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イエメン
(公開日:2019.01.11)

【イエメン 教育事業】 学校を空爆によって破壊された恐怖を乗り越えて

 
イエメンは現在、世界最悪の人道危機に陥っています。2015年初頭に激化した紛争は長引き、人口の4分の3にあたる2,200万人が何らかの人道支援に頼って生きています。教育分野に目を向ければ、200万人の子どもが学校に通えておらず、410万人の子どもが学習の継続に支援を必要としています。国内22県のうち13県において教員給与は未払いで、これらの県では2018年の新学年開始に遅れが生じました。この紛争は、1,800校を超える学校に直接的な影響をもたらしており、うち1,500校が破壊され、現在でも669校が全壊あるいは半壊の状態のままとなっており、また21校が武装グループに占拠されています。

首都サヌアの隣にあるアムラン県に住むアブラーさんも、自分の通っていた学校が空爆で破壊された子どもの一人です。戦闘が始まって2日後に、学校が破壊され、友達の多くがけがをし、彼女も家族とともに故郷の北部のサアダ県から避難を余儀なくされました。アブラーさんは、その出来事をきっかけに学校に通うことが恐ろしくなってしまい、3年間通学できないうちに読み書きを忘れてしまいました。


サアダ県からアムラン県に避難してきたアブラーさん

アブラーさんは、次のように当時を振り返ります。
「私が最初に学校に通ったのは6歳の時で、とてもいい成績を収めていました。しかし、武力衝突が始まって2日後に、学校が空爆の被害に遭ってしまい、退学せざるを得ませんでした。学校が空爆された日、私は幸運なことに家にいました。(衝突が激化する状況を)父が不安に思って、私に学校を休ませていたのです。

私の通っていた学校は、全校生徒が校庭で遊んでいる昼間に、空爆に遭いました。私は爆発を聞きつけ、何が起こったのかを確かめに走りました。私の友達2人はひどいけがをしていて、体や制服ににじむ血を見て、とても恐ろしくなりました。私の家も砲弾の被害を受けましたが、幸いにも家族全員が無事でした。それからというもの、空爆のことや、被害にあった学校、けがをした友達を思うと、いつも恐ろしい気持ちになります。私はもう二度と学校に通うことなんてできないと思いました。私はこの耳で爆発音を聞き、この目で破壊された学校を見たのです。私にとって人生で一番悲しい日でした。

学校が爆撃されてすぐに、父はトラックを持ってきて、私たちは家族でアムラン県に避難しました。故郷を後にすることはとても寂しく、私の家や崩れ落ちた学校が小さく見えなくなってしまうまで、トラックに乗っていつまでも見つめていました。サアダ県に残る友達や親せきが恋しいです。戦争が始まる前、私の人生は美しく、心配事などなく、私には友達と遊ぶ時間がありました。故郷にはたくさんの友達がいました。

アムラン県に避難してから、私は恐ろしくて3年間学校に通いませんでした。学校に通いたくないと言ったのは私なのですが、取り残されているような気がして、他の子どもたちや兄弟たちが通学カバンを背負っているのを目にすると悲しい気持ちになりました。私は一日中家にいて、母を手伝うために、炊事、洗濯、掃除、そして兄弟たちの面倒を見ました。アムラン県では、家賃を支払う経済的余裕がないため、国内避難民キャンプのテントで暮らしています」

セーブ・ザ・チルドレンは、国内避難民が多く居住するサヌア県とアムラン県で、さまざまな理由で学校に通えない国内避難民および受け入れ先のコミュニティの子どもたちに、学習支援センターでの代替教育を提供しています。セーブ・ザ・チルドレンは、アブラーさんの元を訪れ、学習支援センターに通えるように、心理社会的支援を提供しました。セーブ・ザ・チルドレンのサポートを受けて、アブラーさんはいま、通学への恐怖を乗り越え、毎日学習支援センターに通っています。


学習支援センターで同級生と一緒にアラビア語の授業を受けるアブラーさん(写真奥列、中央)

アブラーさんは言います。「登校初日は本当に怖かったけれど、1週間通ってみてその不安は消えてなくなりました。私は家族に、この学校に通い続けたいと伝え、それからずっと通っています。セーブ・ザ・チルドレンの学校が大好きです。だってここは安心できるから。先生が優しくて、私はたくさんの新しいことを学んでいます。また読み書きができるようになって、本当にうれしいです。それにここでは同級生とサッカーをしたり、絵を描いたりして遊ぶことができます。同級生が、私の新しい友達になりました。

大きくなったら、先生になりたいです。セーブ・ザ・チルドレンの学校にいる先生みんなが大好きだから。でも、私が何より願っているのは、この紛争が終わることです。この紛争が終われば、私は故郷に帰って友達や親せきに会うことができます。紛争は、私と、私の愛する人たちを引き離しているのです」

紛争が長期化している現在、人命を救う支援と同様に、教育支援も先延ばしにすることはできません。セーブ・ザ・チルドレンは、学校に通うことができない子どもたちに学習機会を提供できるよう、引き続きイエメンにおいて教育支援を実施していきます。

本事業は、皆さまからのご寄付とジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。

(海外事業部 イエメン担当:宇原英美)



 

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