インドネシア(公開日:2017.12.19)
【インドネシア交通安全事業】お母さんから子どもたちへの伝え方
インドネシアでは、交通事故の多さが問題となっており、事故に巻き込まれる子どもも少なくありません。事故の多さの背景には、人口に対して公共交通機関が十分に整備されていないために個人が所有する車やオートバイの数が増え続けていること、そして、人々の間に交通安全に関する正しい知識が浸透していないことがあります。そこで、セーブ・ザ・チルドレンは、2014年からインドネシアのバンドン市で、子どもの交通安全の促進を目的とした事業を行っています。
この事業では、子どもだけでなく学校の先生や保護者らも、交通安全について学びます。この日、パジャジャラン小学校では、学校に通う子どものお母さんたちに対する講習が行われていました。講師となるのは、セーブ・ザ・チルドレンが交通安全教育を行う教育関係者向けに行った研修を受けたジュジュ先生です。「今日、講習に参加しているのはどういう人たちですか?」と聞くと、ジュジュ先生は「子どもたちの多くは、オートバイで親に送ってもらって通学しています。そこで、私が校門の前に立って、子どもにヘルメットをかぶらせずにオートバイに乗せている親や、またはオートバイを止めるべき場所できちんと止まらなかった親に、直接声をかけました」と説明してくれました。
子どもとのコミュニケーションについてお母さんたちに説明するジュジュ先生
お母さんたちに対する講習には、ある工夫がされています。講習の中心となるのは、交通安全そのものよりも子どもと親との家庭でのコミュニケーションについてです。「言う事を聞いてもらえない時、どのように話しかけますか?」や、「子どもの主張に同意できない時、どうしますか?」などの問いを通して、どのように子どもたちに交通事故から身の安全を守るためのメッセージを伝えられるかを、一緒に考えます。
参加したお母さんの一人は「私の子どもは一度、走行中のオートバイの後部座席から落ちたことがあります。幸運なことにけがはありませんでした。私はショックを受け、二度と同じことが起きないよう、子どもにしっかり座ってつかまるように伝えているのですが、子どもは逆に『僕は落ちてもけがをしない』と間違った思い込みをしているようです」と不安を口にしました。他のお母さんも、「私の息子も、自分は運が強いから事故に遭わないと思い込んでいます」と同意します。こういった場合、どのように子どもに事故の怖さを理解してもらうかについて、「事故の写真を見せてみたらどうか」「恐怖心を煽るのは良くないのではないか」「けがをしたら学校に行けない、好きなバスケットボールもできなくなる、と説明してみるのはどうか」など、参加したお母さんたちの間でさまざまな案が出されました。
「オートバイに乗る時、ヘルメットをかぶっている人!」と聞かれ手を上げる子どもたち
左はセーブ・ザ・チルドレンのスタッフ
講習が終わった後、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフのアグネスさんは、「親が子どもに一方的に伝えるというのではなく、子どもと親が一緒に交通安全について考えることが大切です。しかし、こういった保護者向けの活動に参加するのは、たいていお母さんです。子育てはお母さんの役割と思っている人たちが少なくないのです。今後は、お父さんにも講習に参加してもらえるような工夫を考えなければなりません」と、話しました。今後も、研修を受けた先生たちは、学校で子どもたちだけでなく子どもたちの保護者らに対しても効果的に交通安全のメッセージが伝わるよう講習を行っていきます。
本事業は、皆さまからのご寄付および損害保険ジャパン日本興亜株式会社のご支援により実施しています。
(海外事業部 インドネシア担当:福田)