バングラデシュ(公開日:2023.01.16)
【バングラデシュ】「私が就職したことを家族も誇りに思ってくれています」−青少年の起業・就業支援事業
2022年1月からバングラデシュのチャットグラム市で青少年の起業・就業支援事業を実施しています。この就業支援に参加した青少年のうち2022年11月時点で9人が就業することができました。そのうちのひとり、セリナさん(22歳)のストーリーをご紹介します。
(事業の詳細はこちらをご覧ください。)
データ入力の仕事をしているセリナさん
セリナさんは両親と5人のきょうだいと一緒に暮らしています。きょうだいの養育費を工面するため、小学校卒業後から働き始め、学校に行くことはできなくなってしまいました。
セリナさんの住んでいる地域では、治安や文化的な背景から、女性は住んでいる地域をひとりで離れることができません。そのため、セリナさんは家事をしながら、ほとんどの時間を家の中で過ごしており、教育や就業の機会はありませんでした。
ある日、セリナさんはこの事業で実施している研修のことを聞き、参加したいと思いましたが、両親は安全を心配して反対しました。
それでも参加を希望する気持ちは強く、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフと相談しながら、家族の説得を行いました。
この活動では、住んでいる地域をひとりで離れることができない女性に配慮し、バスを改修した移動式研修センターを活用しています。そのバスが自宅から徒歩数分のところで研修を実施するのを見て両親も安心し、セリナさんは研修に参加することができるようになりました。
バスを改修した移動式研修センター
研修では、ITスキル、社会で必要となるコミュニケーションや対人関係(ソフトスキル)などを扱っています。研修修了後、事業による就業支援を受けて、セリナさんは小学校のデータ入力の仕事に正規雇用で就くことができました。
セリナさんは次のように話します。
「研修参加前は、パソコンやITについてほとんど何も知りませんでした。今ではエクセルを使った自動計算などもできるようになり、仕事に活かすことができています。
研修ではソフトスキルとして、仕事をするときの態度なども学ぶことができました。研修参加前は、家族としか話す機会がなかったので、語彙が不足していたと思います。
研修に参加してからは、さまざまな新しい用語を学んだり、友だちや研修の講師たちと話したりすることで、前よりもたくさんの語彙を得ることができました。
スキルが身につくにつれ、今では自信を持って他者とコミュニケーションをとることができています。」
研修に参加する前は セリナさん自身も家族も、女性が就職してお金を稼ぐようになるとは思ってもいなかったそうです。
「今では、家族も私が就職したことを誇りに思ってくれていて、私にもできるということをわかってくれました。世帯収入が増えたことで家族も幸せです。」
仕事は楽しいと話すセリナさん
事業では就業支援のほかに、起業支援も実施しています。起業をした青少年についても、今後紹介していきます。
これらの活動を通して、青少年やその家族、コミュニティが貧困の悪循環から抜け出し、青少年が自身のポテンシャルを発揮できるように引き続き支援していきます。
本事業は皆様からのご寄付で、現地団体のBangladesh Institute ofTheatre Arts(BITA)と連携して実施しています。
(海外事業部 田部井梢)