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イエメン
(公開日:2020.04.20)

イエメン 新たな試練に直面する女性たち―新型コロナウイルス感染症

 
セーブ・ザ・チルドレン イエメン事務所 広報 スカニア・シャラフディンからの報告です。

4年前、爆弾が落ちるなか、私は息子を出産しました。その日から、母国イエメンを5年以上にわたって引き裂く紛争の反対側の世界を見ることができるよう、息子とともに長く生きられることを願ってきましたが、今、新たな不安を抱えています―新型コロナウイルス感染症です。

私たちは、世界で最も凄惨な人道危機の最前線で活動しています。そのなかで、私は、攻撃に遭い目の前で家族を亡くしたり、家を壊されたり、ひどい傷を負ってしまった子どもや大人たちに出会いました。また、自分の子どもが生きるために最低限必要なものを入手できない親たちと話してきました。

家を失い、水や食料が十分に用意されていないキャンプに逃れてきた家族にも会ってきました。親を助けるために学校へ行かず、どこかで見つけた乾いたパンや水のボトルを家に持ち帰る何百人もの子どもたちにも会ってきました。おもちゃと間違えて触れてしまった不発弾などの爆発物により、新たな障害と向き合わなければならなくなった子どもたちとも出会いました。


このような活動のなかで、私は、女性たちが類まれなる強さとレジリエンスを持って、困難を乗り超えながら前に進む姿を見てきました。2部屋しかない家に10〜15人の家族と一緒に避難生活を送る女性や、自分の子どもが栄養不良によって体重を失い、保健医療施設に入院してしまった女性には、生きていく希望がないのでは、と思う方もいるかもしれません。

私は毎回女性たちに、「調子はどうですか」と尋ねます。そうすると、彼女たちはみな同じように、「アラハムドゥリッラー」つまり「ありがたいことに元気です」と答えるのです。私はいつも、それほどつらい状況におかれているのに、どうして「ありがたい」などと言うことができるのだろうと思っていました。

ご存じかもしれませんが、私の国では、家庭を持つ21%の女性が18歳以下で、自分たちもまだ子どもなのです。でも、彼女たちの多くは、自分の子どもに十分な食事を与えるために、食事を抜かねばならないことがあります。食卓にパンを出すために、自分の大切なもののすべて、例えば宝石や土地、家畜などを売り払った人たちもいます。そして大変多くの人は、多額の負債を抱えています。

私は、「アラハムドゥリッラー」という言葉が何を本当に意味するのか、港湾都市ホデイダである女性に会うまで理解していませんでした。彼女は、4人の子どもがいる母親です。ある日家族の食事を作るため野菜を買いに出かけている間に、自宅が空爆に遭い、夫と娘、孫が亡くなり、2人の子どもが負傷しました。私にその話を話してくれている間涙を流していましたが、話し終えると、私をまっすぐに見て笑顔でこう言ったのです。

「アラハムドゥリッラー、私たちに何ができるでしょうか。こんなことを起こさないようにするため、他に何か私にできたことはあったのでしょうか。いいえ。私の家族は、安全だと感じてしかるべき家にいたのです。幸運なことに、私には、まだ2人の子どもがいますが、もしかしたら寝ている間に家族全員を失ってしまった女性もいるかもしれません。家を失ってしまった今、これから親戚のところに身を寄せるために引っ越します。そして、下の子どもを新しい学校に行かせ、生活を続けるのです。」

その時、私は、イエメンの女性が弱くなる余裕がないのだと分かりました。彼女たちは、飢餓と爆撃、病気という3つの脅威に晒される生活を生き抜くなかで、強さを身に着けレジリエンスを高めていったのです。

今や、新型コロナウイルスは差し迫った脅威ではなく、現実の脅威になろうとしています。この紛争で荒廃した国において最初の新型コロナウイルスの陽性反応がでましたが、私たちは十分に準備できておらず、もし、このウイルスの流行を抑制することができなければ、新たな悪夢の始まりとなるでしょう。

国内の保健医療施設の半分しか機能しておらず、3,000万人を超える総人口に対して集中治療室のベッド数は、60床の子どもの用ベッドを含む700床しかなく、人口呼吸器も500台しかありません。

この状況下で、国や、あらゆる家事を担う女性たちは、どのようにして全員を安全に保ち、手洗いや物理的に人との間に距離を取るといった予防策を実践できるでしょうか。

この問いに対する、私の答えはありません。私たちがこの感染拡大の影響を最大限抑制するためには、政府や支援者、援助団体、そして地元のコミュニティなど関係するすべての人が団結して取り組む必要があります。私たちは、医療機器や研修、人道支援活動への資金拠出など、あらゆるサポートが必要です。すでに切実なニーズを抱えており、今後もそれは増える一方です。

私は息子が生まれたとき、夜中何時間も息子の美しくそして平和な顔を見つめながら、彼をこのような不安定な人生に迎え入れてしまったことを悲しく、そして申し訳なく思いました。しかし、これまで話してきたような素敵な女性たちと出会ってからは、私も彼女たちのように強くなろうと決心しました。

彼女たちは私に、「アラハムドゥリッラー」と毎日言うことで、自分の息子に、安全と健康、そして愛を与えることができるのだと教えてくれました。私の国の人々、そして国際社会の支えにより、私はイエメンの子どもたちとその家族が新型コロナウイルス感染症から身を守り、成長し夢をかなえることを願っています。




新型コロナウイルス感染症 緊急子ども支援
https://www.savechildren.or.jp/lp/coronavirus/

 

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