バングラデシュ(公開日:2017.12.19)
バングラデシュに避難するロヒンギャの人々の間でジフテリア流行
セーブ・ザ・チルドレンは、ミャンマー・ラカイン州北部での人権侵害を逃れ、バングラデシュに避難してきた62万人以上のロヒンギャの人々の間で、致命的な感染症であるジフテリアの流行に警戒を強めています。ワクチンで予防可能なこの病気は、日本を含めた先進国などではもはや一般的ではありませんが、バングラデシュに避難してきたロヒンギャの人々の少なくとも15人がジフテリアで命を失いました。
セーブ・ザ・チルドレンの緊急保健医療ユニットに所属し、保健医療専門家であるMaria Tsolkaは、「ジフテリアの流行を抑えようと我々は懸命に手を打っていますが、人道支援に従事する我々にとって、12月は困難な月になるでしょう。多くの人道支援団体が、ジフテリア流行の危機に警鐘を鳴らしています。治療が必要なすべての人々を支援し、感染拡大を抑えられるように、支援団体は足並みをそろえ、バングラデシュの保健省とも緊密に連携しています」と話します。
セーブ・ザ・チルドレンは、ロヒンギャの人々が避難するキャンプに、コミュニティヘルスポスト(簡易的な診療施設)7ヶ所を設置しています。経験豊かな医師や看護師が勤務し、毎日50人から100人の皮膚疾患や発熱などの病状を診察しています。また、重度の急性栄養不良の子どもたちを治療するほか、女性や少女に性と生殖に関する健康(セクシャル・ヘルス、リプロダクティブ・ヘルス)に関わる保健医療サービスを提供しています。
そして現在では、ジフテリア感染の診断も行っています。 Maria Tsolkaは、「ジフテリアは人から人へ、咳やくしゃみなどを介して飛沫感染します。また、手を清潔に保てないことも感染の原因です。症状がある人の10%以上が命にかかわる状態になることがありますが、この割合は、保健医療サービスへのアクセスが制限されている過密状態のキャンプでさらに増加する可能性があります」と話します。
この緊急事態に対して、セーブ・ザ・チルドレンは、家庭訪問による家族の健康状態の確認と、最近コミュニティヘルスポストや国境なき医師団(MSF)の施設に診察に来たジフテリアの患者と接触した人たちの健康状態の確認を始めています。この活動は、感染の可能性のある人を特定し、予防のために経口抗生物質を提供し、ジフテリア感染を防ぐ目的で行われています。ジフテリア感染の疑いがある人がいれば、スタッフは、すぐに医療ケアと治療のためにMSFが運営する専用施設へつなぎます。
セーブ・ザ・チルドレンは、キャンプ内のコミュニティヘルスポストを通して、ジフテリアと他の病気を含むワクチンを子どもたちに接種する予防接種プログラムを開始する予定です。セーブ・ザ・チルドレンは、このほかに、支援に携わる約1,400人のスタッフやボランティアにも予防接種を行います。ワクチンは、世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF)の支援を受け、バングラデシュの保健省から提供される予定です。
Maria Tsolkaは、「私たちは緊急医療チームを現地に動員し、保健医療スタッフがジフテリアの臨床諸症状を判断できるよう訓練しました。また、WHOによって設定され、バングラデシュの保健省に承認された高次医療機関への照会・搬送プロセスに沿った活動が行えるように訓練しました。
さらに、感染の兆候を発見するために、仮設学習所や「こどもひろば」で支援を行っている教師のネットワークなど、保健医療分野以外の支援に従事するスタッフも訓練しました。これにより、過去2日間で、合計で400人以上のスタッフに対して症例を見分ける指導を行いました。
私たちの保健医療チームは、ジフテリアに感染が疑われる症例がないか注視しています。ジフテリアは、早期に発見され、適切な保健医療サービスで診療を受ければ、抗毒素や抗生物質で治療可能な病気なのです」と述べます。
ロヒンギャの人々が避難するキャンプでは、12月12日に、0歳から6歳の子どもたちへのワクチン接種が開始され、17日から、 7歳から15歳への大規模なワクチン接種キャンペーンが開始されます。このキャンペーンは、キャンプにある専用のワクチン接種ポイントで行われます。
セーブ・ザ・チルドレン バングラデシュ事務所代表Mark Pierceは、「安全な水の確保と衛生環境に関する問題に緊急に取り組まなければならなりません。そして、大規模なワクチン接種キャンペーンと定期予防接種プログラムをキャンプで実施しなければなりません。この大流行へ対応するためには、これ以上の感染拡大を食い止め、命を守るための緊急の資金援助が必要です」と訴えます。