イエメン(公開日:2024.05.20)
【イエメン食料事業 完了報告】食料危機:イエメンタイズ県での現金支援を通した食料安全保障改善事業
2011年からの長引く紛争や、新型コロナウイルス感染症の流行、ウクライナ危機による世界的な食料不足などの影響で、イエメンでは経済危機が深刻化し、「地上最悪」1 とも呼ばれる飢饉が進んでいました。
貧困により十分な栄養を摂取できない世帯が急増し、栄養不良に陥る5歳未満の子どもの人数も増加、2021年の段階で、保健医療施設で栄養状態を確認した5歳未満の子どものうち、22%が消耗症、45%が低体重、48%が発育阻害と診断されていました。
そうした中、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、イエメンで最も経済状況が厳しい地域の一つであるタイズ県のアシュ・シャマヤタヤン地区において、2022年12月より現金支援を通じた食料安全保障事業を実施してきました。(詳細はこちら)
この事業では、約1年間で588世帯(3,289人)を対象に、6回にわたる現金支援2 を実施しました。
現金支援では、食料安全保障・農業クラスター3 が定める「最低限のフードバスケット(Minimum Food Basket : MFB)」の価格の8割を給付し、子どもたちやその家族が食料を買えるようにすることを目標としました。
その結果、食事の回数を減らしたり、子どもの教育費や生活費を削って食料購入に充てたりしていた人たちの生活が少しずつ改善したほか、わずかながら貯金をして、その貯金を元手に村で食料品店を始めるようになった世帯もありました。
2回目の現金支援の様子(2023年7月23日タイズ県アシュ・ シャマヤタヤン地区)
また、現金支援にあたっては、社会で脆弱な立場に置かれやすい女性世帯主にも配慮し、ジェンダーに基づくフォーカスグループティスカッションの実施や、コミュニティ委員会へのジェンダー研修を行うことで、給付場所の安全性の担保、トイレの設置、個人情報への配慮などを徹底し、誰もが安心して給付を受けられるように環境整備にも配慮しました。
栄養不良と診断された7か月のアミールさんと母親のファティマさん(仮名)
(2020年12月17日タイズ県)
(2020年12月17日タイズ県)
貧困により十分な栄養を摂取できない世帯が急増し、栄養不良に陥る5歳未満の子どもの人数も増加、2021年の段階で、保健医療施設で栄養状態を確認した5歳未満の子どものうち、22%が消耗症、45%が低体重、48%が発育阻害と診断されていました。
そうした中、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、イエメンで最も経済状況が厳しい地域の一つであるタイズ県のアシュ・シャマヤタヤン地区において、2022年12月より現金支援を通じた食料安全保障事業を実施してきました。(詳細はこちら)
この事業では、約1年間で588世帯(3,289人)を対象に、6回にわたる現金支援2 を実施しました。
現金支援では、食料安全保障・農業クラスター3 が定める「最低限のフードバスケット(Minimum Food Basket : MFB)」の価格の8割を給付し、子どもたちやその家族が食料を買えるようにすることを目標としました。
その結果、食事の回数を減らしたり、子どもの教育費や生活費を削って食料購入に充てたりしていた人たちの生活が少しずつ改善したほか、わずかながら貯金をして、その貯金を元手に村で食料品店を始めるようになった世帯もありました。
2回目の現金支援の様子(2023年7月23日タイズ県アシュ・ シャマヤタヤン地区)
また、現金支援にあたっては、社会で脆弱な立場に置かれやすい女性世帯主にも配慮し、ジェンダーに基づくフォーカスグループティスカッションの実施や、コミュニティ委員会へのジェンダー研修を行うことで、給付場所の安全性の担保、トイレの設置、個人情報への配慮などを徹底し、誰もが安心して給付を受けられるように環境整備にも配慮しました。
3回目の現金支援を受ける女性世帯主
(2023年9月27日タイズ県アシュ・ シャマヤタヤン地区)
(2023年9月27日タイズ県アシュ・ シャマヤタヤン地区)
以下は、アブドさん(38歳)からのメッセージです。アブドさんは2人の子どもと妊娠中の配偶者(27歳)との4人家族です。
「5年ほど前から、自分の生活環境を改善するために収入を得られるような小さな食料品店を持つことを夢見てきましたが、経済状況を考えるとなかなか実現することができませんでした。
