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イエメン
(公開日:2024.04.26)

【イエメン】国内避難民キャンプにおけるノンフォーマル教育支援

 
イエメンは、9年以上にわたる紛争により国民の3人に2人にあたる1,820万人が緊急・人道支援を必要としており、そのうち約半数が子どもです1


学習支援センターで補習授業を受ける生徒

こうした状況で、子どもたちへの教育は大きな課題になっています。長期間にわたる紛争の影響により、2023年10月時点で約2,400の学校が空爆により損壊するか、軍事目的あるいは家を追われた人々の避難所など学校以外の用途で使用されています2
 

空爆で破壊された学校

また、経済状況の悪化により、多くの世帯が子どもたちの学習に必要な学用品を購入できなくなりました。2016年からは教員への給与の支払いも不定期となり、2023年には約19万3,000人の教員が給与を受け取れていませんでした3

特に、紛争が激しい地域から国内の他の地域に逃れてきた国内避難民の子どもたちは、世帯収入の減少や頻繁な避難などにより、学習機会を得にくい状況にあり4、避難生活を送っていない子どもたちと比較して、学校を中退するリスクが2倍になることが指摘されています5

これらの要因により、イエメン全土で現在450万人を超える子どもたちが学校に通うことができていません6。これは10人中4人の子どもが学校に通っていないことを意味しています7

多くの子どもが教育を受けられない状況のなか、ユニセフが実施した子どもの読解力を測る調査では、簡単な文章を読むことのできる子どもはイエメン国内に5%しかいないことが報告されています8

事業対象地である南部ラヒジュ県では、多くの公立学校がすでに定員を超えて生徒を受け入れており、国内避難民の子どもが新たに編入する余地がほとんどなくなっています。

また、仮に受け入れることができたとしても、公立学校は国内避難民キャンプから離れた位置にあり、保護者は子どもの長距離の通学が危ないと考え、公立学校に通うのを許可しないといったケースもあります。
 

ラヒジュ県はイエメン南部に位置する湾岸地域です
(出典: Berghof Foundation and Political Development Forum Yemen, Local Governance in Yemen: Resource Hub)

こうした状況を受け、2022年8月4日から、セーブ・ザ・チルドレンは、ラヒジュ県で国内避難民キャンプにおけるノンフォーマル教育支援事業を1年間実施しました。(これまでの活動報告はコチラ

その後、2023年9月24日から2024年6月30日にかけて、現地パートナー団体のSOUL for Developmentと協働して新たに事業を実施しています。

この活動では、国内避難民キャンプにある2ヶ所の学習支援センターの運営を行い、地域から採用した教員が授業をすることで、子どもたちが教育を受けられるように支援しています。

授業が円滑に行われ、生徒たちが学習に集中できるように、学習支援センターに登録した818人の生徒へ筆記用具やノートが入った学習キットを、そして採用した55人の教員には出席簿やノートなどが入った授業用キットを配布しました。
 

学習用キットを受け取った子ども

また、長らく教育から離れてしまったことで授業についていけないなど、学習に困難を抱えている160人の生徒に対して、補習授業を実施しています。

さらに子どもたちが授業外で取り組みたい活動について子どもたちの意見を聞き、さまざまな課外活動を実施しています。
 

課外活動にて絵を描く生徒

また、国内避難民キャンプで避難生活を送る人たちの教育への関心を高めるために、保護者会や生徒会のメンバーが中心となり、教育の重要性を伝える活動を実施しています。
 

保護者会メンバーによる地域住民へ教育の重要性を伝える活動の様子

さらに、今回の事業では新たな取り組みとして、一部の保護者に対する補習授業を実施しています。

活動地域では、子どもたちの保護者も教育を受けておらず、教育への関心が低いという問題が保護者会から提起されました。

保護者の学力向上を図りつつ、授業を受けた保護者の教育に対する考え方や行動がどのように変化するのか着目しながら日々の授業を実施しています。


 授業に参加する保護者の様子

最後に、この事業で支援を受けているフセインさんのケースストーリーをご紹介します。
フセインさんは国内避難民キャンプに逃れてきた子どもの1人です。学習支援センターへ通学していましたが、ある時左足を骨折してしまい、通学できなくなりました。

再び教育を受けることを夢見ていましたが、父親は日々の家計を支えることに手一杯で、フセインさんが学習支援センターに復学するサポートを行うことが難しい状況でした。

骨折のため教育を受けるという夢がかなわなくなると思い、心理的にも徐々に落ち込んでいきました。

セーブ・ザ・チルドレンは、パートナー団体(SOUL for Development)と連携し、学習支援センターの教員から状況を聞き、フセインさんの家族に対し、教育の重要性を伝え、学習キットを配布するとともに、フセインさんに対する心理的なサポートも行うことで、復学できるようにしました。

当初は学習支援センターへ向かう足取りが重かったものの、徐々にやる気を取り戻していき、今では毎日教室の最善列に座り、集中して黒板を見ながらペンでノートをとっています。
 

学習キットを受領したフセインさん

 
学習支援センターに通学するフセインさん


本事業は皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。


(海外事業部 小山光晶)

1 OCHA, Yemen Humanitarian Needs Overview 2024, p.4.
2 OCHA, Yemen Humanitarian Needs Overview 2024, p.42.
3 OCHA, Yemen Humanitarian Needs Overview 2024, p.42.
4 OCHA, Multi-Cluster Location Assessment (MCLA), p.28.
5 Save the Children Hanging in the Balance: Yemeni Children’s Struggle forEducation 2024
6 OCHA, “Yemen Humanitarian Needs Overview 2024, p.42.
7 Save the Children “Hanging in the Balance: Yemeni Children’s Struggle forEducation 2024”, p4.
8 UNICEF “Impact of Education Disruption: Middle East and NorthAfrica - March 2022”, p.1


 

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