおらず、これは、約70万人に対して精神科医が1人という割合になります4。また、イエメンの社会では、メンタルヘルスの問題に苦しんでいる子どもたちが抱える課題と必要な支援について認識や理解が進んでいないことが、問題をさらに深刻にしています5。
セーブ・ザ・チルドレンは、メンタルヘルスと心理社会的支援が強化されない限り、紛争を経験した世代の子どもたちが長期的にわたり精神的打撃を受ける可能性があると警鐘を鳴らします。 適切な支援があれば、そうした影響を緩和し、治癒することが可能になります。
2018年に発表された、サヌアに暮らす約1,000人の子どもたちを対象に実施したインタビュー調査によると、子どもたちの約8割が、紛争により深刻な精神的影響を受けている兆候を示していることが分かっています6。また、この調査では、紛争が始まってから最初の1年で、家族は、子どもたちの夜尿や、子どもたちが一人でいることを嫌がったり、自宅から離れたがらなくなったことに気づき始めたといいます。
セーブ・ザ・チルドレンのメンタルヘルス・心理社会的支援 地域テクニカル・アドバイザーのケリー・マクブライドは、イエメンの人口のほぼ半分を占める子どもたちは、数え切れないほどのストレス要因に晒されており、発達段階を考えると、子どもたちはこうした危機下で非常に脆弱な状態にあると述べるとともに、短期的にも長期的にも子どもたちのメンタルヘルスと心理社会的ウェルビーイング(健やかな成長)に深刻な影響を及ぼす可能性があると訴えます。
さらに、セーブ・ザ・チルドレン イエメン事務所代表ターメル・キロロスは、すべての紛争当事者に対して、子どもに対する重大な暴力を防止するため、いますぐ措置を講ずるように訴えるとともに、この紛争を終わらせるための平和的かつ政治的な解決を求めています。
セーブ・ザ・チルドレンの専門家は、スクールバスへの空爆によって影響を受けたハリッドさんや他の子どもたちへ集中的な心理社会的支援を行うとともに、家族の病院までの往復の交通費を支援しています。セーブ・ザ・チルドレンは、2018年に、メンタルヘルスと心理社会的支援を通じて1万2,500人以上の子どもたちへ支援を届けていますが、さらに多くの子どもたちへ支援を届ける必要があります。
1 https://www.savethechildren.net/waronchildren/pdf/waronchildren.pdf
2 https://mailchi.mp/f47262abc07d/september2018-yemen-data-project-update-389115
3 http://www.emro.who.int/media/news/survey-reveals-extent-of-damage-to-yemens-health-system.html
4 https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/FINAL%20WHO%20ANNUAL%20REPORT%2C%2027%20March%202018...pdf
5 http://sanaacenter.org/publications/analysis/5119
6 https://carpo-bonn.org/wp-content/uploads/2018/03/10_carpo_brief_final.pdf
7 https://www.savethechildren.org.uk/content/dam/global/reports/emergency-humanitarian-response/invisible-wounds.pdf
ハリッドさんは、次のように話します。
「私たちは、今からみんなで遊ぼうとしているところで、幸せでした。市場に到着したとき、そこにはたくさんの人がいて、いつもと変わりありませんでした。そこで、攻撃があり、友人がいなくなってしまったのです。友人の痛みと、自分自身の痛みを感じます。それ以外何も感じません。紛争が終わることを望みます。そうすれば勉強を続けることができ、自分の人生を築くことができ夢もかなえることができます。はやく紛争が終わってほしいです。そうすれば子どもたちも、女性も男性も殺されることがなくなります。彼らが何の罪を犯したというのでしょうか」
ハリッドさんは、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフに対して、空爆があった日から、夜眠れなくなり、また、上空を飛ぶ航空機の音を聞くと恐怖を感じるようになったとも話しています。
