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イエメン
(公開日:2023.11.17)

【イエメン 教育と子どもの保護支援ケースストーリー】国内避難民キャンプにおけるノンフォーマル教育支援と子どもの保護に関する問題への対応能力強化支援

 
2022年8月4日から2023年8月3日にかけて、セーブ・ザ・チルドレンは、ラヒジュ県で、国内避難民キャンプにおけるノンフォーマル教育支援と、地域の子どもの保護に関する問題の対応能力強化事業を実施しました。 (事業報告ブログはこちら )

教育支援を受けたカリードさんのケースストーリーをご紹介します。

カリードさんは14歳の男子です。2018年から紛争のため避難生活を送り、現在は家族と一緒に事業地であるラヒジュ県の国内避難民キャンプで生活しています。

カリードさんは学習支援センターへの通学を始めた頃、家庭の問題もあり、学習支援センターへ通学するモチベーションが上がらず、その結果、同級生や教員とも上手く関係を築くことができず、衝突することもありました。

そのような中、学習支援センターの責任者であるリームさんがカリードさんのことを気にかけたことで事態が好転しました。

リームさんを含めた教員の尽力によって、カリードさんは教育の重要性と教育がもたらす可能性について理解し始め、学習に力を入れるようになりました。

カリードさんは教育に興味を持てなかった子どもから、国内避難民キャンプにおける人々にとっての光になったのです。
「私には3人の姉妹と2人の兄弟がいます。ホデイダ県に住んでいましたが、2018年に紛争のため、避難を余儀なくされ、ラヒジュ県に移動しました。

学習支援センターでの通学を始めたころ、教室はただのテントでした。当初は週5日のうち2日間しか通学せず、残りの日は家計を助けるため早朝から夕方までプラスチックや鉄ゴミを拾って働いていました。

 
授業中ノートをとるカリードさん

一年前恐ろしいことが起きました。私と同じようにゴミ拾いをしていた子どもが鉄ゴミを見つけて拾おうとしたところ、それが爆発して、彼は右手を失いました。

その後、私は働き続けることが怖くなりました。しかし、お金が必要だったので、他に選択肢はありませんでした。ゴミ拾いに出かける度に、その子と彼に起こったことが頭をよぎりましたが、同時に家族のことも考え、家庭を手伝わなければならないとも思っていました。

しかし、似たような事故がその後も発生し、私は学習支援センターへ通学し、より良く行動し、自分の人生を変える必要があると感じるようになりました。

去年、学習支援センターの教員、特にリームさんは大変助けになってくれました。教員の方々には本当に迷惑をかけたと思います。

しかし、彼らは私のことをあきらめませんでした。いつも気にかけてくれ、話しかけてくれました。彼らのおかげで自分はもっとできると思えるようになりました。

いつの日か私は校長となって、彼らが私を助けてくれたように、私も困難な時期を過ごしている子どもたちを助けていきたいです。

今では私は生徒会の一員で、授業に欠席しがち、あるいは素行不良な生徒に注意を払うようにしています。おかしなことに私も以前はそのような生徒の一人でした。また、私はさらに学力を伸ばそうと補習授業へ参加することを希望しましたが、成績がすでに良いということで参加がかないませんでした。うれしくもありましたが、少し寂しくもあります。長い道のりを経て、今ではどんな課題も乗り越えられると感じています。

ここにいる多くの子どもたちは早朝から生計を立てるためにゴミ拾いなどをしています。早く始めなければタイミングを逃し、お金を受け取れないのです。

そのため多くの子どもが学校に通えないのです。私は学習支援センターがとても好きです。私にとっては単なる学びの場所ではありません。学校にいることで安全だと感じるのです。

