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インドネシア
(公開日:2017.09.14)

【インドネシア交通安全事業】活動に参加した子どもと学校関係者の声

 
世界第4位の人口を有するインドネシアでは、都市化が急速に進む一方で、成長し続ける人口に対して公共交通機関が十分に整備されておらず、車やオートバイの数が増えています。しかし、大人にも子どもにも交通安全に関する正しい知識が浸透していないために、事故を起こしたり、また事故に巻き込まれたりすることが少なくありません。

そのためセーブ・ザ・チルドレンは、2014年からインドネシアのバンドン市にて、子どもの交通安全の促進を目的とした事業を行っています。この活動の柱となるのは、?学校周辺の交通インフラの改善、?子ども、保護者や学校関係者の交通安全教育、?交通安全意識の啓発を目指したキャンペーン活動です。


学校の周りで「交通安全パトロール」を行うピア・エデュケーターたち

交通事故を防止するための大切なメッセージがきちんと伝わり、またそのメッセージが行動につながるために、この事業を実施するうえでもっとも大切にしていることは、子どもたちや学校関係者の主体的な「参加」です。例えば、交通安全教育では「ピア・エデュケーション」を採り入れています。子どもたちにとって、同世代の仲間(=ピア)は最も身近な存在です。仲間同士だからこそより効果的に、伝え、教え、学びあうことができる、という利点を持つのがピア・エデュケーションです。対象となる中学校15校で、養成研修を受けたピア・エデュケーター150人が、それぞれの学校で交通安全教育やキャンペーンを推進しています。

また、子どもたちに対して交通安全教育を行う教員など学校関係者への研修も行っています。彼らは研修を受けた後、子どもたちに交通安全のメッセージが伝わるよう、それぞれに工夫を凝らして交通安全教育を実施しています。今回は、ピア・エデュケーターとして活躍する子どもと、研修を受けた学校関係者の声をお届けします。

「周りの人を思いやることができるようになりました」
フィトリさん(15歳)は、2014 年秋に参加した活動で、学校と周辺地域の交通事故の発生状況を分析したことをきっかけに、交通安全教育の必要性を意識するようになりました。その後、希望してピア・エデュケーター養成研修に参加し、現在は学校で他の生徒たちに交通安全の意識を高めるためのさまざまな活動を行っています。

 

「交通安全事業を通して、世界が広がりました」と語るフィトリさん

フィトリさんが、特に誇らしげに話すのは、自分の学校の生徒たちが通学時に横断歩道を利用するよう推進する「交通安全パトロール」の活動です。「多くの人は、横断歩道を渡ることの大切さを理解していません。また、横断歩道周辺に駐車してしまう人も多く、それにより、歩行者だけでなく車やオートバイを運転する人の視界も遮られたりしていました。そしてある日、学校のすぐ前で、横断歩道を使わずに道路を渡っていた生徒たちがオートバイと衝突する事故が起きたのです。ひとりが重傷を負い、数週間学校を休む事態となりました」と話すフィトリさんは、表情を引き締めてこう続けました。

「それ以来、横断歩道を渡るといった日常的なことでも十分に注意して行動すべきなのだという意識が学校内で芽生えてきました。パトロール隊の活動を通して、今後も学校内外の人々に交通安全を呼びかけていきたいと思います」

日頃からさまざまな活動に積極的にかかわるフィトリさんの活躍は高く評価され、バンドン市の局長が参加する行事において、子どもたちの交通安全の状況や提言を発表したこともあります。フィトリさんは、「活動を通じて知り合った他校の生徒たちとの交流も続き、世界が広がりました。周りの人たちを思いやることもできるようになり、目標を持って物事を推進しようとするようになりました。このような機会を与えてくれた交通安全事業に、とても感謝しています」と、活動への参加が、自分自身の変化につながったことを話してくれました。


交通安全意識向上キャンペーンのポスターの前で
誇らしげに写真を撮るピア・エデュケーターたち

学びを実践につなげるために
学校関係者向けの研修に参加したユスフさん(市の教育局指導員)は、ファシリテーターの「手法」にとても感心したそうです。

ファシリテーターは、ヘルメットをかぶせたスイカとかぶせないスイカを同じ高さから落下させる実験を行い、ヘルメット着用の重要性を訴えました。この実験では、ヘルメットをかぶせたスイカは割れなかった一方で、ヘルメットをかぶせなかったスイカは割れました。

この実験の結果は、オートバイに乗っていて事故に遭ったときの、ヘルメット着用時と非着用時の頭部への衝撃をあらわした一例です。

また、ヘルメットをかぶせて紐をしっかり締めた状態と、紐を閉めなかった状態の2つのスイカでも、同じ実験が行われました。ユスフさんはこの実験で、ヘルメットをしっかり着用し頭部を保護することの大切さを実感したとのことです。


子どもたちへの効果的なメッセージの伝え方について話すユスフさん(右)

2014年の事業開始時に行われた調査では、小学4年生の72%、小学7年生の50%が通学時に親などにオートバイで送ってもらっていますが、「オートバイの後部座席に乗る際にもヘルメットを着用すべきである」と考える子どもは、小学4年生では4%、小学7年生では2%とわずかでした。事故による負傷を防いだり軽減するためには、子どもたちや保護者などが正しい知識を得る必要があります。

ユスフさんは、「今後は、交通安全教育にもこういった実験を採り入れていきたいです。実験を見せれば、子どもたちは自ら、『何が起きたのか』『なぜ起きたのか』を考えるでしょう。そうしたらきっと、学んだことを実践するようになると思うのです」と話します。

「横断歩道を渡る」「オートバイに乗る時はヘルメットをかぶる」という知識は、必ずしもすぐに行動へとつながるわけではありません。しかし、「同世代の子ども同士」で話し合ったり伝え合ったりすることによって、また、教員が伝え方に工夫を加えることによって、知識が、実際の行動につながっていくことを促します。

交通安全は、日頃からメッセージを伝え続けること、そして実践することが大切です。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちや学校関係者が、今後も主体的に交通事故を防止するための活動を推進していけるよう、交通安全事業を実施していきます。

本事業は、皆さまからのご寄付および損害保険ジャパン日本興亜株式会社のご支援により実施しています。

(海外事業部 インドネシア担当:福田)

 

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