現在、イエメンは、世界で最も危険な場所の一つであり1、イエメンの子どもたちは、これまでの生涯において、すでに一人当たり1万8,000回以上の空爆を経験しています2。 現在も続く残虐な行為は、子どもたちが絶えず極度の暴力に晒されていることを意味し、精神的打撃を受ける危険性をさらに高めています。
イエメンの子どもたちは、友人や家族が目の前で犠牲になったり、崩壊する家の瓦礫の下に埋まるのを見てきました。また、学校や病院が標的にされ、破壊されるのを目撃し、最低限の食料や医薬品を手に入れることができず、ふつうの生活を奪われている状況が続いています。 長期にわたる紛争やストレス、先行きが不透明な状況に置かれることにより、子どもたちは非常に不安定になり、この心理的不安は生涯にわたって継続してしまう恐れがあります。
一方、イエメンでは、精神的苦痛を抱えた子どもたちのためのメンタルヘルスのサービスや十分な支援は、ほとんどなく、保健医療施設の半数以上は、閉鎖か、一部しか機能していない状況です3。世界保健機関(WHO)によると、2017年に、イエメンで働く精神科医は40人しかおらず、これは、約70万人に対して精神科医が1人という割合になります4。また、イエメンの社会では、メンタルヘルスの問題に苦しんでいる子どもたちが抱える課題と必要な支援について認識や理解が進んでいないことが、問題をさらに深刻にしています5。
セーブ・ザ・チルドレンは、メンタルヘルスと心理社会的支援が強化されない限り、紛争を経験した世代の子どもたちが長期的にわたり精神的打撃を受ける可能性があると警鐘を鳴らします。 適切な支援があれば、そうした影響を緩和し、治癒することが可能になります。
2018年に発表された、サヌアに暮らす約1,000人の子どもたちを対象に実施したインタビュー調査によると、子どもたちの約8割が、紛争により深刻な精神的影響を受けている兆候を示していることが分かっています6。また、この調査では、紛争が始まってから最初の1年で、家族は、子どもたちの夜尿や、子どもたちが一人でいることを嫌がったり、自宅から離れたがらなくなったことに気づき始めたといいます。
セーブ・ザ・チルドレンのメンタルヘルス・心理社会的支援 地域テクニカル・アドバイザーのケリー・マクブライドは、イエメンの人口のほぼ半分を占める子どもたちは、数え切れないほどのストレス要因に晒されており、発達段階を考えると、子どもたちはこうした危機下で非常に脆弱な状態にあると述べるとともに、短期的にも長期的にも子どもたちのメンタルヘルスと心理社会的ウェルビーイング(健やかな成長)に深刻な影響を及ぼす可能性があると訴えます。
さらに、セーブ・ザ・チルドレン イエメン事務所代表ターメル・キロロスは、すべての紛争当事者に対して、子どもに対する重大な暴力を防止するため、いますぐ措置を講ずるように訴えるとともに、この紛争を終わらせるための平和的かつ政治的な解決を求めています。
セーブ・ザ・チルドレンの専門家は、スクールバスへの空爆によって影響を受けたハリッドさんや他の子どもたちへ集中的な心理社会的支援を行うとともに、家族の病院までの往復の交通費を支援しています。セーブ・ザ・チルドレンは、2018年に、メンタルヘルスと心理社会的支援を通じて1万2,500人以上の子どもたちへ支援を届けていますが、さらに多くの子どもたちへ支援を届ける必要があります。
1 https://www.savethechildren.net/waronchildren/pdf/waronchildren.pdf
2 https://mailchi.mp/f47262abc07d/september2018-yemen-data-project-update-389115
3 http://www.emro.who.int/media/news/survey-reveals-extent-of-damage-to-yemens-health-system.html
4 https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/FINAL%20WHO%20ANNUAL%20REPORT%2C%2027%20March%202018...pdf
5 http://sanaacenter.org/publications/analysis/5119
6 https://carpo-bonn.org/wp-content/uploads/2018/03/10_carpo_brief_final.pdf
7 https://www.savethechildren.org.uk/content/dam/global/reports/emergency-humanitarian-response/invisible-wounds.pdf