家族がお金を必要としているという理由で学校に来なくなる友だちを見るのはつらいことです。友だちが傷つくのを見ると学校がいかに重要かを考えさせられます。

私たちがどこから来たとしても、私たちにはチャンスを得る権利があります。学習支援センターは私たちの人生を変えて、貧困から抜け出すための一助となってくれるのです。」


授業中ホワイトボードへ回答するカリードさん

カリードさんの母親のハナンさんはこう話します。
「ホデイダで生活していた頃は良かったです。しかし紛争により、私たちの家は破壊され、安全とは言えなくなりました。

ラヒジュ県に避難はしましたが、ほかにも多くの避難民がいる中で生計を立てるのは簡単ではありませんでした。父親は他の町へ出稼ぎに行きましたがお金が送られてくることは無く、私は収入が無かったため、子どもたちを学校に通わせるのを諦めざるを得ませんでした。

息子のカリードは学校や避難民キャンプに馴染むのに苦労しました。キャンプの人々はよく私たちのテントに来て彼を心配したり、彼の挑発的な態度に色々言ったりしました。

子どもたちのことは心配でしたが、私自身も大変な時間を過ごしていて、時々精神的に追い込まれることもありました。しかし学習支援センターからリームさんが来てくれて、カリードに関わってくれるようになりました。

リームさんは私にいつも怒鳴ったり、怒ったりしないように諭してくれました。話すことと理解することが重要なのです。彼女のおかげでカリードは前向きになり、誰かと争ったり、授業を欠席したりすることなく学習支援センターに通うようになったのです。

生徒会の一員となることでカリードは変わったと思います。目的意識が芽生え、自分が重要であると感じるようになったようです。彼を信じてくれる人々ができたおかげで事態が好転しました。

私たちが受けた支援と理解に本当に感謝しています。生活は大変困難ですが、少し助けてもらうだけで、何とか乗り越えて、より良い日々がこの先にあると思えるようになりました。」

 
教員から指導を受けるカリードさん

また、カリードさんの教員のリームさんはこう話しました。
「カリードさんは学ぶ意欲が高い子どもでした。しかし、困難な生活状況により、助けや理解を得ることを求めて注目を浴びるために悪い振る舞いをしてしまっていました。両親の間で板挟みになることもあったようです。

私は、彼の家族との関わり方を観察していました。両親はともに彼を愛していましたが、家族や両親が抱える問題がカリードさんに大きく影響を与えていました。

ある日学習支援センターの教員へ彼が悪態をついたことがありました。彼と話してみると家庭でつらいことがあったようでした。

この出来事は彼の学習支援センターでの行動が両親の問題とリンクしていることを象徴していました。彼の母親は父親に対する不満の表現方法の一つとして彼を学校に登校させないようにしていたようです。この状況を懸念し、カリードさんのために仲介する必要があると感じました。

両親との話し合いの際、私は家庭での問題とカリードさんの教育を切り分けて考えるように訴えました。教育は彼の将来にとって強力な道具であり、彼の通学を認めないことは長期的な悪影響を及ぼすということに気づいてほしかったのです。

幸運なことに何回かの話し合いを経て、彼の母親はカリードさんが教育を受け続けることの意義を理解してくれました。

カリードさんの状況と彼が抱える問題について把握し、私はほかの担当教員へ彼が必要とするサポートを提供するように求めました。その後のカリードさんの変化には大変胸が熱くなりました。

宿題を見せてつまずいている点についてアドバイスを求めてくるようになり、学習してわかったことを共有してくれるようになりました。彼の学習成果、特に数学における成果を見ていると、ほんの少しの理解と支援で達成できることがあると感じさせられます。

カリードさんの成長を見ることは私の仕事において最も喜ばしいことの一つです。このことは特に困難に直面する生徒に対して、個別に注意を払うことの重要性を思い出させてくれます。

私はこのような子どもたちをサポートし、彼らが必要なリソースやケアをより輝かしい未来のために提供し続けたいと思います。」


学習支援センターにて授業を受けるカリードさん

セーブ・ザ・チルドレンは、紛争下においても、子どもたちが暴力などから守られ、安心・安全な環境で学習を継続することができるようイエメンでの支援を継続していきます。

本事業は皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。

(海外事業部 小山光晶)

 

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