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イエメン
(公開日:2022.09.08)

【イエメン ラヒジュ県】国内避難民キャンプにおけるノンフォーマル教育支援と子どもの保護に関する問題への対応能力強化支援を開始しました

 
イエメンでは、7年以上にわたる紛争により国民の3分の2にあたる2,340万人が緊急・人道支援を必要としており、そのうち910万人は子どもです¹。


学習支援センターで勉強に集中する生徒

イエメンにおいて子どもたちへの教育は大きな課題になっています。長期間にわたる紛争の影響により、約2,900の学校が空爆により損壊などの被害を受けるか、学校以外の用途で使用されています²。

また、経済状況の悪化により、多くの世帯が子どもたちの学習に必要な学用品を購入できなくなりました。2016年からは教員への給与の支払いも不定期となっており、約17万2,000人の教員が現在給与を受け取れていない状況です³。

特に、紛争が激しい地域から国内の他の地域に逃れてきた国内避難民の子どもたちは、世帯収入の減少や頻繁な移動などにより学習機会を得にくい状況にあり⁴、初等教育の中退率は約30%にのぼります⁵。

これらの要因により、イエメン全土において240万人を超える子どもたちが教育を受けられていません⁶。多くの子どもが教育を受けられない状況のなか、ユニセフが実施した子どもの読解力を測る調査では、簡単な文章を読むことのできる子どもはイエメン国内に5%しかいないことが報告されています⁷。


損壊した教室の様子

今回支援を行う南部ラヒジュ県にある多くの公立学校では、すでに定員を超えて生徒を受け入れており、国内避難民の子どもが新たに編入する余地がほとんどなくなっています。また、仮に受け入れることができたとしても、公立学校は国内避難民キャンプから離れた位置にあり、保護者は子どもが長距離を歩いて学校に通うのが危ないと考え、公立学校に通うのを許可しないといったケースもあります。

また、紛争が始まって以降、1万人以上の子どもたちが犠牲になるか、負傷しています⁸。新型コロナウイルス感染症の流行により、社会経済状況はさらに悪化し、子どもたちをさまざまな暴力などから守る(子どもの保護)支援の必要性は一層高まっています。

国連難民高等弁務官所事務所(UNHCR)が2021年に各世帯を対象に実施した調査によると、精神的苦痛、女性や女子への暴力といったリスクを抱えている世帯は2020年では20%でしたが、2021年には32%に増加し、加えて、家族との離散、児童労働、ネグレクト、虐待や搾取などに関するリスクを抱えた子どもも16%から23%へ増加しました⁹。

そして、国内避難民の中には、大人の付き添いがない子どもや主たる養育者と離ればなれになった子どもが18%います¹⁰。こうした状況にある子どもたちは、緊急下で守ってくれる人がいないため暴力に晒されるリスクが高くなっており¹¹、子どもの保護の支援も必要です。

こうした状況を受け、2022年8月4日より、セーブ・ザ・チルドレンは、ラヒジュ県で、国内避難民キャンプにおけるノンフォーマル教育支援と、地域の子どもの保護に関する問題の対応能力強化事業を開始しました。

この事業では、国内避難民キャンプにある2つの学習支援センターの運営を行い、地域から採用した教員が授業を提供することで子どもたちが教育を受けられるように支援します。

また、教育の質が担保できるよう、教員に対しては緊急下における教育のほか、暴力を用いない指導方法や心理的な問題を抱えた子どもたちへの対応方法などに関する研修を行います。同時に、学習サークルを形成し、教員同士が授業の進め方について良い点や改善点を共有できるように支援します。

さらに、長らく教育から離れてしまったことで授業についていけないなど学習に困難を抱えている生徒に対しては、補習授業を実施します。加えて子どもたちが学習に集中できるようペンやノートなどの学用品を配布し、学校へは授業を行うために必要な授業用備品を提供します。

セーブ・ザ・チルドレンは、子どもや保護者の声を活動に活かすことを大切にしています。
学習支援センターが、子どもたちにとって安心・安全な環境になるよう、生徒会と保護者会による学習支援センター内部や周辺の環境に関する安全計画の作成と実施を支援するとともに、子どもたちの意見を聞きながら、子どもたち主体で子どもたちが実施したい課外活動ができるよう支援していきます。

そのほか、学校での衛生対策が万全になるよう子どもたちに対して感染症予防に関する啓発活動を実施し、石けんなどを含む衛生用品の提供などを行います。


学習支援センターでの授業の様子

子どもの保護の支援では、社会福祉労働省に勤務するソーシャルワーカーに対して研修を行うことで、適切に支援を必要としている子どもを特定し、必要な支援につなげられるようにします。

そして、教員や保護者、地域の人たちから構成された子どもの保護委員会が、ソーシャルワーカーに対するサポートができるよう研修を実施し、地域における子どもが直面する問題について話し合う会合を行います。

このような活動を通して、子どもたちが暴力などから守られ、安心・安全な環境で学習を継続することができるよう支援していきます。

本事業は皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。

(海外事業部 小山光晶)

¹OCHA, “Humanitarian Response Plan Yemen 2022”, p.12.
²OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2022”, p.58,9.
³OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2022”, p.58.
⁴OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2022”, p.59.
⁵UNICEF, “Food Price Developments Analysis in Yemen and the Associated Socio-Economic Impact (March 2022)”, p.34
OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2022”, p.58.
UNICEF “Impact of Education Disruption: Middle East and North Africa - March 2022”, p.1
⁸OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2022”, p.75.
⁹UNHCR, “UNHCR Yemen Operational Update, covering the Period 30 November - 9 December 2021
¹⁰UNHCR, “UNHCR Yemen Operational Update, covering the Period 30 November - 9 December 2021"
¹¹OCHA, “Humanitarian Needs Overview Yemen 2022”, p.75.



 

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