日雇いの建設作業員として働いていますが、この仕事で得られるのは一日7,000イエメンリアル(6ドル、約930円)程度です。しかし、その収入だけでは家族の食費すら十分に賄うことはできません。
新しく生まれる子どもにもお金がかかりますが、日雇い労働の収入はすべて食費に使ってしまうので、わずかな貯金もできませんでした。
私は、6回にわたってセーブ・ザ・チルドレンの現金支援を利用しましたが、その一部を食費に充て、6回分から少しずつ貯金し、それをもとにようやく自分のビジネスを始めました。そして、給付期間中も日雇いで働き続けました。
この小さな食料品店では、村の住民に食料品や野菜、果物を販売しています。現金支援と日雇い労働の収入のおかげで、私は借金を返済し、この事業を始めることができました。
しかし、いつまた何が起こるかわからないため、私は日雇い労働を辞めていません。その代わり、妻が店を手伝っています。」
アブドさんをはじめ、現金支援をきっかけに、一歩踏み出して安定した収入を得られるようになったのは、食料配布などの支援では得られない成果だったと言えます。また、こうした人々の自立への強い意志と努力が、地域やイエメンの活性化につながることを願っています。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、同形態の活動をイエメンのラヒジュ県でも実施しています。ガザの情勢を受けて不安定な状況が続くイエメンですが、これからも家族や子どもの今と将来を見据えた事業に取り組んでいきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。
(海外事業部・金子由佳)
1 ユニセフ・FAO・WFP共同声明、イエメン史上最悪の飢餓、飢饉レベル5倍増か
2 現金給付は、保存が効かず、家庭毎の細かなニーズに応えられない食料そのものの配布よりも汎用性や柔軟性が高く、イエメン人道対応計画でも食料の安全保障を改善するために奨励されている手法です。OCHA, “Humanitarian Response PlanYemen 2022”, p.57.
3 現地で食料の安全保障関連の支援を調整する国連主導の会議のこと
「5年ほど前から、自分の生活環境を改善するために収入を得られるような小さな食料品店を持つことを夢見てきましたが、経済状況を考えるとなかなか実現することができませんでした。
日雇いの建設作業員として働いていますが、この仕事で得られるのは一日7,000イエメンリアル(6ドル、約930円)程度です。しかし、その収入だけでは家族の食費すら十分に賄うことはできません。
新しく生まれる子どもにもお金がかかりますが、日雇い労働の収入はすべて食費に使ってしまうので、わずかな貯金もできませんでした。
私は、6回にわたってセーブ・ザ・チルドレンの現金支援を利用しましたが、その一部を食費に充て、6回分から少しずつ貯金し、それをもとにようやく自分のビジネスを始めました。そして、給付期間中も日雇いで働き続けました。
この小さな食料品店では、村の住民に食料品や野菜、果物を販売しています。現金支援と日雇い労働の収入のおかげで、私は借金を返済し、この事業を始めることができました。
しかし、いつまた何が起こるかわからないため、私は日雇い労働を辞めていません。その代わり、妻が店を手伝っています。」
アブドさんをはじめ、現金支援をきっかけに、一歩踏み出して安定した収入を得られるようになったのは、食料配布などの支援では得られない成果だったと言えます。また、こうした人々の自立への強い意志と努力が、地域やイエメンの活性化につながることを願っています。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、同形態の活動をイエメンのラヒジュ県でも実施しています。ガザの情勢を受けて不安定な状況が続くイエメンですが、これからも家族や子どもの今と将来を見据えた事業に取り組んでいきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。
(海外事業部・金子由佳)
1 ユニセフ・FAO・WFP共同声明、イエメン史上最悪の飢餓、飢饉レベル5倍増か
2 現金給付は、保存が効かず、家庭毎の細かなニーズに応えられない食料そのものの配布よりも汎用性や柔軟性が高く、イエメン人道対応計画でも食料の安全保障を改善するために奨励されている手法です。OCHA, “Humanitarian Response PlanYemen 2022”, p.57.
3 現地で食料の安全保障関連の支援を調整する国連主導の会議のこと