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バングラデシュ
(公開日:2022.01.18)

【ロヒンギャ難民キャンプ大規模火災】被災者支援事業終了の報告

 
セーブ・ザ・チルドレンは、2021年3月22日に、ロヒンギャ難民キャンプで発生した大規模火災により被災した子どもたちとその家族を対象に、同年5月20日から9月19日に緊急支援を実施しました。4ヶ月間実施した支援事業について報告します。


難民キャンプを覆いつくす煙と近隣に避難した人々

バングラデシュ南東部コックスバザール県では、約90万人のロヒンギャの人々が難民キャンプで生活しています。彼らは2017年8月にミャンマー西部のラカイン州で起こった大規模な暴力や人権侵害から逃れ避難生活を余儀なくされてきました。4年以上が経った現在もミャンマーへの帰還の目途は立っていません。

コックスバザール県のウキア郡とテクナフ郡には34の難民キャンプが点在していますが、ウキア郡にはクトゥパロン・バルガリという23のキャンプが密集している地域があります。

2021年3月22日にその地域の一つのキャンプである8Wから出火し、火は隣接する3つのキャンプ8E、9、10に燃え移り、特にキャンプ9が甚大な被害を受けました。

難民キャンプにおいて、ロヒンギャの人々は、竹やビニールシートなどで作られた簡易的な住居(シェルター)で暮らしています。シェルターが燃えやすい素材であったことや、シェルター同士が密接していたことから瞬く間に火が広がりました。

一晩かけて消火作業が行われましたが、1万100世帯がシェルターを失いました。これに加え、毎年4月以降はモンスーンの影響で降水量が増え、洪水が発生するため、迅速にシェルターを再建する必要がありました。

これらの状況を受け、今回の事業では、128世帯に対して、火災で焼失したシェルターを再建するための竹やビニールシート、ロープなどが含まれたシェルターキットを提供し、シェルターの設置支援をしました。今回設置したシェルターは、2021年に採用された新しいデザインに沿っており、以前のシェルターよりも広く、シェルター支援を受けた世帯の83%が満足したと答えました。


新しく設置したシェルターの外観



シェルター内部の様子

また、火災により所持品のすべてを失った世帯が多く、生活必需品である衣類の支援も必要でした。ロヒンギャの人々の文化に合った、女性用のワンピース(Thami)や男性用のスカート(Lungi)、子ども用Tシャツ、おくるみ、タオル、枕、シーツなどが入った衣類セットを500世帯に配布しました。

衣類セットを受け取ったトフラさんは、次のように話します。
「火災が起きたとき、子どもとシェルターで寝ていました。目が覚めて、住居が燃えていることに気が付きましたが、すぐには何をすべきかわかりませんでした。火が近づいているのを見て子どもを抱き上げ、少しずつ蓄えてきた所持品をすべて残して逃げました。その後は火がとても速く燃え移るのを見ているしかありませんでした。この衣類セットを受け取ることができてとてもうれしいです。子どもと2人だけの生活の中、衣類のおかげで自分と子どもの尊厳を守ることができました。」


配布した衣類セット内容

大規模火災は、被災者の精神面にも大きな負担となりました。火事を思い出して夜眠れなくなったり、一人でいるのを怖がったり、ミャンマーから避難してきた際の悲惨な記憶を思い出すなど、子どもだけでなく、大人もこころのケアを必要としていました。そのため3,552人の子どもと320人の大人に対して、ストレスを軽減するためのワークショップも実施しました。

また、火災の混乱により、一時は500人の子どもが養育者と離ればなれになりました。さらに、火災により、困窮した世帯では、子どもが児童労働や児童婚などの被害に遭うリスクが高まりました。私たちは、こうした子ども104人を対象に個別支援を行い、個々の状況に応じて医療や栄養、食料、シェルター、水・衛生、難民登録に関する支援を実施しました。

個別支援を受けたジャキールさん(6歳)は、友人とシェルター前のスペースで遊んでいるときに火災にあいました。混乱のなかで負傷し、また母親と一時離ればなれになってしまいました。地域住民がジャキールさんを発見し、火災発生から約30分後に無事母親と再会することができました。

その際、母親は「ちょうど一年前に夫が火事で亡くなりました。この子は私の一人息子でしたので、火事で離ればなれになった時はすべてを失ったと思い、打ちのめされました。この子が私の膝の上に戻ってきてくれて安心しました」と話しました。

しかしながら、ジャキールさんは火災により負傷したほか、恐ろしい経験により、母親と再会した後も全く話すことができなくなってしまい、夜眠れない日々が続き心身ともにケアが必要でした。そのため個別支援も開始しました。

けがの治療が受けられるように調整し、夜眠れないなどの心理的負担に対しては、母親とともに個別のカウンセリングセッションを行いました。これらの支援の結果、ジャキールさんの健康状態は向上し、夜眠れるようになりました。


個別支援を受けたJakirさんとその母親

大規模火災の被災者支援事業は終了しましたが、セーブ・ザ・チルドレンは、ロヒンギャ難民の子どもたちや家族が、安心・安全に生活できるよう、支援を継続していきます。

本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しました。

(海外事業部 ロヒンギャ難民支援事業担当 加藤笙子)





 

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